I  don't  know.



私はこの世界が大嫌い。
この何もかもが汚れた世界。
皆が大勢で集い、笑っては囁き合う。


…汚らわしい。


だけどそんな事を考える私が一番汚らわしい。
言われなくたってわかってる。
だから誰も私に近寄らないで。

















いつもとなんら変わりない日常が過ぎていく。
毎日変わっているのは空の色、雲の形だけ。
つまらない。
何もかもがつまらない。

「ここを公式の4にあてはめると…」

本当に代わり映えの無い数学の授業。
やせ細ったような教師が淡々と授業を進めていく。
一番窓際の席の私はふとぐるりと周りを見渡す。
寝ている生徒が三分の二…って所かな。
そしてその内の三分の一は勉強しているか…又はクスクスと忍び笑いをし
ているか。
…このクラスにはこんな奴ばかり。
本当誰とも一緒に行動する気は失せるわ。
まぁ…私も変わらない様なモノかも知れないけど。


ボーッとしていた私に気付いたのかやせ細った教師は私を指名した。
「加里屋(かりや)、4(X+6)(X-6)はどの様にな」
「16X二乗-144。」
「…正解。出来るのだから授業はキチンと聞くように。」
さしていつもと変わらないので感嘆したりする生徒はいない。
そして案の定教師は顔を歪ませた。
まぁ当然であろう。
だって教師が文章を言い終える前に答えたのだから。

そしてその後には決まって他の出来なさそうな子を指名する。
「堀田(ほった)。問い四の答えを全て答えよ。」
「はぁ!?マジかよ…。」
そしてその子が答えられなかったら、
「こんな問題も答えられないのか?そんなんだから…」
と、ねちねちねちねち説教を言う。
きっとこんな人に限って家では奥さんに尻にしかれているんでしょう
ね。

そしてそろそろ
『キーンコーンカーン…』
ほらチャイムが鳴った。
こうしてやっと午前の授業は終わる。
やっとつまらない一日の半分が終わった…。と、ふっと力を抜く。



そして私がお弁当を持って行く場所はただ一つ。
屋上。


『カンカンカン…』
そう音が鳴る。
このままでバレてしまうので静かに物音を立てないように…そっと。
そして二ヶ月前に鍵を壊した扉をそっと開ける。
その瞬間に吹き込む風。
その瞬間に広がる風景。
その全てを一瞬だけでも私が手に入れる事が出来る。
その時だけが私の至福の時。




この瞬間だけ私が奇麗な心を持った人間だって思えるの…。