道の途中 5

 

オーランドに息も付かせないようなキスを披露したショーンは、呆然とした顔をしたオーランドを残して、ベッドから立ち上がった。

「そういえば、食事はしてきたんだよな」

窓の側に立ったショーンは、分厚いカーテンを引きながら、オーランドを振り返った。

オーランドは答えられなかった。

太陽の光が差し込まなくなり、部屋は急に密閉性を強くした。

「オーリ?どうした?そんなにキスが良かったか?」

ショーンは、笑いながらオーランドの元に戻ってきた。

ショーンの重みでベッドのスプリングが沈み込む。

ショーンは、オーランドの髪を何度も撫でた。

「ショーンってさ、もっと…なんていうか、シャイなタイプだと思ってたよ」

オーランドは、隣に身体を横たえるショーンの腰に腕を回しながら、首筋に顔を埋めた。

「そりゃ、どっかの別人だな。どうする?付き合いを考え直すか?」

「それって、牽制?」

「違うよ。真剣に聞いてるんだ。カタログで見た商品と違ってて気に入らなかったら、返品するだろ?あれと同じ事だ」

「返品されちゃう気なの?」

「嫌だなんて思ってる奴と付き合うほどには、暇じゃないってだけだ」

オーランドは、ショーンの髪の中へ鼻を突っ込んで、首にキスを繰り返しながら、お付き合いの続行をお願いした。

ショーンは、「お買い上げどうも」とふざけた。

その合間に、何度も、何度も、唇を触れ合わせるキスをした。

ショーンが顔を離した。

「じゃぁ、もうちょっと真面目な話をしよう。本気で付き合う気があるなら、重要な取り決めをしないとな」

オーランドの手は、ショーンのTシャツの背中を撫ではじめていた。

このまま良い雰囲気でキスから、セックスへと進むものだとばかり思っていたオーランドは驚いた。

ショーンは、首に腕を回して、頬にキスをしたオーランドを止めさせようとはしなかったが、自分から応えるような真似はしなかった。

お話し合いをしないと、続きはだめだということだ。

オーランドは、仕方なしに、ショーンの目を見て、それで?と、促した。

「オーリ、セックスの経験がある?」

ショーンは、とんでもないことを聞いた。

「それは童貞かって聞いてんの?」

オーランドは、眉の間に皺を寄せた。

「そこまで間抜けな質問はしない。違うよ。同性とセックスした経験があるかって聞いてるんだ」

「はじめから、そう言ってよ…」

どうもプライドに爪を立てられた気がして、オーランドは、口を尖らしたまま「ない」と、答えた。

「じゃぁ、どこまで、どういう風にしたいって具体的なビジョンがある?」

「具体的なビジョン?」

ショーンが色気のない言葉を連発するので、オーランドの鼻の上の皺が増えた。

「ねぇ、ショーン。キスして、抱き合って、気持ちよくなってって、自然な流れじゃだめなのかな?」

「自然の流れにのって、出して終わりってのでいいんなら、俺は、それでもいいけどな」

「つまり?」

「オーリがどういうセックスを望んでるかってことだよ。女とするようなセックスを俺と望んでるのかってことだ。それを聞いておかないと、おちおち服さえ脱げないだろ?」

ショーンは、からかうような調子で、じっと目を見ながら話した。

「オーリはどういう風にしたい?」

「突っ込ませてくれるってこと?」

オーランドは、勢い込んだ。

驚いてショーンの目をのぞきこんだ。

ショーンは、大袈裟に仰け反って、ベッドの中を後ろへと移動した。

オーランドが狼に変身するんじゃないかと、笑っていた。

「そう言うと思った。最初から、そっちの立場に立つ気だろ?その上、オーリは、経験もなしだ。俺は、怪我を負うような真似はしたくない」

ショーンに覆い被さろうとしたオーランドは、緩やかに抱き締められ、言葉で制止を求められた。

「どのくらいお前に知識があるのかしらないけどな、俺は、こっちの立場は、経験したことがない。だから、オーリも、すこし、冷静になってくれ。お前だって、俺に入れさせろって言われたら、ちょっと、待ってて言うだろ?」

