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≪黒騎士と姫君≫

 「黒騎士を討たんとする勇敢な者、わが城に来たれ。素性は問わぬ。」

 まるで私のためにあるような依頼だが、こんなお触れが城下町の掲示板に張り出されていた。黒騎士を恐れる国王が、討伐のために外部の人間を雇おうとしているらしい。
 そこで早速、依頼を受けることにした。依頼人は国王本人であり、謁見は簡単に許された。

 なんでも黒騎士はフィオーネという王女が目当てらしく、近くにあるシュタイン湖に王女を連れてくるように要請したのだという。しかし国王はそれを罠だと考えており、黒騎士討伐のために兵をさし向け城内が手薄になったところを襲撃されるのでは? と心配しているらしい。そのため私のような、正規兵以外の人材を求めていたという。

 しかし当のフィオーネ王女は、自分一人の犠牲で騒動が治まるのならばと考え、自分から黒騎士に会いに行こうとしているようだ。もちろん国王は大反対。

 フィオーネ「あんまりですわ・・・・・・。私の気持ちを少しもお分かりになろうとしないで・・・・・・。」

 ・・・こんなセリフだと、ロミオとジュリエットみたいな話に思えてならないのだが。しかし目撃談によれば、黒騎士の甲冑の下は屍のような姿だという。王女はそんな黒騎士のどこがいいのだろうか。そんな黒騎士に嫁ぐくらいならば、まだ私の方がゲホッゴホッ。

 ともかく依頼は引き受けた。

 国王「これがうまくいけば、褒美は思いのままにしよう!」

 やった! 褒美は王女との結婚だー! 反対されたら駆け落ちだー!

 そして私は、第2の賞金首に掛けられる。(大ウソ)


≪シュタイン湖畔≫

 というわけで、私は黒騎士に会って彼の真意を問い、必要であれば討伐するため、シュタイン湖畔を目指して旅立った。
 シュタイン湖周辺は敵が強くて驚いたのだが、もっと驚いたのが魔法の暴走だ。
 なんと戦闘中にエミリアが唱えたヒャド(氷の槍)の魔法が暴走し、敵にとんでもないダメージを与えたのだ。
 ・・・って、こわっ! 暴走ってことは、あれが味方に当たることもあるのか!? もしそうならば、私だったら一撃死だよ! この世界って、こんなことがあるんだなぁ・・・。

 やがて湖畔にたどり着いたのだが、見たところ誰もいない。そこでしばらく待ってみることにした。

 そして夕方。ふと振り返ってみると、崖の上に漆黒の馬にまたがった黒騎士がたたずんでいた。黒騎士は騎馬を駆ると崖をかけ降り、私の前に立ちふさがった。こう書くと格好いいが、乗っている馬は盗品だ。
 この泥棒め! 神妙にお縄をちょうだいしろ!

 そして4体1の、騎士道精神を無視した戦いが始まった。
 黒騎士は強かったが、さすがに多勢に無勢。戦闘は私たち優勢で進められた。そしてあと一息という時に、私の体に不思議な力が湧きだした。

 ひっさつチャージってなに?
 え? 次のターンに “ひっさつ” というコマンドが選択できるの?
 良く分からないが選択してみよう。くらえ、必殺技!

 しかしそのターン、私が必殺技を発動する前に、エミリアが魔法でとどめを刺してしまった。
 ・・・で、必殺技って何だったの?


≪黒騎士の秘密≫

 騎馬から投げ出された黒騎士だったが、意外にもピンピンしていた。

 黒騎士「・・・・・・なにゆえ・・・・・・なにゆえ姫君は、キサマのような者を私のもとへ使わした・・・・・・。メリア姫はもう私のことを・・・・・・あのとき交わした約束は偽りだというのか・・・・・・。」

 「メリア姫って誰? あの王女はフィオーネ姫なんだけど。」

 黒騎士「何ということだ・・・・・・。あの姫君はメリア姫ではなかったのか・・・・・・。言われてみれば・・・・・・。彼女はルディアノ王家に伝わる、あの首飾りをしていなかった・・・・・・。」

 黒騎士「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 黒騎士は長い沈黙(点の数は24個、ちゃんと数えたから間違いない)の後レオコーンと名乗り、これまでのいきさつを語り始めた。
 少し前まで深い眠りについていたこと。
 大地震と共に、何かから解き放たれるようにして、見知らぬこの地で目覚めたこと。
 初めは自分が何者かも分からないほど記憶を失っていたこと。
 自分とメリア姫は婚礼を控えていた仲だったこと。

 彼は謝罪のためにセントシュタイン城へ赴こうとしたが、さすがに騒ぎになるだけだろうから引き留めた。説明するのは私の役目だろう。

 その後黒騎士は、自分の謎を解くためにどこかへと去って行った。
 ・・・・・・って、盗んだ馬かえせよー!


