I  don't  know


自分の気持ちにそっと蓋をする。
溢れてしまわない様に。
零れ落ちてしまわない様に。
そっとそっと蓋をする。
そしてその蓋に願いを託す。

誰かがそれを開けてくれる事を信じて。













ある日を境に彼はこなくなった。
わかってた彼が来なくなる事なんて。
でも実際その状況に陥ってしまうと、今まで隣にあったはずの暖かさを体全
体で求めている。
ふと気がつくといつのまにか彼の存在を探している。
一人で食べるお弁当。
とても冷たく感じる。

「…あれ?」

気付くと頬を伝う涙。
生暖かいソレ。
あまりに久しぶりでソレが流れ出てくることに驚いた。
でもそんな感覚も束の間で。
あっという間に涙は溢れ出てしまった。

「…っ…ふぇ…。」

嗚咽を我慢しようとしても止まらない。
何分久しぶりな感覚で止める方法を思い出せない。
必死で考えても後から後から溢れ出てくる涙。涙。涙。
『ポタッ…ポタッ』と頬から涙は流れ落ち、そして音を立てながら屋上の床
に。



もう何分も泣いているのにそれは留まる事を知らない。
『キーンコーン…』遠くで予鈴のなる音が聞こえる。
次第に空は曇っていく。
それでも私はその場から動けなかった。
全身でこの場から動く事。
ソレを私は拒んでいた。








『キィッ…』と扉が開く音。
何故か聞こえた気がした。
でもわかってた。
誰ももうここに来ないなんて。
また私に孤独がやって来たのだと。


「実菜穂…?」
しばらくしてから聞こえる声。
私が欲している声。
「どうしたの…?」
その声。
その声を聞いて私の涙はさらに溢れ出す。
「何かあったの?」
次第に優しくなっていく彼の声。
「っ…ふぅ…。」
嗚咽で私は言葉を返せない。
だから首を横に振った。
「それじゃあなんで泣いてるの?」
それがわかったら苦労はしない。
『わからないよ。』
そう伝えたくて必死に頭を振って彼を見る。
するとあっという間に暖かくなる。
目の前には制服。
何故だかとても安心する。
もっと近くによりたいと思って両手を背中にまわす。
そのまま彼は私が落ち着くまでずっと抱き締めていてくれた。