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≪冒険者ギルドでの一時≫

 このゲーム、冒険者ギルドに入るとパーティをいったん解散します。そのため仲間たちの日常を見ることができます。
 シリュンは妖術師の屋敷跡で手に入れた宝の地図の暗号解読に忙しく、エディシアは誰かに手紙を書いています。どうやら彼女には、生き別れの妹がいるらしいです。

 クライスは冒険の支度をしたり、仕事を探したりします。今ある依頼の中でちょうど良さそうなものは、2つ見つかりました。

 仕事A:使われていない灯台に明かりがつき、村人が不安になっています。調査をお願いします。
 仕事B:収穫祭を行うため、その警備をお願いします。

 3人パーティになっての初仕事ということで、より簡単そうに思えるBを受けることにしました。


≪山奥の村へ≫

 途中の橋が壊れていたせいで、目的地の村へは遠回りして行かなければならなくなり、日が沈んでもまだ村は見えてきません。そこで途中の山小屋で休むことにしました。
 ところがその山小屋には先客がいました。若い夫婦ですが、妻は熱を出して寝込んでいるようです。

 エディ「・・・風邪をひいちゃったんだね。良く効く薬草が生えていたから、採ってきてあげるね。」

 そして翌日。

 エディ「・・・熱は下がってるけど疲れがたまってるみたいだから、もうしばらく休んでてね。」

 シリュン「お前、ただの変なやつかと思ったら、妙な技能を持ってたんだな。」

 エディ「えっへん。崇め奉ってもかまわないのよ?」

 シリュン「誰が崇めるか!」

 そしてようやく、目的地の村にたどり着きます。しかし、様子が変です。祭りが近いはずなのに、ひっそりと静まり返っているのです。


≪怪しいのは誰?≫

 近くで魔物が出たため、今年の祭りは中止になったという話を聞きます。ここまでやってきて中止とは、骨折り損のくたびれ儲けです。しかし3人は、代わりに魔物退治をして帰ることにしました。そして手分けをして情報を集めていたのですが、妙な噂が混ざっています。

【情報】
1.森でインプ(悪魔の使い魔)を見かけた。つまり黒幕がいるらしい。
2.トムとマイケルはいつも森で遊んでいる。今日もそのはず。
3.王都サリスに出稼ぎにいっているユリア(トムの母)の夫が、浮気をしているという噂がある。ユリアは信じていなかったが、1週間ほど前に突然、村を飛び出した。
4.ユリアの夫はサリスに出稼ぎに行ってるが、大けがをした。そのため1週間ほど前に、ユリアはトムを置いて看病に行った。しかし昨日、一人で帰ってきた。
5.3と4が矛盾しているが、これは子供から『浮気ってなに?』と聞かれた大人が、ごまかすために大けがのことといったのがもとらしい。

 クライス「浮気の噂を信じていなかったユリアさんが、旦那さんが大けがをしたという噂を耳にしたら・・・」

 シリュン「それで飛び出していった・・・っていう可能性も考えられるな。」

 クライス「すると、今いるユリアさんが怪しいですね。偽者なのかも・・・。」

 シリュン「ともかく今は、森へ行った子供が心配だ。いくぞ!」

 そして子供たちの遊び場になっていた森の中の遺跡へ向かい、インプの群れを倒し、トムとマイケルを救出します。しかし黒幕らしき姿は見当たりませんでした。3人は再び村に戻り、調査を続けます。

 シリュン「ユリアさんって、このところ変なことはなかったか?」

 少年「そういえばトムが、『ママ、帰ってきてからなんか変。』って言ってたよ。」

 クライス「そういえばユリアさん、トムの迎えに来ませんでしたね。」

 シリュン「いくら風邪をひいたからってもな・・・。」

【クライスの仮説】
 クライス「ドッペルゲンガーという魔物がいます。人に化けてその人にすり替わるという、恐ろしい能力と高い知能を持った悪魔です。もしドッペルゲンガーが誰かに化けて浮気の噂を流し、結果的に1人で村を出たユリアさんにすり替わっているとしたら・・・。」


≪不可抗力≫

 3人はユリアとトムの家に踏み込みます。そしてクライスは、月の力を借りて幻術や変化を見破る魔法を使います。この世界では、満月の明かりはあらゆるマヤカシを妨げる力があるのです。満月の夜には狼男が正体を現す、というような話に根拠を持たせるための設定なんですけどね。

 クライス「・・・真実を照らす満ちたる月よ、その光を今ここへ、その力を我らが瞳に・・・トゥルーサイト!」

 クライスの仮説は正解で、ユリアの姿は醜い悪魔に変わりました。3人はドッペルゲンガーを退治します。

 トム「ど、どうなってるの!? ママの姿が、急に化け物になって・・・。」

 クライス「あれはあなたのお母さんではありません。魔物が化けていたのですよ。」

 トム「じゃあ、ママはどこにいるの!?」

 クライス「・・・。」

 シリュン「心配すんな。ママはパパの看病に行くって言ってたんだろ? 怪我が治ったら帰ってくるさ。それともなにか? ママが嘘をついていると思っているのか?」

 トム「そんなことないよ! ママは嘘なんてつかないもん!」

 シリュン「そうだよな。お前を信じているから、お前が信じてくれているから、ママは安心してパパの看病に行けたんだ。お前がしっかりしてないと不安になって、なかなかパパの怪我を治してもらえないぞ?」

 トム「じゃあボク、いい子にしてる! そうすれば、パパもママはすぐに帰ってくるんだよね!?」

 その後3人は、魔物退治の報酬を受け取って村を出ます。

 シリュン「・・・後味の悪い仕事だったな。」

 クライス「・・・あれで良かったのでしょうか。ドッペルゲンガーは通常、自分が殺した人にすり替わります。ならばユリアさんは、もうこの世にはいないでしょう。あんなことを言ってごまかしても、いつかトムが真実に気付く日が来ますよ。その時トムは・・・。」

 シリュン「悲しみに耐えられる、強い男になっていると願っているよ・・・。」

 エディ「山小屋が見えてきたよー。明かりがついているから、まだあの2人、あそこにいるみたいだね。」

 シリュン「・・・エディシアみたいに真相に気付くことなく、のんきに生きているほうが幸せなのかな・・・。」

 エディ「ん? 何か言った?」

 シリュン「いや、なんでもない・・・。」


≪それは奇跡か偶然か≫

 山小屋にいたのは、来るときに出会った夫婦でした。妻の容体はすっかり回復し、山小屋を出るところだったようです。妻は先に支度を終えて外に出ており、山小屋の中では夫が一人で片付けをしていました。

 夫「いやー、あいつときたら、私が重体だ、なんて変な噂を聞いて、村を飛び出してきたんですよ。それが息子もお金も忘れてくるわ、熱を出して倒れるわで、本当に大変だったんですよ。でも、まあ、ここで出会えたのも何かの縁、村に来ることがあれば、ぜひうちに寄って行ってください。歓迎しますよ。」

 そして男性は山小屋を出ていきます。その時、外から女性の声が聞こえてきました。

 妻「あなた、早く・・・トムが待って・・・」

 どうやらユリアは、ドッペルゲンガーの予想を超える慌てっぷりで村を出たため、捕まらずにすんだようです。
 とりあえず、めでたし、めでたし。


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