道の途中 7

 

しばらくの間、オーランドは、壊れたおもちゃのように笑いつづけていたのだが、撮影の再開時間が迫り、ヴィゴに促されて草の上から腰を上げた。

ヴィゴは、オーランドから取り上げた絵本をトレーラーの中へしまいに行き、なんと、鍵の掛かる自分のロッカーの中へ入れた。

そして、鏡の前に置かれた本をオーランドに押し付けた。

オーランドは、小さな子供じゃあるまいし、アリスの本なんていらなかった。

押し戻そうとしても、ヴィゴは全く力を緩めなかった。

「お前も、ショーンにサインしてもらったら?」

オーランドは、上から覗き込むようにするヴィゴを睨んだ。

「なんなら、俺から頼んでやろうか?」

ヴィゴは、トレーラーの中にオーランドを置き去りにするとさっさと撮影現場に向かった。

唇を噛み締めたオーランドは、思い切り、ヴィゴのロッカーを蹴飛ばした。

 

ショーンは、オーランドの隣で、憮然とした顔をして助手席に座っていた。

撮影は9時に終了し、着替えながら、飲みに行こうかと話し合ったヴィゴに、ショーンが付いていこうとすると、オーランドが恐ろしい剣幕で、割り込んだ。

オーランドは、ショーンに、さよならや、また明日を言う暇もあたえず、引き摺るようにして、車へと押し込むと、無言で車のキィを回した。

その時から、ショーンもしゃべったりしなかったが、オーランドは、ずっと無言だった。

オーランドの運転は荒かった。

怒っているのだとはっきりとわかった。

ショーンは、思い当たることについて考えようとしたが、すぐ諦めてしまった。

面倒だった。

今日の撮影もハードだったし、なんと言っても暑かった。

身体には昨日したセックスの疲労が残っていて、誰にも気付かれないように振舞うのは、かなり大変なことだった。

だから、オーランドの機嫌はどうあれ、今朝した約束を守り、オーランドが家まで送ってくれたのは、実のところ嬉しかった。

昼間、ヴィゴにからかわれ、機嫌を損ねて飛び出していき、夜の撮影時には、全く側に近付かなかったオーランドに、ショーンは、約束の反故を確信していた。

 

ショーンは、ぼんやりと窓の外を見た。

ショーンは、車のクーラーの利きが良くて、嬉しかった。

オーランドの車は、クッションも柔らかく、くたびれた身体には、ちょうど良かった。

オーランドの運転は、朝より明らかに荒かったが、心配になって運転を変わりたくなるほどではなかった。

「オーリ、今日も俺の家に来る気か?」

どうするつもりなのか、ふいに聞きたくなって、ショーンは、オーランドを振り返った。

オーランドは、無言で頷いた。

夜の闇に浮かぶオーランドの顔は、かなり強張っていた。

それは、わかっていたが、ショーンは、深く考えなかった。

全くもてなす気にはなれなかったが、ショーンは、そうかと返事をした。

何を怒っているのかは、面倒くさくて考える気にもなれなかったが、多少ベッドが狭くなることくらいは、ショーンにとって、我慢の限度の中にあった。

オーランドと一緒にいるのは、ショーンにとって悪い気分ではなかった。

「明日も、早いけど、いいのか?」

頷くだけで、やはり、オーランドは、答えなかった。

ショーンは、普段よりもずっと疲れた身体をクッションに預けながら、ぼんやりと窓の外を流れていく風景を見つづけた。

 

オーランドは、ショーンの家に辿り付くと、彼がドアを開けるのを待ち、先に中に入ると、真っ暗な部屋に勝手に電気をつけて周った。

ショーンは、呆れた顔をしたが、別段文句も言わなかった。

ショーンは、オーランドをもてなすわけでもなく、リビングの窓をあけると、寝室のクーラーを付けるために、奥に進んだ。

無防備な背中だった。

両肩は、疲れているのか、すこし肩が落ちていた。

オーランドは、ショーンの背後にたって、寝室に向かう彼の後を追った。

 

