2ページ目/全3ページ 驚いて逃げようと腰を後ろに引くと、さらに尻に激しい痛みを感じた。 そこで、もっと怖い事に気がついた。尻の中にも何かが入っているのだ。 先ほどから気がついていたが、未来流の左耳の辺りで、ハアハアと息を乱している男がいる。 顔は全く見えないが、その男が後ろから未来流の背に覆い被さるようにし、 半分ほど剥き出しになっている尻を厚い手の平で撫でていた。 未来流の尻には冷たい外気があたり、背筋が震えた。 おまけに、今朝、麗二にやられたのと同じく、尻穴に指を二本入れられている。 節くれだった男の指の感触がわかった。 本来は濡れる事の無い場所なので、擦られるとピリピリと痛みを感じる。 さらに、男の指が短いのか入り口付近を出入りするだけで、気持ち良いポイントにうまく当たらない。 それが未来流に苦痛ばかりを与えていた。 (痛いよ! やめてよ! ) さらに、誰の物が良くわからない腕が制服の胸元を弄っていた。太くて毛深い腕だった。 この二人の他にも痴漢がいるらしい。 差し込まれた腕は、ブラウスの中まで大胆に侵入すると、敏感になり膨れている乳首を撫でていた。 まるで女のように胸を揉まれ、乳首を指で摘まれ、好きなように弄り回されている。 未来流が自分の状態に驚き、どう対処して良いのかわからずに身動きを止めていると、 身体を触ろうとする腕はますます増えていった。 剥き出しにされた太股や尻を撫でる手があったり、下着の中には四方から五〜六本の 腕が差し込まれ、未来流の可愛い小ぶりのペニスを奪い合っていた。 さらに尻穴には、すでに二本も指が入って動いていると言うのに、 他の人間がまた指を差し入れようとしている。 硬い尻穴の入り口が無理やりに押し広げられるのがわかった。 もう一本、指が捻るように押し入ろうとしている。 (駄目だよ! 裂けちゃうよ! ) 尻を懸命に揺すって拒否する未来流を無視して、三本目が強引に中へ入ってきた。 今度はかなり長い指で、奥までいっきに突き込まれてしまった。 未来流は激痛に悲鳴をあげそうになったが、なんとか歯を食いしばって堪えた。 (嫌だ! こんなの嫌だ! ) 人狼の発情期が人間の男にこんな影響を与えるなんて、未来流は思ってもみなかった。 それに、人間に触られるのは苦痛と嫌悪しか感じなかった。 人間など、人狼の未来流なら指先一つで吹き飛ばす事ができる。 それをしないのは、兄達と約束したからだった。 人狼だと言う事は、一族の掟で秘密にしておかなければならない。 知られたら八十神の人々は、この街から出て行く事になる。 この街で生まれ育ったのは、未来流一人だけだった。 八十神の当主に拾ってもらうまで、街の片隅で生きてきた。 赤ん坊の頃に路地裏に捨てられたのだ。 それこそ、街に住む野良犬と一緒に生活していた。 人間と一緒にいるよりも、動物と残飯を漁っている方が、よほど心が落ち着いた。 何度か保護されて施設に入れられたが、人間とはうまく生活できない。 だから、ずっと一人だと思っていたのだ。 三年前、彼らと出会った時。自分が人間ではなく、人狼だと言う事を初めて知った。 自分と同じ匂いのする生き物に遭遇して驚いたが、とても心が落ち着いた。 動物と一緒にいる時と同じ、安らかな気持ちになる。 それから、初めて見る他の人狼の姿に感動してしまった。 彼らがとても美しかったからだ。 《 生命力に満ち溢れている 》と言った方が正しいかもしれなかった。 自分のように、人間の残飯を漁り薄汚れてしまい、社会から隠れて生きようとはしていなかった。 人狼である事に誇りを持っていた。 そして、誠実であった。 初対面で麗二に顔を見られた時、未来流は恥ずかしさのあまり消えてしまいたかった。 (この人に比べたら、自分はなんてみっともない姿をしているのだろう? ) 同じ人狼だとは思えなかった。 まるで、自分は汚い野良犬にしか思えない。 だから、今でも麗二に会うと、未来流は緊張してしまう。 顔を合わせて彼と会話するなんて、とても出来なかった。 そんなことをしたら、自分の頬が赤くなるのがバレてしまうに違いない。 未来流は麗二が嫌いどころか、憧れていたのだ。 そっと麗二の後ろ姿を覗き見ては、その筋肉質で引き締まった身体にうっとりとしてしまう。 もう中学生だと言うのに、子供の頃に栄養が足りなかったせいか、 痩せてしまい骨と皮のような自分の身体が大嫌いだった。 おまけに目ばかり大きく、女のような生っちろい顔も嫌でたまらない。 未来流は今でも、自分の姿を鏡に映すことができなかった。 だから、麗二の言葉使いや、乱暴な仕草を真似してみたりする。 一方、その恥ずかしさも手伝って、本人には反発し、何かにつけ口答えばかりしてしまうのだ。 せっかく麗二が世話をしてくれようと、声をかけてくれるのに、 こんな酷い事ばかりしている自分にも腹が立ってたまらなかった。 きっと、麗二には呆れられて、嫌われているに違いない。 京一郎に命じられたのでもなければ、自分の世話役などしたいはずが無かった。 (嫌だったら、無理に優しくしなくても良いのに。 ) (面倒なんて見なくても良い。そんなの、もう良いのに。 ) 未来流は、麗二に世話を焼かれるたびに、いつも泣きたくなるのだ。 同情されるのも、嫌々ながら世話をされるのもたまらない。 でも、本当は、麗二に少しでも気に入って欲しい。 自分を好きになって欲しい。いつも、そんなことを心の中で思っていた。 しかし、取り入ったり甘えたりするのは、さらに醜いような気がして未来流には出来ないでいた。 また、何か失敗したら、今度こそ嫌われて捨てられてしまうのではないだろうか? 未来流はそれがとても恐ろしかった。 彼は、自分を弟だと言ってくれるけれど、とてもそんな風には思えないのだ。 自信が無かった。 自分は麗二に比べたら、とても醜い姿なのだから。 1ページ目へ戻る 3ページ目へ進む 小説マップへ戻る |