OS劇場 ─3─
「ショーン!」
オーランドは、声をかけるのと同時に、ショーンの背中へと飛びついた。
飛びつかれたショーンは、足を踏ん張ってつんのめるのを耐える。
「ショーン、今日もいい朝だね」
オーランドは、伸び上がって、背後から、頬へとキスをし、そのまま、うなじにもキスをする。
ショーンは、首を竦めて、背後を振り返った。
「オーリ、今日も朝からテンションが高いな」
オーランドが唇を寄せたうなじをさりげなく擦っている。
オーランドは、ショーンの腰に腕を回して、完全にホールドした。
ショーンは、ぎくりと体に力を入れる。
「ショーン、このまま誘拐してあげようか」
「…お前、なんのために、ここにいるの?」
必要以上に腰を密着させるオーランドに、ショーンは、逃げ腰になっている。
「うーん…ショーンと遊ぶため!」
ほんのわずかに考え込む素振りを見せたあと、オーランドは、ショーンの体を持ち上げた。
靴が地面から離れ、ショーンは慌ててオーランドの腕を掴む。オーランドの体が、不安定に揺れる。
完全にショーンの方がウエイトがあるのだ。オーランドが、いつ転ぶかなんて、ショーンは、一秒後だと思う。
「ちょっ!オーリ!危ない!!」
オーランドは、よろよろと、2、3歩歩き、力尽きたように、ショーンを地面へと戻した。
「あんた、重すぎ…」
ショーンの背中に顔を埋めて、はぁはぁと息を漏らす。
ショーンは、呆れて、がんばったオーランドの手を軽く叩いた。
「重くて当たり前だろ。俺が羽のように軽かったら、そのほうが、おかしい」
「…ショーン…冷静すぎ…」
オーランドの息は収まったが、まだ、腕はショーンの腰をホールドしたままだった。
「で、今日は何の用?」
ショーンは、オーランドの腕を許したまま、背中の重みに声をかける。
「撮影は?衣装の用意はいいのか?」
「うん。今日の撮りは、準備の関係で、昼まで延期になったんだ。だから、今は暇なわけ」
「暇…なら、こんなとこに来るなよ。休んでればいいだろ」
ショーンは、わざわざ自分をからかう為に足を運んだらしいオーランドに苦笑を漏らした。
「オーリ、お前、淋しいわけ?」
「淋しいって言ったら、ショーンが遊んでくれる?」
「衣装を着ながらで、いいなら」
オーランドは、ショーンが笑う振動を味わった。背中が、穏やかに揺れている。
「いかさま王も、一緒?」
「どうかな?ちょっと送れてしまったから、多分、俺ひとりじゃないかな?」
オーランドは、喜んでショーンについていった。
「いいところに!」
着替え用のトレーラーで、オーランドは両手を広げて待ち受けられてしまった。
ショーンの着替えをいろいろと邪魔して楽しもうと思っていた計画など、恐いほどの笑顔を浮かべたスタッフに一瞬で握りつぶされる。
スタッフはオーランドを鏡の前へと座らせ、予定の変更を告げると、さっさとエフルの耳を接着し始める。
おまけに、いかさま王は、しっかりとトレーラーのなかに居座っており、ショーンへと台本の読み合わせをしようと声をかける。
「ねぇ、ショーン」
自分こそを構えと、ショーンにアピールを行うため、鏡の中のショーンへと顔を向けようとしたら、文字通り耳を引っ張られ、オーランドは前へと向きなおされた。
「ねぇ、ショーン、ショーン、ショーン!」
鏡に映る自分に向かってまっすぐ、ショーンを呼ぶオーランドに、ショーンが笑いがら、返事をする。
そういう、彼も、メイクをするスタッフに顔を引き戻されており、遊びは延期するしかない状態だった。
END