寝室に向かう、ショーンの頭の中にあったのは、早くシャワーを浴びて、一杯飲むことだけだった。

油断していたとか、そういった問題ではなかった。

多分、多くの人間が、ショーンと同じ反応しかできなかっただろう。

そんなことをされるなんて、わずかにも頭になかった。

 

オーランドは、ショーンが寝室のドアを開ける為、無防備な背中をオーランドに向けたところを狙い、そこに一撃を食らわせた。

背中を思いっきり蹴り飛ばした。

ショーンは、声を上げる暇もなく、ベッドまで飛んでいった。

ショーンは受身を取ることもできず、頭からベッドに飛び込んだ。

オーランドは、驚いた顔のまま、慌てて振り返ったショーンの体の上に、馬乗りに伸し掛かった。

半分ベッドからずり落ちているショーンの胸の上に、どすんと乗った。

 

オーランドは、信じられないものでも見るように、自分を見上げるショーンが逃げられないよう、思い切り体重をかけた。

ショーンは、驚いた顔をして、小さくうめいたが、抵抗らしい抵抗はできなかった。

 

「ショーン、あんたってさぁ…」

オーランドは、ショーンに文句を言うため、思い出してしまった事実に、また、腹が立った。

自分の尻の下で、何度も瞬きする人の良さそうな顔が、とんでもない性悪に見えた。

「なんで、ヴィゴにキスさせるのさ!おかしいだろ。どうして、なんの抵抗もしないのさ!」

トレーラーで、絵本のすり替えに失敗したオーランドに、撮影再開後、ヴィゴは明らかな嫌がらせを仕掛けた。

彼は、オーランドがショーンに話し掛ける隙さえ与えなかったのだ。

夜間の撮影は、そんなに大変なシーンでは、なかった。

ただ、森の中を歩くだけのシーンだ。

サイズの違うキャラとして撮るために、まずは、ホビット達が、カメラに収まっていた。

ライトに群がる虫除けのために、回されていた大型の扇風機のまえに、ショーンは立っていて、その傍らにぴったりとヴィゴが張り付いていた。

ヴィゴは、ショーンにずっと話し掛けており、同じく後からカメラに収まるはずのオーランドに、話し掛ける隙を与えなかった。

「ショーン、あの角度で写ると、木の影が顔にあたるのが、月の位置を考えるとおかしくないか?」

ショーンは、歩くホビットと、モニターを見比べ、ヴィゴの意見に頷いた。

ヴィゴは、さらに、ショーンにモニターを見るよう促した。

二人の話す内容というのか、夜間撮影におけるライトを意識した演技方法だったり、立ち位置のテクニックだったりして、至極真っ当なため、オーランドは、邪魔をすることも出来なかった。

