≪1年目 冬の月 14日 (金) 晴れ≫
今日は冬の感謝祭。女性から男性に、日ごろの感謝の気持ちを込めてチョコレートを贈る日で、バレンタインデーとはちょっと違うようだ。義理チョコ限定のバレンタインデーと考えればいいのだろうか。しかし実世界では義理チョコさえまともに貰ったことがない私としては、はっきりいってどうでもいい日である。人生、時には諦めることも大切だ。
家を出るとすぐ、ポプリがチョコを持ってきてくれた。
・・・は? これ、本物ですか? 味見とか、毒見とか、ドッキリカメラとかではなくて、本当に私にくれるんですか? うっかり3度もポチで脅かしただけでなく、朝の泉で隣にいるランにだけ温泉卵をあげていた私に、ほんとーにくれるんですか? いやいや、ありがたくいただきますよ。へっへっへ。
8時にはランがチョコを持ってきてくれた。父親のダッドさんが企んでいた、特製パイダイエット作戦から守ってあげたのだから、当然といえば当然だろう。・・・え、偉そう?
10時にはエリィが持ってきてくれた。彼女の場合はこちらが一方的にお世話になっていたような気もするが、祖母のエレンさんの話し相手になったり、弟のユウくんと遊んであげたりしていたので、そのお礼なのかもしれない。
しかしこのチョコレートはエリィが作ったのだろうか。エリィの料理は、ユウくんが泣きながら逃げ出すような代物なのだが。
12時にはカレンが持ってきてくれた。彼女とは持ちつ持たれつという感じなのだが、くれるとなるとやはりうれしい。
おや? チョコレートじゃなくて、チョコレートケーキだぞ。私のために作ってくれたのだろうか。
・・・しかしカレンの料理は、あのエリィも真っ青な代物だからな。ケーキが真っ黒なのはコゲのせいかもしれない。チョコなら既製品、コゲならカレンの手作り。
・・・おいしかったので、どうやら既製品だったようだ。うれしいような、残念なような・・・。
午後の2時にはマリーがチョコを持ってきてくれた。
はて、マリーに何かしてあげていたっけ? 彼女の場合もエリィ同様に、こちらが一方的にお世話になっていたような気がするのだが・・・。もしかすると、父親のバジルさんが書いた本を参考にして牧場を経営しているのを、喜んでくれているのかもしれない。本来感謝すべきなのは私の方なのだが、こういう喜び方ができるのはいいことだ。
釣り竿が金製になったので、海へ釣りに行った。釣れたのはタラ。次がフグ。
・・・ん? タラの次ぎがフグだから、合わせて「たらふく」だな。うまく日本語になっているぞ。そういえばタラの前に長靴を釣っているから、全部あわせて「長靴たらふく」だ。あっはっは、偶然って面白い。次はなんだろう。面白い言葉になればいいんだが。
そして釣れたのはクエだった。
「長靴たらふく食え」って、そんなの無理だってば!
注:フグのことを、福にかけて “ふく” と呼ぶ地方がある。また “たらふく” という言葉は漢字で鱈腹と書き、腹がはちきれそうになるまで食べるタラ(鱈)が語源になっているらしい。もっともこのゲームのタラは40cmほどしかないので、親戚のスケトウダラかもしれない(にしても小さいか?)。余談だがタラの卵がタラコで、スケトウダラの卵が明太子。“めんたい”
というのは、スケトウダラの別名の1つ。
≪1年目 冬の月 15日 (土) 雪≫
酒場へ行くと、ダッドさんとデュークさんが喧嘩をしていた。私が仲裁に入るとすぐに仲直りしてくれたのだが・・・。
こらハリスさん、警官が見ているだけって何事ですか! あなたがそんなことだから、私の牧場には夜になると野犬が来たり、大雪のたびにトーマス氏が荒らしに来たりするんですよ! 以前にこの村が平和なのを嘆いていたのは、事件を楽しみたいからじゃないでしょうね!? 毎日見回りをしているのは、見て回るだけが目的なんですか!? 私が警官の仕事までしていると、肩書きを名刺に書ききれなくなるんですよ! ただでさえ10足以上のわらじを履いているってのに。ぶつぶつ・・・。
≪1年目 冬の月 20日 (木) 晴れ≫
4日も日記を飛ばしたのだが、この間ずっと晴れていた。10日までに4日も大雪になったのがウソのような上天気だ。
私の生活はというと、資材集めをしたあとはずっと釣り。冬になって初めの頃は、冬にしか行くことができない鉱石場で宝石探しをしていたのだが、毎日同じことの繰り返しで飽きてしまったのだ。
・・・釣りだって同じことの繰り返しではあるのだが。
久しぶりの割に書くこともないので、ミニゲームの話。といってもエサやりで68コを記録したことくらいなのだが。このゲームはちょっとした工夫をするだけで、簡単に65点前後の高得点を記録することができる。手先が器用でない人でも、55点以上は十分に狙えるはずだ。苦手な人は、マリーの図書館で勉強してみよう。
現実の話になるのだが、牧場物語の公式ホームページを見ていると、とんでもない事実が判明した。なんとこのゲームのジャンルが、ほのぼの生活RPGになっているのだ。PS版はシミュレーションゲームとなっていたと思ったのに、なぜ!?
