あれは根室本線の富良野−新得間を漫遊したときのことだっただろうか。
だとすると2004年の2月28日である。
JR白石駅で乗車前に旅行のパンフレットを入手した。
列車内での暇つぶしが主であったが、ゴールデンウイークの漫遊先をどこにするか、安い個人包括旅行がないかを確かめるためでもあった。
その時点では『JRフライトプラン大阪』で関西空港まで飛び、紀勢本線アゲイン、名松線などを漫遊しようと考えていた。
2泊3日の計画もすでに練られていて、後は新しい時刻表で確認すればよかった。
しかしゴールデンウイークには青春18きっぷの発売はなく、現地でのJRの移動に費用がかさむとも思われた。
ならば昨年に利用した『みちのくフリー切符』で再度、北東北漫遊を敢行するかと漠然と考えていたところだった。
ごっそりパンフレットを仕入れて、滝川までの道すがら、熱心に見入った。
このとき『JRフライトプラン九州、山陽』のパンフレットに綾小路さんの目が留まった。
そのプランは九州での空港および宿泊地が福岡、長崎、熊本、宮崎、鹿児島の中から選べるものだった。
綾小路さんには2003年の暮れに立てて、まだお蔵入りしている下関から九州入りする計画があった。
この計画に近いものにするには福岡空港が起点だろう。
しかし綾小路さんはかねてから次回、九州に行くときは、肥薩線の漫遊を目玉にすると決めていた。
そこでそれに一番都合がいい、熊本を拠点とするプランに注目した。
その熊本での2連泊プランの値段は76800円。
もちろんこれは往復の航空券とホテルのセットであるが、安い!
延泊も可能だし、追加で個人的に宿を手配してもよさそうだった。
そしてパンフレットをよく見ると、5月1日の出発でこの値段だった。
4月中に出発すれば、なんと57300円、メチャメチャ安いではないか。
よーし、1日休みをもらうか。
さらにこのプランにはオプションが用意されていた。
『全九州フリーきっぷ(有効期間5日間)』の値段は15000円だった。
これはJR九州すべての特急の自由席まで乗車でき、さらにこの時点から2週間後に開業を果たす『九州新幹線』にも乗車できるものだった。
よーし、決定!
その後、内容を全面的に見直し、5泊6日の計画が立てられたのである。
出発の当日、綾小路さんはバスで新千歳空港に到着した。
ゴールデンウィークの登場手続きでは、テロを警戒して靴まで脱いで探知器に入るという情報まで流れた。
ところが実際にはそんなに物々しい検査はなかった。
10時00分発の綾小路さんを乗せたボーイング777は新千歳空港を離陸すると、一路熊本空港を目指した・・・。
だと良かったが実は直行便がなく、止むなく羽田経由であった。
しかも新千歳空港7時50分発で、熊本空港11時25分着の便は確保できなかったので、熊本空港への到着は14時05分の予定である。
新千歳空港には警備に備えて早めに到着していたので、機内では窓際の座席が確保できていた。
そこで綾小路さんは機上から度々地上を見下ろすこととなった。
最初に気が付いたのは苫小牧東部である。
厚真あたりだろうか?
ここで綾小路さんは日高本線の線路を捜した。
それらしき放物線を発見したが反対側が途切れていたような・・・。
いまひとつ確信は持てなかった。
次ぎに地上を見たときは青森県の南部だっただろうか。
少し前に伺えば下北半島が見えたかもしれない。
遅かった。
そこからは内陸部を進むようだったので、この後のリアス式海岸は見る事はできないようだ。
そしてしばらくすると宮城県上空にさしかかった。
並んで見えるのは伊豆沼と内沼だろう。
その向こう側には牡鹿半島が見えてきた。
牡鹿半島から続いた海岸線の先には松島らしき小さな区域が見えた。
ここで綾小路さんは1年余り住んでいた仙台を探した。
仙台港か仙台空港がランドマークになるかと思ったが見つけられない。
気が付けば地図で見覚えのある川が流れている。
あれは阿武隈川ではないか。
そうすると仙台はすでに通過している。
後で確かめると仙台は松島のすぐ南側だった。
ドリンクサービスの後に地上を伺うと霞ケ浦が見えるではないか。
大きい。
鯉ヘルペスとかで大量の鯉が処分されたのは記憶に新しいところである。
そしていよいよ東京湾が見えてきた。
何隻もの大きな船が停泊している。
それがタンカーなのか、浚渫船なのかは分からない。
大規模な埋立地が見えてきた時にはすでに着陸体制に入っていた。
11時30分、ほぼ定刻に羽田空港に到着した。
ここで初めて航空機の乗継ぎを経験することとなった。
熊本行きの搭乗ゲートに向かったが、さすがにゴールデンウィーク、大変な混雑である。
ひと際長い搭乗者の列の行先を見ると『釧路』、そして『函館』となっていた。
君たち、もうシーズンオフだよ。
雪の鉄道旅行を楽しまないとはもったいない。
綾小路さんはそう思ったが、彼らはそんなことには興味を持っていないのだろう。
熊本への乗継便は12時25分の出発予定だったが、これに接続する別の乗継便が遅れたため、離陸は10分ほど遅れたようだった。
うーん、今日は時間ぎりぎりの計画だったので心配になってきた。
乗継便ではカメラを用意した。
出発して最初に目に付いたのは東京湾横断道路だった。
『海ほたる』に行くまでの細い道路が見えたが、あっという間に翼に隠れて撮影はできなかった。
そして機首が南方向から西方向に向かうと富士山が見えた。(左)
このあとで近くになったらもう一度撮影しようと思ったが、飛行機は富士山の左側を通過するようだった。
綾小路さんの座席は左側の窓際だったので富士山は見えなくなった。
右側の窓からははっきりと見えていることだろう。
しかし代わりに眼下に相模湾が見えた。(右)
このときは意識していなかったが、左端に移っている小さな突起はどうやら江の島らしい。
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