二人は、顔を寄せ合って、演技中の共演者をモニターで確認して、自分たちの入り込む場所について検討していた。

ショーンの顔は、とても真面目だった。

ヴィゴだって、オーランドに当てつけているとは感じさせなかった。

もともと、仕事熱心なヴィゴとショーンなだけに、ずっと二人が一緒にいて、額をくっつけるように話し合っていることに対して、誰もおかしいなどと感じはしなかった。

ただ、オーランドだけが、ことごとくヴィゴによってショーンの視界に入ることを邪魔され、自分が嫌がらせを受けているのだと自覚していた。

ヴィゴとショーンは、モニターを覗きながら、触れ合うほど近くで、くすくすと笑っていた。

機材がひしめくテントのスペース上、オーランドがモニターに近付くことはできなかった。

2人が何を笑っているのか、オーランドにはわからなかった。

多分、たわいもないことだ。

ヴィゴは、扇風機の風に煽られるショーンの肩に触れたり、髪に触れたりした。

ボロミアのマントが煽られるのを、ショーンは、両手で一まとめにしていて、うっとおしく顔に当たる髪をヴィゴが払うのに、なんの抵抗もみせなかった。

よく、考えれば、いつものことだ。一旦仲良くなれば、ヴィゴも、人との距離の取り方が近い。

オーランドの鬘についたゴミを取ってくれることもあるし、オーランドだって、ヴィゴの髭に触ることだってある。

しかし、オーランドは、あまりにヴィゴが、ショーンに近付くので、ヴィゴがショーンを取ろうとしているのではないかとまで思った。

そんな時、モニターを見ていたヴィゴが何かを言い、笑ったショーンの唇に、ほんのちょっと触れるキスをした。

その場面をオーランドは、見逃さなかった。

ずっとショーンばかり目で追っていたのだ。

オーランドは、目の前が白くなるほど頭にきた。

その時から、ずっと、それ以外のことなんて考えられずにいた。

 