≪真実を求めて≫

 城に戻って国王に報告する私。しかし国王は私の話を信じなかった。いや、信じなかったのは私の話ではなく、私が語った黒騎士の真意だ。私が黒騎士に騙されて帰ったと思っているようだ。「ルディアノ王国など聞いたこともない!」うんぬんかんぬん・・・
 ・・・そういわれてみると、反論できないのが情けない。

 私たちの話を聞いていたフィオーネ姫は、部屋を飛び出していった。彼女はあんな黒騎士のどこがいいのだろうか。・・・という問題ではなさそうな気がするぞ。ちょっと話を聞いてみよう。

 フィオーネ「実は私、ルディアノ王国のことを耳にしたことがあるのです。」

 それは昔、乳母が歌ってくれたわらべ歌の歌詞の中。
 わらべ歌が唯一の手掛かりだというのは不安だが、今はそれにかけてみるしかない。そこで私は乳母の現住所を教えてもらい、彼女に会いに行くことにした。

 彼女が住んでいるというエラフィタ村に着いた私は、さっそく彼女に会ってわらべ歌を教えてもらった。

 黒バラわらべ歌
 注:歌詞の掲載はJASRACがうるさいため割愛。決して面倒くさいからではありません。

 要約すると、数百年前に、ルディアノ王国を脅かした魔物を討つために旅立った、黒バラの騎士を歌ったものだった。その結末は、国で待っていたメリア姫の願いかなわず、黒バラ、散る。

 なんとなく見えてきた。セントシュタインに伝わるという異国の首飾りが、もしルディアノ国のものであれば、ほとんどがつながる。しかし今は、それを確かめに行く暇はない。というのも黒騎士もとい黒バラの騎士が、真実が眠る地ルディアノに向かっているからだ。そこには今回の事件の黒幕が潜んでいそうな情報もあった。そしてきっとその黒幕とは、今回の事件の黒幕であると同時に、数百年前の事件の黒幕でもあるのだろう。
 かつて敗れた相手だ。黒バラの騎士一人では、同じ結末になりかねない。

 しかし私もお人良しだよな。馬泥棒の心配をするなんて!


≪愛は時を超えて≫

 黒バラの騎士を追いかけてたどり着いたのは、すでに滅びた王国だった。
 本来の主を失って久しい、王城の玉座。そこには新たな主が座っていた。イシュダルという魔女だ。彼女はかつて黒バラの騎士に呪いをかけて自分の伴侶としていたが、その呪いが先日の大地震で解け、黒バラの騎士に去られてしまったのだという。

 再びやってきた黒バラの騎士。しかし彼は今度もまた呪いを受けて、動きを封じられていた。急いで追いかけてきて正解だった。もう少し遅れていたら、数百年前の二の舞になっていたところだ。
 イシュダルは私にも呪いをかけてきた。しかし私はそれをはじき返した。人間ならば抵抗できないはずのその呪い。私は・・・人間ですらないのだろうか。ではいったい、今の私は何者なのだろうか。

 だが、そんなことを考えている暇はない。イシュダルが襲いかかってきたからだ。しかもいきなり僧侶のレジーヌがマヒ! これはやばい!
 ・・・と思ったが、呪いさえなければ大した敵ではなかった。

 呪いから解放された黒バラの騎士。そこへやってきたのは、はるか昔に亡くなっているはずのメリア王女・・・か?

 メリア?「約束したではありませんか。ずっとずっと、あなたのことを待っていると・・・・・・。」

 何百年も待たされた婚礼の踊りを踊る2人。だが黒バラの騎士は気付いていたようだ。相手の女性が、メリア姫の血と容姿と、そして記憶を受け継いだフィオーネ姫であったということに。
 それでも黒バラの騎士は彼女に感謝して、天へと召されて行った。

 結局今回、私は何をしたのだろうか。黒騎士を倒した。イシュダルを倒した。でも本当の意味で事件を解決したのはフィオーネ姫であり、彼女の護衛を務めたのは兵士たちだった。
 それでも、私たちがいなければ事件は違った展開になっていただろう。
 天使でもなく、人間でもない私だが、この世界にとって無意味な存在ではないのだと感じた。主役にはなれなくても、人々のために役立つことができるのだと。そしてそれこそが、生きるということではないだろうかと。

 考えてみれば、それは天使の役割そのものではないか。翼も光輪も失ってしまったが、私のしたことは、守護天使の使命そのものではないか。
 私は人間としての生き方が分からず悩んでいた。でも今回の事件で答えが見えたような気がする。
 人間でもなく、天使でもない私にもできることを、ひとつひとつやっていけばいいのだ。
 たとえば・・・
 黒バラの騎士が盗んでいた馬を、持ち主に返してあげることとかね!


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