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≪禁煙に挑戦!≫

 これまで喫煙の利害について書いてきた。もちろんこれが全てではないが、基本的なことはお分かりいただけたと思う。そこで現実を考えてみてほしい。喫煙にはこれほどの害がありながら、なぜ多くの人が喫煙権を主張し、それが通ってしまうのだろうか。

 原因の1つは知識と理解の不足だろう。事実と俗説、現象の重要性。これらの違いを考慮しなければ、正しい結論を出すことはできないのだから。また喫煙があまりにも身近な習慣であるがゆえに、嫌煙者でさえも、喫煙は仕方がないという価値観を刷り込まれていることが少なくない。
 原因の2つ目は、目先の損得勘定のみで行動する人間の未熟さだ。これは自分の都合を部下に押し付ける上司と、非難されることを恐れて従う部下を想像すれば分かりやすい(学生ならば教師と生徒、先輩と後輩)。それゆえ理論の正当性ではなく、発言者の権力が物事を決定する世の中になっているのは、誰もがよく知っていることだと思う。目上の人の常識、あるいは多数派意見に逆らって生きるのは、容易なことではないのだから。
 これらの結果、喫煙者にも配慮できる人の正論よりも、わがままが優先されるのは、当然のことといってもいい。それゆえ喫煙という非常識な行為が、権利として扱われてしまうのだろう。

 しかし喫煙が権利として扱われても、その害は変わらない。社会や教育に与える影響を考えると、むしろ大きくなっていると言えるだろう。それゆえ喫煙は否定しなければならない。しかし禁煙するのは容易なことではない。
 そこで今回は、少しでも楽に、少しでも確実に禁煙できるように、禁煙のコツを書いていきたい。また禁煙には周囲の理解も重要になるため、止めるつもりがない人や吸わない人も、禁煙挑戦者の足を引っ張ることがないように読んでいただきたい。

【基礎知識1】
 何事でも正しい知識を持つことが重要。特にタバコの場合は、知れば知るほど「タバコを止めたい!」「禁煙しなければ!」と思えるようになるはず。「禁煙してみようかな」という気持ちでは失敗しやすいため、まずはあせらずに、止めたいという気持ちを高めていくとよい。
 タバコの害については、前回、前々回のコラムを参考にしてほしい。その上で自分や周りの人のことを考えてみると、思い当たることがあるのではないだろうか。
 もし「タバコを止めたい」と思えないのであれば、“必ず” どこかで考え違いをしているはずだ。喫煙を正当化しようと、そしてこれまでの自分の行為を正当化しようと、言い訳を考えてはいないだろうか。そして喫煙が当たり前という社会で身に付いたゆがんだ価値観(感覚)を、事実(理屈)よりも優先させてはいないだろうか。

【基礎知識2】
 喫煙者がタバコを吸いたくなる理由には2つあり、1つは習慣によるもので、つまり癖。もう1つは有害成分の1つであるニコチンの禁断症状によるもので、これは病気の一種(薬物依存症)。どちらも意志の力だけで克服することは難しい。そのため禁煙に失敗しても自分を責める必要はなく、また失敗した人を非難するのも間違っている。禁煙は1日でも意味があり、また死ぬまで続けなければ成功とはいえないのだから、目先の結果にこだわる必要はない。失敗したら、また挑戦すれば良いだけだ。
 本数を減らすという節煙は逆効果。周囲に与える影響は減るが、深く吸うようになるため自分への影響は減らない。また少しずつ減らしていく禁煙方法は、最後の何本かになってからが非常に辛くなり、かえって失敗しやすい。初めから0本を目指すべき。
 「低タール、低ニコチン」のタバコに代えることには何の利点もない。これは禁煙の助けにならないばかりか、吸う本数が増えて、逆に害が大きくなってしまうこともある。

【禁煙方法:基本】
 禁煙中には苦痛を感じて当たり前。多くの人が3日以内に最も辛い時期を迎え、その後も5日ほどは軽い苦痛を感じる。つまり1週間ほど我慢しなければならないため、「なぜ禁煙するのか」という、はっきりした動機がなければ失敗しやすい。健康、お金(趣味)、家族、プライド(良心)など、タバコ以上に価値を感じるものを探して動機とし、忘れないように目立つところ(タバコを吸う時に目にする場所)に書いておくと良い。
 買い置きのタバコと灰皿を処分して、けじめをつけることも重要。ライターは携帯せず、自宅に置いておくこと。
 生活にゆとりがある時期に挑戦するもの1つの手。忙しい時期の禁煙は、「禁煙のせいで余計に辛い」という風に、すべての問題を禁煙のせいだと思い込んでしまうため失敗しやすい(もっとも本当に忙しいのなら、タバコを吸うヒマなどないはずだが)。

 タバコや禁煙以外のことに意識を向けることも重要。最も楽で楽しいのが、読書(漫画でも可)やスポーツ、親しい人との会話など、タバコ以外の楽しみに力を入れるという方法。タバコ代をすべて娯楽に注ぎ込んでも損はしないはず。

【禁煙方法:癖の場合】
 食事の後や仕事の後など決まった状況で吸いたくなるのは、習慣による影響が大きい。このタイプは「行動パターンを変える」、「タバコの代わりに別の習慣を作る(砂糖抜きのガムをかむなど)」という工夫をすることで、比較的簡単に禁煙することができる。ただし習慣だけで吸っている人の割合は少なく、大抵の場合は次の “依存症の場合” と組み合わせる必要がある。