「ショーン、なんでこんな目にあうんだ?って顔してるね」

オーランドは、ショーンを見下ろし、金髪を指で掴んだ。

ショーンは、顔を顰めた。

「目を反らさないで、こっちを見て。ショーン。」

一体何が起こっているんだとでも、いうように、視線をさ迷わせたショーンの髪を強く引き、オーランドはショーンの視線を自分に向けさせた。

ショーンの目は、オーランドの顔の上に留まった。

「何をそんなに怒ってるんだ?」

ショーンは、顔を顰めたまま、オーランドを見上げた。

「さっき、言ったろ。なんでヴィゴにキスさせたのさ」

部屋は開いたままのドアのせいで、隣の部屋の光をわずかに入り込ませていた。

オーランドは、苛立ちのままに、ショーンをキツイ口調で責めた。

ショーンは、眉の間に皺を寄せ、明らかに不機嫌になった顔をした。

「どうして、キスしちゃいけないんだ。あんなの、お前だってしょっちゅうしてるじゃないか。おかしなことを言わないでくれ」

ショーンは、オーランドを払い除けようとした。

オーランドは、挟み込む太腿の力を強くして、ショーンに抵抗させなかった。

ショーンは、腕を使って、オーランドを押しやろうとし、途中で止めて、自分の額を拭った。

暗い部屋のなかでも、緑だとわかる目がオーランドを見上げた。

「クーラーを付けよう。この部屋とても暑い」

この場に及んでも、冷静なショーンに、オーランドは、心底頭に来た。

「ショーンが何を考えてるのか、全くわからない!」

オーランドは、ショーンの上に覆い被さった。

頬に噛み付き、鼻と、唇に噛み付いた。

汗をかいているショーンは、すこし、しょっぱかった。

ショーンは、顔を振って逃げようとしたが、オーランドは頭を抱え込み、逃がしはしなかった。

ショーンの手が、オーランドに爪を立てた。

背中を強く叩かれた。

「痛い…オーリ、もう、いい加減にしろ」

甘噛みというレベルを超えたオーランドの攻撃に、ショーンは唸った。

声に怒りがあった。

ショーンは、オーランドのTシャツを掴んで後ろに強く引いた。

首が絞まって、オーランドは一旦顔を上げた。

ショーンの顔は、オーランドの唾液に濡れていた。

目には剣呑な光があった。

「何だって言うんだ」

「どうして、そんなこと言うんだよ!ショーンには、俺の気持ちがわからないってわけ?」

オーランドは、負けじとショーンを睨みつけた。

「どうして、ヴィゴになんでも、許すの!どうして、そんなに、いい加減なの!」

ショーンは、唾液で濡れた顔を拭うと、緑の目に疲れたような色を浮かべた。

「なぁ…」

ショーンは、言おうかどうしようかという、ためらいを見せた。

オーランドは、一言だってショーンの弁明を聞き逃すまいと、顎をしゃくるようにして続きを促した。

ショーンは、まだ躊躇ったが、唇を舐めた後、目を反らしたままぼそりと言った。

「オーリ、俺、嫉妬深い奴ってのは、苦手なんだ」

ショーンの言い分に、オーランドは、一瞬茫然とした。

言い訳でも、謝罪でもなく、ショーンは、オーランドを突き放した。

全く信じられなかった。

気がつきたら、胸倉を掴んでいた。

ショーンに、顔を寄せ、低い声で恫喝した。

「謝らなかったら、酷いことをするよ」

ショーンは、オーランドに掴み上げられ、薄く口を開いてため息をついた。

「ショーン!」

オーランドは、頭に来て、ショーンを掴み上げたまま、何度か揺さぶった。

ショーンは、目を閉じてしまって、揺さぶられるままになった。

頭を、オーランドが持ち上げているせいで、金髪がシーツをさらさらと流れた。

「なんでさ!なんで、ヴィゴとばっかり一緒にいるの!」

ショーンは、答えない。

「夜の撮影の時、ヴィゴにキスされてたよね。昼間だってそうだ。どうして、そういうことを許すんだ!」

自分で出す声の大きさに、オーランドは興奮を増していった。

「あんた、俺と付き合うことにしたってこと、ちゃんとわかってる?あんたがしてたことは、立派な浮気だ。それも、俺の目の前で、いちゃいちゃしやがって!」

オーランドは、せめてショーンの目を開きたくて、締め上げている腕の力を強くした。

「わかってる?俺が怒って事、ちゃんと理解してる?」

オーランドは、ショーンに乗り上げたまま、ショーンのことを更に高く掴み上げた。

ショーンは首を後ろに反り返し、吊り上げられるままに、目を閉じていた。

謝罪は勿論のこと、弁明も、反抗もしなかった。

おかしな言い方だが、こういう修羅場になれているような無抵抗ぶりだった。

オーランドは、ショーンに怒声を浴びせつづけた。

「ショーン!聞いてる?俺の声が聞こえてる?」

怒鳴り声を上げても揺さぶっても、ショーンは、耳を塞ぐことさえしなかった。

ただ、無抵抗だった。

この時間が終わるのを待っていた。

「ショーン!!!」

オーランドが、ショーンを殴らなかったのは、相手が俳優だからだった。

もし、そうでなければ、きっと手だって出ていた。

言っても、言っても、ショーンはまるで反応がなく、怒りもしなければ、オーランドを宥めもしなかった。

空しい気分に捕らわれた。

しまいには、オーランドは、疲れてしまった。

「ショーンは、俺の話なんて聞く価値がないと思ってるんだ…」

ぶらんと吊り下がっているショーンから、手を離すと、ショーンはそのままベッドに崩れ落ちた。

頭がベッドの上から動かなくなると、ショーンは、小さくひとつため息をついた。

オーランドも、体中に怒りを溜め込んだまま、真っ暗な天上に向かって、盛大にため息をついた。

ショーンに馬乗りになったまま、大汗をかいて暴言を吐きつづけた自分が馬鹿馬鹿しくなって、ショーンから、下りると、ごろんとベッドに横になった。

隣には、ずり落ちそうな格好のままのショーンがいた。

オーランドは、まだ、目を閉じているショーンに、呆れ果て、もしかして、彼は眠っているのではないかとすら思った。

勿論、ショーンは眠ってなどいない。

ただ、オーランドを相手にしないだけだ。

あんなに、罵倒したのに、ショーンは、一言だって、反論しなかった。

それは、まるで、人形でも相手にしているようだった。それも、顔すらかかれていない、くたくたの布人形だ。

どんなに怒りをぶつけても、相手は、布人形なだけに、綿以外のものを腹にいれることができない。

感情など、どこにも、しまうところがないのだ。

だから、ショーンは、オーランドの怒りが理解できない。

ショーンは、しばらくそのままでいたが、ベッドから立ち上がると、部屋の電気をつけ、クーラーのスイッチを入れると、ドアを開けて出て行った。

足音は、バスルームに向かっていた。

言葉の通じない人間といるようで、オーランドは、悲しくなって、シーツに包まって泣いた。

声を殺して泣いているうちに、疲れていたオーランドは眠ってしまった。

 

