≪1年目 春の月 1日 (日) 晴れ≫
ミネラルタウンへ向かう途中で、入国審査らしきものを受けた。と書けば大変な感じがするが、ようは「名前を入力してください」という、ゲームではよくあるアレだ。しかし私は、こんなところでつまずいてしまった。
「本名にするべきか、ヨシヒトにするべきか。」
しばらく迷ったが、プレイ日記を書くことが決定しているため、混乱しないようにヨシヒトにすることにした。誕生日は本人と同じ春の月の12日。ちなみに春の月というのは現実世界での3〜5月のこと・・・だと思う。元旦が春の月の1日のため、あまり自信はないけれど。牧場物語の世界は1年に4ヶ月しかないため、季節の名前が月の名前になっているのだ(1月が30日で、1年が120日)。
それから牧場名はキャンディ牧場(注1)。なんだかメルヘンな名前だが、そのうち慣れるだろう。
で、次は・・・なにっ、子犬の名前だ!? ミネラルタウンガイドブック(またの名を取扱説明書)によると、犬とはボールやフリスビーを使って遊ぶことができるらしい。つまりは投げた物を拾ってこさせるという、遊んでいるのかイジメているのか分からないようなことができるということだ。ならば身近な人の名前を付けるのがベストだろう(<非道)。
命名:エディシア(注2)
・・・まてよ。いくら奴がゲームに関心を持っていないとはいえ、こんなイラストが可愛いゲームには飛びついてくるかもしれない。そしてもし、このことがばれたりしたら、どう言い訳すればいいんだ?
「小柄で、可愛くて、みんなの役に立ってくれる、きみのイメージとピッタリだったのさ!」
・・・やっぱり無理だろうな。かなり悩んだが、犬の名前はポチにすることにした。
手続きには少し時間がかかるらしい。ただ待っているのも退屈なので、今のうちに、私がミネラルタウンへ行くわけを説明しておこう。
実を言うと、私がミネラルタウンへ行くのは今回が初めてではない。幼い頃に父と母に連れられ、旅行に行ったことがあるのだ。しかしその当時から極度の方向音痴だった私は当然のように迷子になり、とあるおじいさんに保護された。そのおじいさんと親しくなった私は、ミネラルタウンを去った後も文通という形で交流を続けていたのだが・・・その手紙がこなくなったのだ。おじいさんの年齢を考えると、放っておくわけにはいかない。
そう思った私は、気がつくとミネラルタウン行きの飛行機・・・か船かSLかは分からないが、ともかく乗り物に乗っていたのだった。
手続きが終わってミネラルタウンに足を踏み入れた私は、他の物には目もくれず、おじいさんの牧場へ向かって駆け出した。そして牧場に辿り着いたとき、私は目を疑った。一体、何なのだ。この・・・終戦直後としか思えない荒れ方は!
あまりの光景に呆然としていた私だったが、さらなる衝撃は、突然現れたトーマスと名乗る初老の男性によってもたらされた。
えっ、半年前におじいさんが亡くなった!? その後はトーマス氏が牧場を整理していたのにこんなに荒れてるの!? しかもこの荒れ果てた牧場の相続人が私になっているって!?