オーランドは、ショーンに脚を絡ませたまま、ぐっと唇を噛んだ。

ショーンは、勢いを殺そうと努力しているオーランドをくすくすと笑った。

「ねぇ、ショーン。今の話、すこし、気になる箇所があるんだけど…ショーンは、もしかして、俺のこと犯したいって思ってる?」

ショーンは、何度か、瞬きをした。

「オーリ?お前、俺にされてもいいって思ってるのか?」

ビックリしたような声だった。

「あんまり、思ってないけど、それがお付き合いの条件になるんなら、多少の譲歩は…」

ショーンは、何度もオーランドの頭を撫でた。

頬にキスをして、優しく笑った。

「そういう欲求はない。俺は、お前と抱き合うだけでも別に構わない」

オーランドの唇にチュッとキスをした。

「でも、それじゃ、お前は納得できないんだろ?とりあえず、この一週間で覚悟は決めた。あとは、お前が無理をしないと約束してくれるかどうかだ」

「無理…無理かなぁ?」

オーランドは、首を傾げた。

「出来なくはないさ。ただ、ちょっと面倒だと思う。いろいろ先にしておかないといけないことがあるし、準備もしなくちゃいけない」

「やたら、詳しいね…さっき、経験があるって言ってたよね。具体的にどんな経験をしてのさ」

問い詰めるオーランドに対して、ショーンは、別段気にした様子もなく、口を開いた。

「ある日、思いつめた顔をしたとても可愛い男の子が、お願いにきたのさ。その時はフリーだったし、まぁ、人生経験の一つだと」

「その日のうちに?ベッドに直行?…なんて、節操のない…」

オーランドは、悪びれないショーンに、唇を尖らした。

「でも、そんな経験がなきゃ、お前の告白だって受け入れられなかったと思うぞ?」

「そう?本当に、そう?なんか、ショーンに対する認識が変わりそうだよ」

「やっぱり返品するか?」

ショーンは、楽しげな目をして、オーランドの目をのぞいた。

「しないって、言ってるだろ!」

オーランドは、ショーンの薄い唇をきつめに噛んだ。革パンツの足で、ショーンの太腿を挟んだ。

そのまま、腰を擦り付けた。

ショーンは、すこし呆れた顔をした。

「若いってのは、こんな話にも興奮できるんだったかな?」

「違うだろ。恋人とベッドに一緒にいて、興奮しなかったら、失礼ってもんなの!」

ショーンは、宥めるようにオーランドの腰に手を回した。

ジーンズの尻を緩くもむ。

「わかった。わかったけど、オーリ、もうちょっと待ってくれないか?最終確認をしよう。オーリは、どういった行為を何処まで望む?」

「それは、今からって意味?」

ショーンは、オーランドとの身体の間に、片手を割り込ませ、キスしようとするオーランドを止めた。

「落ち着け。まず、話し合いに決着をつけよう」

「無理はしないって約束するけど、最後までさせて。一杯サービスして、絶対気持ちよくするから、お願い。ショーン、もう先に進ませてよ」

ショーンは、やれやれという顔で、オーランドを引き寄せ、頬にキスをした。

それから、抱き締める力を強くしたオーランドを引き剥がし、ベッドから身を起こした。

「ショーン?」

オーランドは、ベッドから下りるショーンに、縋りついた。

「なに?何か、気に障ることをした?」

「違う。オーリ、冷静に考えてくれ。お前だってわかってるだろ?お前の望みをかなえようと思ったら、このままセックスになだれ込むことは出来ない」

オーランドは、まじまじとショーンの顔をみつめた。

穴の開くほど見つめて、ショーンが何を言おうとしているのか、思い当たった。

「あ?…ああ、うん。そう…か。そうだね。俺は、待ってていいの?」

「待っててくれ」

目一杯、照れたオーランドとは対照的に、ショーンは、素っ気なくドアへと向かった。

