Are you doing?



前途多難




「ねぇ気になってたんだけどさぁ…?」
テレビを見ながら小夜が訪ねかけて来た。
「あんらよ?(なんだよ)」
ポッキーを口に入れながら俺はジャンプを見ていた。
今月号の『ワンピース』面白いなぁ…。


「あんたの名前って何?あと寝言で言ってた『沙綾』って誰よ?」


「ぶほっ!!」
俺は食べていたポッキーをジャンプの上に吹き出した。
あぁ…。折角さっき買って来たのに…。
「汚いわね〜。そんなだから女に好かれないのよ。」
あぅ…。
痛い所を突かれてしまい俺はぐぅの音も出ない。
「んでさっきの質問に答えなさいよ?私は前に安藤小夜って言ってあるでしょ!?」
「うるせーなー。どうでもいいじゃんそんな事。」
「どうでもよくない。呼び方に困るんだアホ。」

「阿東克哉(あとうかつや)だよ!!」

もうやけっぱちになりながら自分の名前を大声で叫んだ。
「そんなに大声で言わなくても分かるわよ。あんたTPOの意味分かる?」
TPOの意味ぐらい分かるってんだ。
これでも俺は学年10以内に入ってんだぞ?
だがそれをこいつに伝えた所、


「やっぱあんたって馬鹿ね。私は常にトップだったわよ。」


俺は遠くでゴングが鳴ったのを聞いた気がした。
こんな奴に負けてるなんて…。
「克哉一生の汚点…。」
小夜の目をちらっと見ながら言ってやった。

「本当女々しいわね克哉。そんなだから沙綾って子に愛想つかされるのよ。」

その言葉に俺は目を見開いた。
な…何故その事を!?
「何でお前そんな事知ってんだよ?って顔してるわね。」
こくこくと俺は首を縦に振る。
なんで知ってんだよ!?

「昨日あんた学校の廊下で普通にフラレてたじゃない?」

クスクスクスと笑う女。
…殺意をもってしまっても俺にはどうにも出来ないなんて…。


「神様の意地悪ぅぅぅぅ!!」


どんどんと床を叩く。
う、うぅ…。
俺は沙綾の事まだ好きだったのに…。
「お前なんかにこの気持ちが分かるなんて俺思ってないもん!!」
ふふん。
どうせ小夜なんか彼氏も出来なかったに違いない。
その時の俺は勝手にそんな確信を持っていた。

あぁ…なんて俺は馬鹿者なんだろう。



「分からないわよそんなもん。私ずっと彼氏と続いてたもん。」





神様仏様。
俺の幸せなんてどうでもいいのですか?
なんであんな女が彼氏と続いて、
俺は…俺はぁ!!!!




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