【禁煙方法:依存症の場合】
 喫煙者のほとんどは、癖になっていると同時にニコチン依存症(慢性薬物中毒)でもあり、この状態から抜け出すのは難しい。しかし禁煙の手助けとなる手段はいくつもあり、無理のない範囲で多くの手段を活用することが望ましい。また「吸いたい」という禁断症状が出ているときに細かいことを考えるのは無理なので、あらかじめ計画を立てておく必要がある。

1.挫折しにくい状況を作る。
 一緒に禁煙してくれる人を探す。あるいは親しい人に禁煙宣言をしておく。
 禁煙中に浮くタバコ代で何かを買うという、禁煙以外の目的を作る(禁煙成功時の自分へのご褒美。あるいはタバコを止めれば生活が充実することを実感するため)。
 タバコを処分しておけば、吸いたくなってもすぐには吸えない。1回の禁断症状(イライラ)は3分くらいしか続かないため、タバコを手にした時には吸いたいという衝動は収まっている。

2.吸いたくなる状況、喫煙を誘われる状況を避ける。
 酒席や喫煙場所など、喫煙者に囲まれる場所へ行かない。
 満腹、濃い味付け、油っぽい料理、アルコール飲料は、タバコを吸いたくなる原因になる。あっさりした料理をゆっくり味わい、食事を楽しもう。
 食事の後すぐに歯を磨くと、口の中がすっきりしてタバコを意識しにくくなる。
後日追記:タバコをまずく感じるようになる飲み薬もあるようです。

3.苦痛を和らげる。
 禁断症状が重い(辛い)人は、ニコチンガムやニコチンパッチを利用すると良い。ただしどちらも一長一短。ガムは特殊な噛み方をしなければならず、また口の中が荒れる場合もある。パッチは貼るだけなので楽だが、皮膚が弱い人は荒れる場合もある。ちなみにこれらはタバコの代用品であり、使っている間は禁煙成功とは言えない。

4.辛い時には気を紛らわせる。
 氷、あるいは冷たい水を口に含む。
 軽い運動や深呼吸などをする。
 禁断症状は体内のニコチンが減り、体が正常になっていく途中で起こるものであるため、辛いときには「体から毒が抜けている」と前向きに考えて充実感に変える。

【禁煙方法:専門家に頼る】
 これまでに書いてきたことは基本でしかない。深い知識と経験をあわせ持つ専門家のアドバイスは、大きな助けになるはずだ。
 書店に行けば、禁煙に関する本が売られている。ただし良い本ばかりとは限らないし、結局は自分自身で考えなければならない部分が多いと思われる。
 極一部の病院では禁煙外来が可能で、その人に合った禁煙方法を指導してくれる。
 専門家による禁煙サイトもある。そこには禁煙挑戦者が集まるため、同じ立場の人と意見交換ができるという利点もある。

【まとめ】
 1週間の禁煙に成功すれば禁断症状による苦痛はなくなり、特別な行動は不要になる。癖による衝動は長く続くこともあるが、他のことをして気を紛らわせる(タバコ以外の楽しみを持つ)ことで回避できる。
 しかし現実には、苦痛から開放された後で喫煙者に戻ってしまう人も多い。これは喫煙経験者が、未経験者よりも依存症になりやすい(戻りやすい)のが原因だ。たった1本のタバコで喫煙者に戻ることも多く、それゆえ誘われても決して吸ってはならない。タバコを断ったところで失うものはないし、そんなことで失うものならば無くて構わないはずだ(堅苦しく考えず、笑顔でさらっと断ろう)。

 長期間の禁煙にもコツがある。「1本くらい」を甘く見ないこと。受動喫煙(漂っている煙を吸う)をできるだけ避けること。禁煙初期の辛さを思い出し、禁煙再挑戦を想像してみること・・・。
 しかし一番大切なのは、タバコに頼らない生活の良さに気付くことだ。禁煙すれば、実感できる形で吸わない良さが現れる。まずはそれを探してほしい。一般的な例を書いておくが、他にも数多くの利点があるはずだ。

 ・ 浮いたタバコ代を他のことに使える(1年分、10年分の金額を計算してみよう)。
 ・ タバコのために時間や場所を取らなくてすむ。
 ・ 禁煙場所で普通に過ごせる。
 ・ 呼吸が楽になり、息切れしにくくなる。
 ・ 食事がおいしくなる(食べ過ぎに注意。ゆっくり味わって食べよう)。
 ・ 顔色や肌つやが良くなる。化粧ののりがよくなる。
 ・ タバコが嫌いな人と、無理なく付き合うことができる(子供や孫、恋人等に嫌がられない)。

 また実感はしづらいが、禁煙を続けることでそれまでに傷めた体を回復させることができ、最終的には喫煙未経験者とほとんど変わらなくなるということも覚えておいてほしい。

 禁煙生活の良さを実感できたなら、それはタバコの害を理解できたということでもある。自身に起こった変化を見つめて、生まれ変わった自分に誇りを持てるようになれば、2度と喫煙することはないだろう。


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