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ストレッチマットの上で
江戸文字で「女」と大きく書かれたのれんをくぐると、ロッカー室があり、その奥にスパ(風呂)がある。サウナの他ジャグジーや薬湯等、施設は充実している。都心のジムでは珍しく、広くゆったりとしていたので、仕事で遅くなった時など、わざわざスパだけに入りに来ることもあるくらい、気に入っていた。
着替えを済ませ階段をあがると、フリーゾーンがある。様々なマシンがところせましに設置してあり、皆それぞれにフィットネスを楽しんでいる。左側に第1スタジオ、右側にゴルフレンジ、その奥に第2スタジオがある。
真悠子はいつもの通りバイク使った運動を10分間して、身体を温めた後、ストレッチを始める。そのほうが筋を痛める危険は少ないのである。6畳位の広さのマットの上でストレッチをしていると、祐介が笑顔でやってきた「さっきはどうも」「どうも」
真悠子はあきらめたようにため息をついた。 今日はこの人にペースを乱されそうだわ。
でも不思議と嫌悪感は全くなく、むしろ気さくな祐介のことが気になり始めていた。
ストレッチの最中、横目で祐介の身体を観察していた。太腿からふくらはぎに繋がる脚のラインがきれいだったし胸板は厚く肩幅も広かった。Tシャツで隠れてはいたが筋肉も柔らかそうで、鍛えればすぐ美しい体形に変身しそうに思えた。
「あのー、自分は菅生祐介といいます。宜しかったらお名前をお聞かせいただけませんか?」
「え、ハイ、朝倉です。」 不意に質問されたので、反射的に答えてしまった。そういえば、名前も知らない同士だった。
「そうですか、家が近そうですね。自転車で通えるなんてうらやましい。」 ポンポンと話しかけてくるので少し圧倒されてきた頃、隣に常連の洋子
がやってきた。
「こんばんは」真悠子は救われた気がした。 「仕事が終わるのが遅くなってやっとのことで、間に合ったわ」
「そう、大変だったわね」 たわいのない会話だったが気持ちが落ち着き、普段の自分を取り戻していた。
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