確かにゲーム内容はRPGだけど、一般的な基準では生活シミュレーションゲームだと思うし、何より箱にはほのぼの生活ゲームと書いてあるじゃないか! 私はRPG以外のゲームをするつもりでこれを購入したと前置きに書いたので、これでは私が大嘘つきということになってしまい、エンマ様に舌を引っこ抜かれてしまう。それにRPGで遊んだりしたら、RPG批評の方にも記事を書かなくてはならないではないか!
・・・ま、“RPG” の前に “ほのぼの生活” がくっついているから、対象外でいいよね?
≪1年目 冬の月 21日 (金) 雪≫
食堂が静かだ。いつもはランの元気のいいあいさつが聞こえてくるのだが、何かあったのだろうか。
そう思って奥に行くと、ランが苦しそうにしている。これはまずい! 急いで病院に運ばなければ!
診断結果 |
症状 |
腹痛 |
原因 |
食べ過ぎ |
原因物質 |
野菜いため,オムライス,お好み焼き,天ぷらうどん,チーズケーキ,アップルパイ,ケーキ,アイスクリーム,かぼちゃプリン |
父親のダッドさんがランの将来を心配して、ダイエット作戦を実行したのも無理はない。
≪1年目 冬の月 22日 (土) 雪≫
この村には料理上手な人が何人もいる。プロであるダッドさん、コロボックルの料理係シェフネン、前回の料理祭で優勝したリリアさんなどだ。一方で下手な人もやっぱり多く、エリィやゴッツさんなどがしのぎを削っている。
しかし、「一番下手なのは?」というアンケートを取れば、全員がカレンの名前を挙げるはずだ。なにせ料理祭では真っ黒なジュースで審査員を唖然とさせ、収穫祭の寄せ鍋にはチョコレートやジャムを入れるくらいだから(ジャムは未遂に終わる)、他の人とは格が違うといえるだろう。
さて、なぜこんな話をしたのかというと、目の前にカレンが作った料理があるからだ。ここは雑貨屋のダイニング。正面の席にはカレンが座り、潤んだ瞳で私を見つめている。普通ならば夢のような状況だが、いかんせん、カレンの料理がまともであるわけがない。カレンはきっと、私に味見をしてもらいたいのだろうが、私にとっては毒見だ。かつてくかたちや魔女裁判にかけられた人は、今の私と同じような気持ちだったのではないだろうか。くっ、ジェフさんもサーシャさんも、こんなことを私に押し付けやがって・・・。
しかしどんな食べ物でも丸呑みできる口と、何を食べても平気な胃袋だけが取り柄の私だ。カレンの料理に負けるわけにはいかない。
私は覚悟を決めると皿を両手でつかみ、料理を一気に丸呑みする!
・・・気が付いたのは、病院のベッドの上だった。私の完敗だった。
雑貨屋一家に捕まってできなかった買い物をするため、病院を抜け出すと再び雑貨屋に行く。
げっ、売り場にカレンがいる!
カレン「あ、ヨシヒトくんっ! 調子はどう?」
・・・おかげさまで、己の未熟さを知ることができました。
サーシャ「また来てよ! おばさん、あんたが来てくれるの毎日楽しみに待ってんだからさ。」
そりゃそうでしょうね。カレンの料理を、私に押し付けることができるんですから。
ジェフ「キミがガンバっていると、ボクまで元気が出てきたんだ。どう考えたって、キミの方が大変だものね。」
分かっているのなら、あなたの娘さんをどうにかしてください。
私は確信した。この村の危険人物はトーマス氏だけではないと。カレンをどうにかしなければ、いつかは犠牲者がでるかもしれない。しかし本人には自覚がないのだから始末が悪い。
ああ、カレンの料理を否定できるような勇者は、この村にはいないのだろうか。せめて親しい人が遠まわしに諭すくらいはしないと、私の命が危ない。しかしカレンの両親はあてにならないし、幼馴染のリックは以前に愛想をつかされていた。すると残っているのは・・・私か!?
注:くかたち、魔女裁判(宗教裁判)ともに、迷信に基づく理不尽な裁判。くかたちは日本、魔女裁判はキリスト教。
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