≪それぞれの旅立ち≫
翌日、リッカはルイーダと共に村を立つことになった。峠の道が開通したという連絡があったからだ。
ニートだったニードは、リッカが経営していた宿を継ぐことにしたらしい。リッカに恩を売ろうとする魂胆が見え見えだが、とりあえずはうまく納まったといえるだろう。
さて、私はどうしようか。人間としての生き方が良く分からない。旅芸人という肩書はあるし、火吹き芸をできるようにもなったのだが、それだけではプロとして生きるのは難しいだろう。
冒険をしてみて、魔物を倒すとお金が手に入ることが分かったから生活には困らないのだが、ただ生きているだけの生活というのも生きている気がしそうにない。元が天使だったおかげなのか、私には魔物と戦う力がある。見えないはずの幽霊のようなものを見る力もある。これらを生かして、魔物ハンターにでもなってみようか。いや、冒険者というのもいいかもしれない。
とりあえずはリッカとルイーダに護衛として雇ってもらい、セントシュタインまで行ってみようか。
そんなことを考えていたら、2人はとっくに旅立っていた。
リッカさーん、ルイーダさーん、私を置いていかないでー!
≪セントシュタイン≫
ぜぇ、ぜぇ。ようやく2人に追い付いた。彼女たちは、ちょうど宿屋に入っていくところだ。
・・・って、セントシュタインに着いているじゃないか! これじゃあ護衛になっていないよ! ストーカーだよ!
ともかく2人を追いかけて宿に入ると、そこはちょっとした修羅場になっていた。伝説の宿王を連れて帰ると思っていたルイーダが、どこの誰ともわからぬ娘を連れて帰ってきたのだから、首を長くして待っていた従業員の気持ちは分からなくもない。
しかしリッカが宿王のトロフィーを見せると、みんながひれ伏した。まるで水戸黄門の印籠である。宿王の血をひいているということが、そんなにすごいのだろうか。リッカの実力は血筋によるものではなく、父親の下で修業した成果だと思うのだが。
ともかく一件落着したようなので、営業が開始されるまで時間つぶしに街をぶらついてみよう。
セントシュタインの城下町は、ちょっとどころではない騒ぎが起きていた。というのも、謎の黒騎士に襲撃されたというのだ。
ちなみに黒騎士が働いた悪事というのは、彼を取り押さえようとした兵士を怪我させたこと。自分からは襲わなかったということで、彼を悪人ではないと思っている人もいるようだが、私が耳にした情報によれば、彼はちゃんと悪事を働いている。なんと彼は、武器屋のおじさんが大切にしていた馬を盗んだというのだ。
黒騎士
罪名:馬どろぼう
なんだかなー。
≪ルイーダの酒場にて≫
宿屋兼酒場が営業を再開したので、2人の様子を見に足を運んでみた。ヒマな時に客引きをするという条件で、従業員価格で宿を利用させてくれるらしい。
そしてルイーダの酒場。ここには無名の冒険者(注:本当に名前がない)が旅の仲間を求めて集まってくるらしい。私も仲間を探して冒険者をやってみるとしようか。
パーティは最大で4人まで。つまり仲間は3人までであり、3人分の名前を私が考えなければならないということだ(彼らは名無しだから)。ならば適当な名前にするよりも、いかにもお供3人組という名前にした方がおしゃれではないだろうか。こういったことまで考慮できるのが、ネーミングセンスに長ける人というものだ。そんな私のネーミングセンスに驚き、感嘆するがいいわ!
・・・・・・・・・ひらめいた!
スケサン、カクサン、ヤシチ。
没!
イヌ、サル、キジ。
没!
いかん。これでは私のネーミングセンスを疑われかねない。もっと理論的に考えなければ。
3人といえば・・・3すくみ?
ならばヘビ、ナメクジ、カエル・・・って全然ダメじゃん! これならばまだ、グー、チョキ、パーのじゃんけんトリオの方がマシだよ!
3・・・3・・・3・・・
アカ、アオ、キの信号トリオで、信号戦隊アンゼンダー!
没!
そんな風に30分ほど悩んだものの(アホ)、良い名前がさっぱり浮かばなかったため、面倒くさくなった私は一人で旅に出ることにした。
念のために書いておくけれど、一人で旅に出たくなったわけじゃないからな!
【注】
時代劇の水戸黄門のお供は、初めは文中の3人だけだったらしいです。
≪パーティ結成≫
一人でなんでも屋的な仕事をしていた私だが、やはり寂しいし心細い。そこで名前ランダム作成機能を使って、3人の冒険者とパーティを組むことにした。これから長い付き合いになるであろう仲間たちを、簡単に紹介しておこう。
リカード |
戦士 |
男性 |
レジーヌ |
僧侶 |
女性 |
エミリア |
魔法使い |
女性 |
以上。
・・・って、本当に簡単だな。ま、私は元天使だから嘘はつかないのだよ。わっはっは!(大ウソ)
|