・・・やっと状況が読めてきた。おそらくおじいさんが亡くなった後、相続する者がいない牧場をトーマス氏がネコババしようとしたが、牧場経営の経験がない彼は再起不能な状態にしてしまい、たまたまやってきた私に残骸を押し付けようとしているのだろう。おじいさんの遺書を私に見せてくれないのがその証拠だ。
まあいい。何の準備もせずにここへ来た私には、生活するための家もなければお金もない。運営資金までもらえるというのだから、渡りに船というべきだろう。それに見る影もないとはいえ、あのおじいさんが大切にしていた牧場だ。ここを放っておくわけにはいかない。
「いつか、きっと、ここをかつての緑あふれる楽園に戻してみせる!」
そう心に誓った私だが、本当は子供の頃にここで出会った女の子との再開を果たし、ラブコメのような展開になることを期待していたりするのだった。
注1:これを書いたときに使っていた旧サイト名は、“管&エディのミックスキャンディ”。
注2:エディシアは、このサイトのアシスタント。詳しくはエセコラム(別窓で)をご覧下さい(読まなくても問題ありません)。
≪1年目 春の月 2日 (月) 晴れ≫
おじいさんから受けた恩を返すために牧場主となった私だが、問題は山積みだ。だがあせる必要はない。時間はいくらでもあるのだから、できることから1つずつやっていけばいいのだ。
まずは・・・自分の物となった、この家を知ることから始めよう。
周りを見渡すと・・・トーマス氏が整理した後だけあって、冷蔵庫も棚もないのか。人が暮らせる家には思えんな。しかも風呂や台所さえ見当たらない。トーマス氏は、そんなものまで整理してしまったのだろうか。
もちろん、残されている物もちゃんとある。例えばカレンダー。いくつも印が付けられているところを見ると、重要なことが書いてあるのかもしれない。どれどれ、昨日は餅つき大会が・・・なにぃ!? ミネラルタウンの連中は、私を誘いもせずにそんなことをしていたのか!? ゆ、ゆるせん!
でもトーマス氏は、なんでこの牧場に来ていたんだろう。まさか私を牧場に釘付けにして、イベントに気付かれないようにしていたのでは・・・。
ちっ、あのタヌキ親父め、なかなかやるじゃないか。いっぱい食わされたぜ。まあトーマス氏からは運営資金として500Gものお金をもらったからな。今回は水に流すことにしよう。
しかし500Gか。この世界の経済はよく分からないが、金貨500枚というとかなりの価値があるはずだ。例えば金貨が一円玉と同じ大きさで、金1グラムを1300円として計算すると・・・490万円!?
あははは、純度とかはよく分からないが、最低でも300万円くらいの価値はありそうだ。こりゃ、いきなり金持ちになっちまったな。
さて次は・・・テレビでも見てみるか。おや? 女神さまとやらが出てくるクイズ番組で正解したら、賞品のおもちやそば粉が出てきたぞ。一体、どこから出てきたんだ?
しかしこの家、押入れを含めても1部屋しかないんだよな。そのせいでおじいさんは、物置代わりに巨大な宝箱を使っていたみたいだけど・・・宝箱か。私はRPG以外のゲームがしたくなって牧場物語を購入したんだが。
で、中身はというと、バトルアックス、ウォーハンマー、死神の鎌・・・って、こらぁ!(注1)
気を取り直してビデオを見ることにしよう。トーマス氏は親切なことに、仕事の仕方が学べるビデオまでくれたのだ。もっともそれを見ているはずのトーマス氏があんなことをやらかしたのだから、一体どれだけ信用できるのかは分からないが。
さて、初めに見るのは “作物の育て方” というタイトルだ。
・・・ふむふむ、なかなか分かりやすく説明されているな。これでなぜ、トーマス氏が一人前になれなかったのだろう。
お、道具はレベルアップするのか。それで高品質の道具を生かすためには、「ため攻撃」をする必要があり・・・って、ため攻撃だぁ!?
やはり、宝箱に入っていたのは武器なのか? そしてトーマス氏は、極限までレベルアップさせた武器による奥義・最大ため攻撃によって、牧場を崩壊させてしまったのか?
・・・もしいつか、奥義を修得するイベントが発生したとしたら、丁重にお断りすることにしよう。“ふりだしに戻る” は辛すぎる。
その後もしばらく自宅を物色していたのだが、ふと時計を見ると、起きた時からまったく時間が進んでいない。そうか、屋内では時間が流れないのか。今日は初めに、ご近所へあいさつ回りに行く予定にしていたのだが、さすがに朝6時から行くのは気が引けるな。まずは畑仕事をやってみるか。
・・・うちの時計が、止まっているだけでなければいいのだが。
まずは雑草を刈って、邪魔な枝や石を処分し、畑を耕す。
そりゃ!
