I  don't  know



知りたくなかったの。
だって私はソレを失った時の気持ちを、
…痛いほどに知っているから。

でもそれは逃げただけだった。
自分が本当に欲しているモノから逃げてるだけだった。

私はまだその暖かさも何も知らない。
だからあなたが教えてよ。


















「ねぇ実菜穂。俺お前が泣いて理由知ってる気が する。」
ポツリと彼が言った言葉。
私はそれが気になったから黙ってただ聞いてた。
「俺実菜穂を最初に見た時すごく不安になった。」
なんだか危うい子だな…って。
そう彼は言う。
「危うい子…?」
「うん。そう。」
真面目な表情で彼はさらに続ける。
「なんか一匹狼で気を目一杯張り巡らせて、人が自分に関わってこない様にして
た。最初初めて実菜穂を見た時そう感じた。」
「…うん。」
「そんで偶然実菜穂と同じ委員会になって、今度はすごく脆い子だな…って印象
が変わった。」
「なんで?」
「なんかすぐに実菜穂泣きそうな顔するんだよ。」
気付かなかった。
自分では平然とした顔をしていたつもりだった。
「それで俺実菜穂事もっと知りたいって思った。」
顔をあげる。
すると陽の笑った顔ぶつかる。
気恥ずかしくなって顔を下に向けた。





「なんで実菜穂がここに居る。ってわかったと思う?」
急に陽は私に一つの問題を出した。
「誰かに聞いたから…?」
それしか考えつかなかった。
「ぶっぶー。正解は俺が実菜穂の事つけてたから。」
「えっ…?」
驚いて陽の顔をじっと見つめる。
様は悪びれた顔をせずに平然と続けた。
「…そんな顔すんなよ。仕方ねーじゃん。俺実菜穂の事好きになってたんだも
ん。」
「でも…。」
「されで屋上で初めて実菜穂と話して、屋上を共有していいって許可をもらって。
俺すごく嬉しかった。実菜穂とは話せるし、それにこの間はすごく可愛い笑顔もみ
れた。」
照れもせずに陽は言う。
でも私にしてはソレはすごい告白であって…。



「まぁちょっとその話しは置いとくよ?んでね、実菜穂が泣いてたのは、それは…
寂しかったからだよ。」
「そうなの…?」
「うん。多分。」
考えて見たら確かに陽がいなくなってから急に寂しくなって泣いてしまったし…。
「実菜穂すごく寂びしがり屋だから、全然目が離せないんだ。」
私の目を見据えて言う。
目をそらそうとしてもそらせない。
「それにこの間の告白は流されちゃったし。本気だったのにかなりショックだった
し。」
あれ…本気だったんだ…。
今さらになって気付く。
それも陽に言われてから。



「ねぇ。それでお返事は?」
いきなり話を戻されて思いっきり慌ててしまう。
「俺が思うにもう実菜穂俺の事好きでしょう?」
ニッコリと意地悪な微笑みを浮かべて陽は言う。
「…っ!!」
その微笑みを見てあっという間に顔が熱くなっていく。
「実菜穂、顔真っ赤。」
笑って言う陽。

「俺の事…好き?」

確かにもう私は陽の事を好きだった。
でも何だか恥ずかしくて、何も言えなくなってしまう。
だから、陽の手をとってギュッと握った。
これを告白の返事代わりにして。
「まぁ…今日はこれでいいよ。」
なんだか腑に落ちないと言いたいかの様な陽。
「…ごめんね?えと…陽…。」
すると陽は吃驚して、それでいて嬉しそうな表情になる。
「俺、実菜穂に陽って言われたの初めて!!」
そう言って抱き締めて来た。






















まだ私は何も知らない。
この世界。
様々な気持ち達。
でも私はもう逃げない。

ずっと陽と歩いていく。