『カチャ…カチャカチャ…』
静かに箸が弁当箱に当たる音が響く。
冷めたおかず。
冷めた御飯。
…まるで私みたい。
「…ッハ!」
そんな馬鹿な考えが浮かんだ瞬間私は自分を見失う。
その瞬間がくれば私が奇麗になった様な気がする…、と言う錯覚は終了。
所詮私は協調性のない人間とも言えないような代物。
人間だけど人間と言えるほど心がナイ。
パクパクと機械的に食べ物を運んでいく。
たった一人で特別な場所での食事。
とても幸せな時間。
『キーンコーンカーン…』
一度目は幸せが訪れる合図。
二度目は地獄が始まる合図。
放課後。やっと一日が終わりかける。
だけど別に家に帰る事は嬉しくもなんともない。
ただ事務的に帰るだけ。
「ただいま。」
家に響く私の声。
返答は帰って来ない。
当たり前だけど寂しい。
つらい。
胸が張り裂けそうになる。
最近そのような感覚に陥るようになってしまった。
『泣けば良いじゃない。』
私の中の私が私に語りかける。
「出来ないよ。」
私は答える。
『何で?』
私は苦笑しながら言う。
「もう泣き方を忘れてしまったもの。」
そしてまたいつもの日常。
朝。
家の中には誰も居ない。
わかってる。
母はニューヨーク。
父はロンドン。
居るはずがないじゃない。
「1989年には子供の権利条約が作られ…」
つまらない公民。
もう先生の名前さえ忘れてしまった。
あぁ…早く終わらないかな?
と欠伸をする。
「これは今度の中間に出すからな。よく覚えておくように。」
そしてやっと授業が終わる。
そしてまた私はあの空間へと向かっていく。