とりゃ!
・・・なかなか難しいな。慣れるまでは苦労しそうだ。おや、畑からお金が出てきたぞ? 5Gか。なんだかついてるな。お、また何かが・・・モグラでやんの。
「おーい、ポチ。ヒマだったらこいつと遊んでろ。」そう言ってポチを見ると、ノンキに居眠りしてやがる。やっぱり名前は、エディシアにするべきだったか・・・。
気が付くと正午を回っていた。慌てて仕度してあいさつ回りに行く。初めに向かった家は留守だった。
気を取り直して雑貨屋へ行く。
たしか作物の種はここで買うんだよな。お金はすべて持ってきた(505G=推定400万円)から、全種類買ってみようかな。お、リュックまで売っているじゃないか。いま持っている奴はそば粉とおもちを入れただけで一杯になってしまうから、もっと大きな奴がほしかったんだ。
えーっと、値段は・・・3000Gだぁ!? 隣を見ると、収穫用のかごが5000Gで売られている。まさかと思い種コーナーへ行くと・・・。
かぶ |
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120G |
じゃがいも |
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150G |
きゅうり |
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200G |
な、なんだこの値段は。まさかこの辺りでは、金は野菜の種よりも安いのか? それともGという単位は、金貨の枚数を表すものではなかったのか?
・・・考えてみれば、1円玉500枚分の金の重さは約3.7kg。もっと早く気付くべきだった・・・。
しかたなく3種類の種を1つずつ買って、すぐ近くの病院へ行く。もちろん挨拶をするためで、精神的な疲労を診てもらうためではない。
病院で一番気になったのは、メイド姿の可憐な女性・・・ではなく、彼女が売っていた薬の名前。
ちからでーるというのもなんだが、問題は後者である。つかれとーるというのは、服用者の疲れを取ってくれるのか? それともこの薬自体がすでに疲れているのか? どっちにせよ、とても手を出せる金額ではないので、見なかったことにするしかないのだが。
ちなみにメイド姿の女性はエリィという名前の看護婦(注2)見習で、私と同年代だ。でも例の女の子ではなさそうだ。エリィは黒髪で女の子は金髪・・・だったと思うし、口調だってまったく違う。
まあ、いきなり見つかるとは思っていないし、見つかったからといってどうにかなるとも思えないのだが、エリィが結構好みのタイプだっただけに、ちょっと残念。
牧場に帰ってきた時には、すでに薄暗くなっていた。いかん、急いで種をまかなければ。そしてお金を稼いで、あの普通サイズのリュックを手に入れるのだ。せっかく海岸で出荷できる薬草をたくさん見つけたというのに、今のリュックではほとんど持ち運べやしない。あれ全部を毎日出荷すれば、いい小遣い稼ぎになりそうなんだが。
0時を回ったころ、ようやく水やりまで終わらせることができた。もうヘトヘトだ。
これから毎日、こんな事が続くのだろうか。この荒れ果てた牧場に、活気を取り戻すことができるのだろうか。
・・・いや、今日だけで3面(注3)もの畑を作ることができたんだ。この調子ならあと24日もあれば・・・。
そう思って牧場を見渡した私は、残る96%の敷地に乱立する巨大な岩や切り株に圧倒され、思わず涙を流してしまうのだった。
注1:バトルアックス(戦斧)、ウォーハンマー(戦槌)などの本当の名前は、オノ、ハンマー、カマ。
注2:現在の日本に看護婦は存在しない。性別に関係なく看護師という呼び方に統一されているからだ。しかしこのゲームの対象年齢の広さを考えると、馴染み深くイメージしやすい名称を使うことを間違いとはいえない。が、それでも看護師とすべきだと思う。もっともこの名称変更は男女差別、つまり人権問題がらみで行われたものであり、看護という仕事に関しては、むしろ男女の区別をしないことが人権に係わるのでは? とも思うのだが。
注3:このゲームでは縦横3マスずつの計9マスが畑の基本形となるが、これを1面と表現している。
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