ショーンが、オーランドの肩を揺さぶった。

オーランドは、くっついてしまった睫を無理やり引き剥がずようにして、目を開けた。

頭がぼんやりしていた。

ショーンは、すっかりさっぱりした格好になり、オーランドの顔を覗き込んでいた。

「オーリ、大丈夫か?顔を冷やした方がいいか?」

ショーンは、オーランドの頬を指で撫でて、こべりついた涙の後を拭っていった。

オーランドは、その感触にうっとりしたが、どうしてそうなったのかを思い出して、また、不機嫌になった。

オーランドの機嫌が悪くなったのを敏感に察知したショーンは、手を引っ込め、代わりにバスルームに行くことを勧めた。

オーランドは、ショーンと言い合うことの空しさを充分味わった後だっただけに、逆らわず、ベッドから下りて、バスルームに向かった。

オーランドが口も開かず、背を向けても、やはり、ショーンは、先ほどのことについて、何も言わなかった。

 

バスルームには、オーランドの着替えが用意してあった。

オーランドは、その用意周到さに、鼻の頭に皺を寄せた。

いかにも、修羅離れしていた。

気の立った動物でも相手にするように、ショーンは、こちらの手の届かないところに立ったまま、機嫌を取ろうとしていた。

オーランドは、手早くシャワーを浴びると、寝室に戻った。

ショーンに、今日は帰ると告げるべきかどうか、悩んだ。

ショーンが好きなのだ。出来れば、ずっと側にいたかった。

しかし、今の2人では、ろくなことになりそうになかった。

明日の仕事のことを考えると、帰るべきだとオーランドは思った。

このまま眠れない夜を過ごしては、オーランドばかりではなく、ショーンだって仕事に響く。

撮影は、ハードだったし、体力を殺ぎ落としていくような暑い日ばかり続いているのだ。

少しでも、休めるときに休んでおく必要がある。

オーランドは、ドアを開ける一瞬前まで、そう決意を固めていた。

シャワーで流した汗がまた、身体を覆おうとするのを感じながら、オーランドは、寝室まで戻った。

それでも、シャワーを浴びたことによって、すこし、頭が冷えたのをオーランドは感じていた。

 

