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目黒川船入り場跡地
祐介は海上保安学校を卒業し、海上保安官となった。30歳になるまで、巡視艇勤務であった。昨年から陸上勤務となり、内偵捜査を含む麻薬・拳銃などの密輸の取締りや海難事故の救助等、仕事は多岐にわたる。また海上生活が長かったので、少し現実離れしているところがあった。
昨年、購入したマンションは勝鬨(かちどき)橋近くにあり、18階の彼の部屋からは、東京湾が良く見える。海が好きな彼は、ここでの一人暮らしに満足していた。ZIGZAGへは事務所からから30分近く歩いて通っていた。フィットネスに通うようになってから、帰宅は夜中の12時を回ることも多かった。
あの日は難しい仕事に熱中していた。担当した海難事故の原因を、画像や航海データ、塗膜片などあらゆる角度から追求する。これは事故裁判の時に重要な証拠になる責任のある仕事で、やっと報告書を作成し疲れきっていた。
仕事を終えて、それでもフィットネスがやりたくて、急いで目黒川沿いの路地を小走りで、ZIGZAGに向かう途中だった。少しボーっとしていたので、前に自転車がやってくることに気がつかなかった。祐介は良く物思いに耽ることがある、海の上では時間がゆっくりと流れていた。そのときの癖が未だに抜けていないようだ。
ZIGZAGに向かう途中に目黒川船入り場跡地でその面影を残した公園がある。時間がある時はたまに一休みをする。地面に埋め込まれた大きな杭が船の甲板を思い起こさせ、お気に入りの場所になっていた。
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