自宅にて
 
 次の日真悠子は遅い朝ご飯を食べた。土曜の朝は一番リラックスできる時間だ。FMラジオをつけるとセリーヌ・ディオンのMy heart will go onが偶然にもかかっていた。

  真悠子は昨日の出来事を思い出していた。ストレッチマットの上での祐介の姿が、何故か脳裏を駆け巡った。太腿からふくらはぎにかけての足のラインが目に浮かぶ。不思議な気持ちだ。上気しているのが分かった。こんな気持ちになったことがあるかどうかも思い出せなかった。 気分を変えようとラジオを消しテレビをつけた。バラエティ番組も初めだけ内容が頭に入るけれど、それもだんだん上の空になってくる。気が付くと祐介の事を思い浮かべている。それはどうしようもない事だった。

  土曜日の午後はやることがたくさんある。部屋の掃除、洗濯、食器洗い、アイロンがけをする。 ワンルームマンションの一人暮らしだからすぐに終わってしまうけれど、午後のスタートはそこから始まるのが習慣だった。

  それから持ち込んである仕事をこなすことが多い。 日曜日は完全休養で、たまに渋谷でショッピングをする。 仕事は代々木の広告代理店に勤めだしてから、6年目になる。 同僚が次々と寿退社していく中、真悠子はすでにベテランの部類に入っていた。 制作部に配属されてから、パソコンに向かっている時間が多く、仕事が多いと自宅に持ち込んで、 仕上げることも少なくなかった。 今日も仕事を抱えていた。おかげで、祐介のことは忘れることができた。

  次の週の月曜日になった。今夜は8時からの「ボディコンバット」のクラスがある。 祐介に会えるかもしれないと思うと気持ちも弾んでいた。
 
 しかしその週、祐介は来なかった。そして次の週もまた次の週もやってこなかった。 真悠子は気になって仕方がなかった。
 
 








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