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≪アレな依頼人≫

 夜になって村2に着いた二人は、さっそく宿をとって休もうとします。その時、宿の扉が勢いよく開けられました。

 娘「で、出たー!」

 娘は状況を伝えようと、宿中を駆け回ります。

 娘「出たのよ! 出ちゃったのよ! さっき、あっちで、出たんだってばー!」

 老人「これこれ、エディシアや。人に何かを伝えたいときには、『いつ』『どこで』『なにがあったか』を伝えるようにと、いつも言っておるじゃろうが。」

 エディ「だーかーらー! (いつ)さっき、(どこで)あっちで、(なにがあったか)出たんだってばー!」

 クライス「・・・・・・・・・。」

 シリュン「・・・これって俺たちの出番だよな。どうする?」

 依頼人がどうであれ、力になるのが正義の味方というものです。ゆえに選択肢は・・・そう、選択肢があるのです。

 A:「力を貸しましょう。」
 B:「係わらないほうが身のためかと。」
 C:「見なかったことにしましょう。」

 ここで真面目な私は当然のごとくAを選ぼうとするわけですが、読者はそんな選択は望んでいないはず。しかたなくCを選びます。しかし彼女に気付かれてしまったようです。

 エディ「ちょっと、あんたたち、ぼーけん者でしょ! アタシが困ってるってのに、見なかったことにするのね! えぐえぐ。」

 シリュン「・・・分かった、分かった。力を貸してやるから、何があったのか言ってみな。」

 エディ「ゴブリンが出たのよ。じゃあ、後はお願いね。お休みー。」

 シリュン「またんかい! 冒険者は報酬と引き換えに働くもんなんだよ! いくら出せる?」

 エディ「ひどいわ! レディが困っているってのに、お金を取るなんて!」

 シリュン「誰がレディだぁ!? とにかく、取るったら取るんだよ! ゴブリン退治なら・・・1000シルバにしといてやる。出世払いでいいからちゃんと払えよ?」

 エディ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ケチ。」

 その翌朝、2人はゴブリン退治に出かけます。


≪アレな仕事≫

 コンピュータRPGではいざ知らず、TRPG(注)で序盤の冒険といえばゴブリン退治。TRPG大好きな私が作ったシナリオならば、当然のようにこれは外せません。

 というわけで、2人は近くの廃坑に向かいます。
 ゴブリンはさほど強い敵ではないものの、時々ゴブリンガード(ゴブリン戦士)が登場するため、決して楽な冒険ではありません。それに2人とも回復魔法が使えないため、回復は相変わらずの薬頼みです。
 それでも2人は最深部に到達し、そこにいたゴブリンロード(ゴブリンの王)を倒すことに成功します。

 ああ、なんてお約束なシナリオなんでしょうか。え、手抜き?
 ごめんなさい。その通りです。

注:TRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)とは、コンピュータRPGの元になったテーブルゲーム。


≪アレな結末≫

 ゴブリンを蹴散らして村2に戻ってきた2人は、依頼人であるエディシアを捜します。・・・が、どこにも見当たりません。

 宿の主人「あの子なら、昼ごろこの村を出て行ったよ。」

 シリュン「げっ、逃げやがったのか!?」

 宿の主人「お金がなくてあんたたちへの報酬が払えないから、サリスへ出稼ぎに行くって言ってたんだけどね。冒険者になるんだってさ。」

 シリュン「・・・冒険者になる覚悟があるんだったら、ゴブリン退治を手伝えよなー。」

 宿の主人「あの子は、そういう子ですから。」

 そして2人はエディシアを追って、当初の予定通りに王都サリスへ向かいます。
 どうか今度こそ、何事もなくたどり着くことができますように。


≪アレな再会≫

 サリス。それは現在いる島国スメリアの王都であり、大陸では数百年前に滅びた古代都市の、唯一の生き残りでもあります。それゆえ王家には、失われたはずの知識が伝わっていると言われています。
 古代都市を滅ぼしたのは、邪悪な魔術によって生まれた1体のリンドブルム(翼竜)と、多数のドレイク(翼のない竜)でした。しかし当時最強の戦士と言われた竜騎士エルリュードによって王都サリスは守られ、彼が古代スメリア国最後の王女であるルヴィアとともに興したのが、現スメリア国なのです。もっともエルリュードはサリスを守るのに精いっぱいで、大陸中にあふれていたドレイクたちは、寿命によって滅ぶのを待つしかなかったのですが(人造生物であるドレイクは繁殖力を持たなかった)。

 そんな特殊な都市サリスには、エルリュードの生まれ変わりといわれるほど優秀なトゥレイド王子がいたのですが、2年ほど前に多数の悪魔が現れ、その時に城は半壊、戦闘指揮をとったトゥレイド王子は現在でも行方不明となっています。

 えーと、初登場のカタカナ単語を大量に出してごめんなさい。でもテストには出ないのでご安心を。

 さて、そんな過去を持ち、現在復興途中の都市サリスについた2人は、冒険者ギルドに向かいます。
 冒険者ギルドとは、宿屋や雑貨屋、魔術師ギルドなどの共同出資で運営されている店でして、冒険者に必要なものは大抵そろうようになっています。仕事の依頼も、大抵はこの冒険者ギルドに届けられます。荒くれ者が多い冒険者がすごす店ですから、それなりに丈夫に作られ、また犯罪者の巣窟にならないように、また余計なもめ事が起きないように、不文律が存在していることも多いものです。
 ところが2人が店に入ってみると、店の中は荒れ放題。何者かの襲撃を受けたとしか思えないありさまです。店の真ん中では、見覚えのある女性が黒こげになったまま、いびきをかいて寝ています。

 シリュン「よう、すごいことになってるな。何があったんだ?」

 主人「いやー、そこの女の子がね、酔っ払いに絡まれたときに、酔った勢いでファイヤーボール(火球の魔法)をぶっ放しちゃったのさ。あれは見事だったなぁ。」

 シリュン「・・・あれ、エディシアだよな?」

 主人「もしかして知り合いか? 修理費用3000シルバを払ってもらえるとありがたいんだが。」

 シリュン「・・・・・・・・・。こら、起きろ。」

 シリュンは水をぶっかけてエディシアを起こします。

 エディ「・・・うーん、お母さん、あと5分。むにゃ、むにゃ・・・・・・ん?」

 シリュン「お前、状況わかってるか? 借金がオレたちに1000、この店に3000あるんだが。」

 エディ「これはアレよね。もう笑ってごまかすしかないじゃない?」

 シリュン「ごまかすな! ・・・仕方がない。お前、オレたちの仲間になれ。放っておいたら何をしでかすか分かったもんじゃない。」

 エディ「借金、肩代わりしてくれるの?」

 シリュン「まさか。お前の取り分から引くに決まってるじゃないか。」

 エディ「・・・鬼。」

 シリュン「てめえ、人が下手に出てたら・・・」

 クライス「まあまあ。エディシアさん、他に道はないと思いますよ。」

 エディ「アタシの前に道はない! 道はアタシの後にできるのよ!」

 シリュン「人の話を聞けー!」

 というわけで酔っ払いとの会話は難航したものの、結局3人は床に座り(テーブルが壊れているから)、ソフトドリンクでパーティ結成の乾杯をしたのでした。
 ちなみにその日、「奴には酒を飲ますな」という不文律ができたとか・・・。

 でもその日最大の衝撃は、冒険者ギルドの登録名簿を見たとき・・・エディシアが21才だということを知った時に起きたのでした。
 ・・・これでもシリュンと同い年で、クライスより1才年上です。一体どんな人生を送ってきたのやら。


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