OS劇場 ─1─
「ショーン!」
ショーンは、撮影現場の片隅で、オーランドに背中へと飛びつかれて前へとつんのめりかけた。
「・・・危ないだろうが」
しっかりと抱きついたオーランドは、レゴラス格好のまま、背中で楽しそうに笑っている。
「なんで、こんな隅っこで食ってんの?」
色つきのコンタクトレンズが、肩越しにショーンを覗き込んで、ボロミアの手の中にあるチョコバーをくすくす笑う。
「スタッフが、ダイエット中だから、目の前で食べるなと・・・」
「ふーん。そうか。たしかに、あんたは、甘いものをよく食べてるしね」
レゴラスの鬘が、ショーンの首筋を撫でていき、ショーンは、くすぐったくて、体を振ってオーランドを背中から下ろそうとした。
「無理無理。そう簡単におちないもんね」
オーランドは、余計に力を込めてショーンのしがみつく。
「オーリ・・・なにが楽しくてこんなこと」
「ほら、あきらめないで、チョコばっか食ってると、脂肪増えちゃって、動けなくなるよ」
すぐに、抵抗をあきらめるショーンを、反対にオーランドが振り回す。
「こら、やめろって。いいんだよ。俺は体重が落ちないように、一生懸命食ってんの。もう、やめろよ。やめろ。こら、目が回るだろ」
ショーンは、肩越しに、レゴラスの髪をつかんでやめさせようとした。
視界に、引きつった顔のヘア担当が映って、慌てて手を引っ込める。
オーランドは、ますます楽しそうに笑った。
ショーンは、もう、どうでもいい気分で、背中の早い鼓動を感じている。
ひょいと、オーランドが、ショーンの前に回った。
食べかけのショーンのチョコバーを口でくわえて、もぐもぐと、咀嚼する。
ショーンは、呆れて、オーランドを見た。
ずっとショーンが握っていたものだから、溶けてきていたチョコレートは、オーランドの口の周りを汚している。
「ショーン、ご馳走様」
チョコレートをつけた、金の髪の王子が、にこりと笑う。
ショーンも、もう笑うしかなく、口元を引き上げようとした。
すると、オーランドは、いきなりショーンの手元に顔を伏せる。
ショーンの長くてまっすぐな指が、オーランドの口の中へと飲み込まれる。
ショーンの口元は、急激に引きあがった。いや、引きつった。
オーランドは素早くショーンの指のチョコを舐めとる。
「うん。疲れたときは、甘いものに限るね。元気になる」
オーランドは、一人で頷くと、跳ねるように駆けて、ショーンの側から離れた。
「ショーン。すっごくおいしかった。サンキュー!」
ダイエット中のスタッフから、「こん畜生!」という声が、その背中に投げつけられた。
END
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