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≪3つ目の仕事≫

 冒険者ギルドに戻ってくると、新たな仕事が待っていました。それは店の常連客である商人からの依頼で、村3までの護衛をしてほしいというものでした。予想される危険は山賊くらい。クライスたちにとっては楽そうな仕事です。報酬は相応に少ないとはいえ、3人は依頼を受けることにしました。


≪突然の依頼≫

 何事もなく村3について商人と別れ、酒場兼宿屋で一休みしようとしたのですが、何か様子が変です。他にお客がいないのです。主人に話しかけようとすると、通常の「泊る」「やめる」に加えて、「世間話をする」というものがありました。さっそく世間話をしてみます。

 エディ「景気はどう?」

 主人「・・・見ての通り、最低だよ。」

 シリュン「(エディシア、言葉は選べよ!)な、なにかあったんですか? よければオレたち、力になるけど・・・。」

 主人「実はうちの料理を食べたお客さんが、3人続けて食中毒を起こしてね。それ以来、さっぱり・・・。」

 シリュン「・・・・・・・・・。」

 エディ「かーえろ、かえろ。お腹がすくからかーえろ。」

 主人「待ってくれ! 私だって料理人のはしくれだ。料理には細心の注意を払っている。あの時だっておかしなことはなかったはずなんだ!」

 シリュン「すると、原因は他にあると?」

 主人「ああ、間違いない。報酬なら払う。調べてくれないか?」

 その時、店に漁師姿の男が入ってきます。

 漁師「大変だ! 川の魚がみんな浮かんでる!」

 主人「なんだって!? そういえば、食中毒を起こした人はみんな魚料理を・・・。」

 調査の結果、川に有害な薬品が混入していることが分かりました。川は近くの山にある洞窟、つまりは願いの泉から流れています。クライスたちは、すぐに願いの泉へ向かいます。


≪願いの泉≫

 願いの泉に着いた3人は、さっそく泉の女神メライザを呼び出します。

 エディ「えいっ! 泉ちゃん、今投げた金貨を拾ってきてくださいな。」

 クライス&シリュン「・・・・・・・・・。」

 やがてメライザが現れます。でもなぜか、顔を隠しています。

 メライザ「こらー! 私に用があるなら、もうちょっとまともな呼び方をしなさい! だいたい、誰が泉ちゃんよ!」

 シリュン「それはそうとしてだな・・・なんで顔を隠しているんだ?」

 メライザ「えっ? これはその、ちょっとお肌が荒れちゃって・・・。」

 シリュン「どうやらあんたも、被害者のほうだったみたいだな。実はだな・・・」

 メライザの話では、1週間ほど前に怪しい魔法使いが洞窟の奥に入って行ったとのこと。3人はその魔法使いに会うため、洞窟に踏み込みます。


≪ルヴィア教団、再び≫

 洞窟内では巨大なミミズに襲われ、エディシアがその手の生物が大の苦手だったことが判明したりしましたが、それなりに順調に進んでいきます。そして最奥部。そこでは魔法使いが怪しい仕事をしていました。金らしきものを巨大な瓶に放り込んでいるのです。そして瓶からあふれた液体が川に流れ込み、怪しい色に染めていました。

 シリュン「そこまでだ! その実験、すぐに止めてもらうぜ!」

 魔法使い「断る。金を作り、教団の財源とすることがわが使命。異教徒どもの戯言につきあうわけにはいかん。」

 シリュン「戯言だぁ!? すでに魚は死に、被害者だって出ているんだぞ!」

 魔法使い「ほぅ。異教徒どもを抹殺する効果もあったとはな。この世に平和が訪れる日は近い!」

 エディ「ねー、おっちゃん。言ってることが分かんないんだけどさ。」

 魔法使い「ならば説明してやろう。我らルヴィア教徒の目的はただ1つ。この世に真の平和をもたらすことのみ。全ての者がルヴィア様の教えを理解し、ルヴィア教徒になりさえすれば、この世は平和になるのだ。しかしこの世には、それが理解できん愚か者が多すぎる。しかし愚か者を排除するためには強大な組織が必要となり、それを維持するためには膨大な財源が必要になる。だからその財源を作り出すことが、わが使命なのだ。」

 エディ「やっぱり分かんないんだけど。」

 魔法使い「ならば、逝け!」

 そして戦闘! そして勝利!

 シリュン「ルヴィア教徒って、本当にこんなヤツばかりなのか?」

 クライス「そうではないと思いたいですね。ところでそれ、本物の金なんでしょうかね?」

 調べてみたところ、本物の金を材料にして、大量の偽の金を作っていたことが分かりました。

 クライス「ほとんどが偽物とはいえ、材料には本物を使っていますから、金が含まれてはいるのでしょうね。」

 エディ「じゃあこれを泉ちゃんに渡したら、みんなを治してくれるのかな?」

 そしてその後、3人はメライザだけが起こせる奇跡を目にすることになります。

 メライザ「もう死んじゃった魚の蘇生は無理だったけど、わずかでも生命力が残っていた者たちは、みんな元気になっているはずよ。・・・ところで1つお願いがあるんだけど、いいかな?」

 クライス「なんですか?」

 メライザ「このところ、泉に誰も来なくなってヒマなのよ。投げた金貨相応の願いならば本当にかなうんだって噂、みんなに広めてくれないかな?」

 シリュン「そして投げ入れられた金貨を懐にしまうわけだな。」

 エディ「泉ちゃん、おぬしも悪よのぅ。」

 メライザ「違うってば!」


≪仕事はきっちり最後まで≫

 食中毒事件は解決しました。宿の主人からお礼をもらって、一件落着です。

 主人「ところで、何か食べていかないか? 今日は何でもただで食べていって構わないよ。魚料理なら、なんだってできるんだが。」

 エディ「えっとねぇ、アタシは野菜炒めとシチューね。」

 シリュン「魚料理を薦めてくれてるんだから、そうすればいいのに・・・。オレはフライ定食にするかな。」

 エディ「魚料理なんてよく食べられるよね。食中毒事件があったばかりなのに・・・。」

 クライス「・・・そうか、そうですね。では私は焼き魚定食をお願いします。」

 エディ「ほえ?」

 クライス「村の人も、そう思っているみたいですからね。だからこそ、私たちが食べて見せるのですよ。この店で魚料理が注文されるようになるまでは、仕事を終わらせたことにはなりませんからね。」

 シリュン「おっ、そういえばそうだな。まったく気がつかなかったぜ、わっはっは。というわけでエディシア、お前も付き合えよ。おやじさーん、注文の変更だー!」

 エディ「え〜やだよう。アタシ、魚食べるの怖いよう。」

 そして翌日。エディシアは起きてきませんでした。

 クライス「・・・で、どうでした?」

 シリュン「頭痛に腹痛、それに吐き気がひどいらしい。今日は起きられそうにないな。」

 クライス「そうですか。すると、やはり原因は・・・。」

 シリュン「ああ、食いすぎと飲みすぎだ。なにが『アタシ、魚食べるの怖いよう。』だ。何杯もお代わりしやがって・・・。」

 クライス「でもこのこと、村の人に知られたら、また食中毒事件だと思われますよね。・・・どうします?」

 シリュン「そんなことオレに聞かれても・・・どうする?」

 クライス「どうしましょう?」

 “事件” 解決までに、さらに一週間がかかりました。

 シリュン「この “事件” の分の報酬って・・・やっぱりもらえないよな?」

 エディ「当たり前じゃないの。・・・ああっ、シリュン、睨まないでっ!」


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