OS劇場 ─2─

 

「ショーン、こっち、こっち」

オーランドが急かすような声でショーンを呼んだ。

テラスの方角だ。

しかし、二人は寒い風がふく外から帰ってきたばかりで、ショーンは、オーランドがなぜ呼ぶのかわからない。

「ショーン?」

姿を現さないショーンにオーランドが焦れた声をもう一度上げる。

ショーンは、仕方なく声の方へ進んだ。

オーランドは、寒いテラスではなく、日差しの差し込む部屋の中にいた。

それは、いい。

しかし、大きな窓の側に、タオルケットをひき、クッションを敷き詰めている。

「なにをする気だ?」

「ショーンに、して欲しいことがあってさ」

オーランドは、嬉しそうに笑うと、ショーンに耳掻きを差し出した。

「やれってことか?」

「そうそう」

やわらかそうなクッションを叩き、ここに座れと請求する。

ショーンは、呆れながらも指定された場所へと腰をおろした。

ガラス越しの太陽は、ほっとするような暖かさを部屋に与えている。

「メイクをしてもらってるときにでも、頼めばいいのに」

オーランドは、文句などまるで聞こえていないかのように、ショーンのひざへと頭を乗せた。

ショーンが頭の重さに戸惑いを感じているのに、目を閉じて、すっかりしてもらうのを待っている。

ショーンは、オーランドの形のいい耳を引っ張ってやろうかと思った。

しかし、安心しきってひざで目をつぶる顔に、ため息をついてあきらめる。

確かに、このコミュニケーションには、ずいぶん味わっていない心地よさがある。

「坊や、痛かったらいうんだぞ」

ショーンは、オーランドが頷くのを待って、慎重に耳の中を覗き込んだ。

しかし、二人が穏やかな気分だったのは、ここまでだ。

「痛い!」

「痛い!ショーン!!」

「ちょっと、待て。ここをやったら」

「もういい!ごめん。もういいから!」

ショーンのひざから逃げ出そうともがく、オーランドを、ショーンは、押さえつけるようにして、耳掻きを続行していた。

もちろん、耳も赤くなる程引っ張っている。

「痛い!痛い!痛い!」

オーランドは、耳の中はもちろん、ショーンの引っ張る耳も痛かった。

「ちょっと我慢しろ、オーリ」

「ショーン・・・」

オーランドは涙目になっている。

せめてショーンの太ももで涙を拭こうと顔をよじっても、ショーンが強引に頭の位置を戻す。

相変わらず、日差しはあたたかく、ショーンのひざだっていい感触だった。

しかし、オーランドの口からでるのは、悲鳴だけだった。

                                                 END

 

 

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