オーランドがドアを開けると、ショーンは、オーランドがプレゼントした酒をグラスに注いで飲んでいた。

オーランドの分も、グラスが用意されていた。

ベッドの上のショーンは、柔らかい表情をしてオーランドを手招きした。

クーラーでひんやりとしたショーンの体が、オーランドを抱き込んだ。

「オーリ、今日は、泊っていくんだろ?」

ショーンは、オーランドを膝の間に抱き込むと、耳を噛むようにして、オーランドに囁きかけた。

「この酒、美味いよ。オーリは、俺の好みをちゃんとわかってくれてるんだな」

ショーンは、オーランドの濡れた髪にキスをした。

オーランドは、いい匂いのするショーンに、たまらなくなって抱き返していた。

「ショーン」

ショーンは、唇を開いて、問い掛けるようにオーランドを見た。

その顔は完全に誘っていた。

オーランドは、唇に吸い付いた。

口の中は、酒の辛い味がした。

「オーリも、飲む?」

ショーンは、氷が入ったグラスにオーランドの分を注いだ。

オーランドにグラスを持たせ、自分から、グラスを触れ合わせると、小さな音をカチリと立てた。

オーランドは、美味そうに飲むショーンにつられてグラスを傾けた。

よく冷えたウイスキーは美味かった。

それ以上に、オーランドに凭れかかるように、身体を寄せてくるショーンの身体はもっと気持ちよかった。

ショーンは、短パンを履いたオーランドの脚をゆっくりと摩った。

背中をオーランドの胸に預け、足の間に身体を入れたショーンは、オーランドの太腿を軽く押すようにしながら、何度も撫でた。

自分のグラスを傾けて、唇を湿らすと、そのまま、振り返って、オーランドの首に、唇を押し付けた。

オーランドは、自分のグラスをベッドボードにおき、ショーンの胸に腕を回して抱き締めた。

項に数えるのも嫌になるくらい繰り返し、キスをした。

きれいに筋肉のついた胸を揉みしだいた。

ショーンは、ますます、体をオーランドに押し付けた。

ショーンのグラスを取り上げ、オーランドは、それもベッドボードに置いた。

ショーンの尻が、オーランドに擦りつけられた。

オーランドは、せわしない息をして、ショーンから、着ているものを脱がしていった。

昨日、ショーンがしたように、露になっていく背中に次々とキスをした。

ショーンは、Tシャツを抜き取る一瞬だけオーランドに協力して、その他は、オーランドに向かって振り返ったまま、頬に、耳にとキスを繰り返した。

Tシャツが手から抜けると、その手も、オーランドに回して、オーランドの身体をせわしなく撫でた。

全て背中を向けたままの、後ろ手で行われているのが、エロティックだった。

次に、どこをさわられるのかわからないスリルがあった。

オーランドは、裸にしたショーンの胸を撫で回し、首に吸い付き、自分のペニスをショーンに擦りつけた。

ショーンは、自分から腰を浮かした。

オーランドは、膝立ちになろうとするショーンを支え、彼の履いていた短パンを膝までずり下ろした。

ショーンは、振り返って、オーランドのTシャツをめくり上げた。

オーランドに舌を絡めたまま、首の下まで、Tシャツを持ち上げた。

そのまま、ショーンは、オーランドを抱き締めるようにして、Tシャツを脱がしてしまった。

裸の胸が触れ合った。

Tシャツが首から抜けると、また、ショーンのキスがオーランドを迎えた。

オーランドは、乳首を擦りつけるようにして、ショーンの体と触れ合った。

もどかしくなって、オーランドが自分で自分の下着を下ろそうとすると、ショーンが、オーランドの身体を押し倒した。

長い指が、オーランドの身体を隈なく触っていく。

ショーンは、オーランドの短パンのなかに手を入れると、ゆるく握って、動かした。

シャンプーのいい匂いのするショーンの頭が、オーランドの首元にあった。

オーランドは、片手でその頭を抱き締めて、もう一方の手を伸ばすと、ショーンの剥き出しになったペニスを触った。

オーランドのものより、まだずっと柔らかかったが、それでも、ショーンも興奮していた。

オーランドは、夢中になって、手を動かした。

ショーンは、オーランドにしばらく抱き締められていたが、柔らかく首を振って、腕の拘束から逃れると、オーランドにぴったりと身体を重ね合わせた。

腕をついて、上半身を支え、オーランドのペニスに自分のものを擦りつけた。

オーランドは、ショーンを抱き締め、身体を入れ替えると、自分が、ショーンに覆い被さった。

「ショーン。ショーンって酷いな」

オーランドは、眉を寄せた情けない顔で、ショーンの潤んだ目を上から見下ろした。

ショーンの唇にキスをしながら、恨み言を言った。

「わかってやってるんだろ?こうすれば、俺の機嫌が良くなるって」

オーランドは、それでも、ショーンにキスすることをやめることは出来なかった。

ショーンは、オーランドの文句を、口で吸い込んでしまった。

舌を深くまで絡め、蕩けるようなキスでオーランドを虜にした。

ショーンの長い指が、オーランドの髪に差し入れられ、何度も優しく撫でていった。

足をオーランドの足に、絡めた。

身体が隙間なく、ぴったりとくっついた。

「オーリ、加減してくれるか?まだ、後ろを使うのは無理そうなんだ」

ショーンは、オーランドの頭を胸に抱え込み、耳を甘噛みしながら、囁いた。

抱く腕は、優しく、髪を撫でる指は、とても愛情深かった。

ショーンの胸は穏やかな鼓動を刻んでいて、髪を撫でられながら、頬を寄せているととても安心した。

オーランドは、すっかり蕩かされた表情で、ショーンの頬を撫で、金の髪にキスを繰り返しながら、頷いた。

「勿論、無理なんかさせない。ショーンのことを愛してる」

ショーンは、擽ったそうな表情で笑った。

オーランドは、ショーンの体のいたるところにキスをした。

丸め込まれようとしていることに、気付いていたが、抵抗は、できなかった。

 

 

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