だが、ドアの前で立ち止まって振り返った。

「そういや、最初の質問なんだがな、お前、昼飯は食ってきたか?まだなら、冷蔵庫にサンドイッチが作って入れてある」

オーランドは、絶句した。

ショーンは、ドアのところで振り返ったまま、返事を待っていた。

「…ねぇ、ショーン、俺たちこれから、セックスするんだよね?」

オーランドの声は弱弱しかった。

「だとしても、腹が減っていちゃ、お前がかわいそうだろ?」

「…ありがとう。大丈夫。食べてきたから」

ショーンは、ドアを開け、部屋を出て行った。オーランドは、力が抜けたように、ベッドに倒れこんだ。

 

「ショーン?」

戻ってきたショーンの服を脱がせて、全身をしっかりと目に焼き付けて、オーランドは、ショーンの胸へとキスの雨を降らせた。

ショーンは、自分だけが裸にされてしまったことに、多少照れているようだったが、オーランドのタンクトップの背中に手を滑り込ませた。

オーランドの下敷きになっている丸みのある胸が大きく息を吸い込んで、上下していた。

オーランドは、思っていた以上に興奮する自分を、落ち着けるため、何度か深呼吸する必要があった。

それを息を荒くしているんだと誤解したショーンは、声に出して笑った。

「違うって。そういう訳じゃないっての!」

「いいって。そんなに見栄を張らなくても、俺は…笑わないとは言わないけど、馬鹿にしたりはしないぞ?」

「笑うってのが、嫌なの!!」

オーランドは、くすくす笑い続けるショーンの唇に噛みついた。

ショーンは、噛み返すように大きく口を開け、そのままキスになってしまった。

オーランドは、ショーンの頭を抱きかかえて、シーツへと押し付けた。

息を吸う隙間もないほど、ぴったりと唇を重ねる。

オーランドは、ショーンのペニスに手を伸ばした。

ショーンは、足を開いて、オーランドがやりたいようにさせた。

ショーンのペニスは、まだ、硬くなっていなかった。

言葉にするよりは、ずっと緊張しているのかもしれない。

「オーリ?お前は脱がないのか?」

「もう少し、だって、脱いじゃったら歯止めが利かなくなりそうなんだもん」

ショーンは、オーランドの髪を撫で、耳の後ろにキスをした。

愛しげに何度も唇が吸い付く。

「なかなか、おりこうじゃないか」

「次回って、ことを考えると、ここは辛抱しておかないと」

ショーンは、笑った。腹の筋肉がさざなみのように揺れた。

「次回があるかな?」

「それは、俺が下手だったら、もうしないってこと?」

オーランドは、すこしだけ、興奮をみせてくれたペニスを擦る手を早くした。

「ちがうって。お前がこんななら、もうしたくないって思うかもしれないって、ことだよ」

オーランドは、緑の目をじっと見つめて、何度か目の脇にキスをした。

「何?なにか遠慮してる?言いたいことがあるなら、はっきり言ってくれた方が助かるんだけど」

「別に?ただ、お前が、どうして俺とセックスしたくなるのかなと、思ってるだけだ」

ショーンは、オーランドの手に任せたまま、ベッドで横たわっていた。

オーランドの背中をゆっくりと撫でていた。

「…理由…かぁ。好きってのでは、ダメ?」

「そうだよな。それしかないよな。それで納得するしかないよな」

ショーンは、独り言のように話し、自分で頷いてもう、話を止めてしまった。

変わりに、オーランドの首筋に顔を埋めて、唇で何度も耳から肩のラインにかけて愛撫を繰り返した。

オーランドのタンクトップをめくり上げ、胸に腹にとキスを繰り返した。

直接的にペニスを握っているオーランドより、よほど、巧みな煽り方だった。

長い指が、背骨を確かめるように、一本一本、なぞっていく。

オーランドは、耳を噛まれて、繰り返し名前を呼ばれると、堪らない気持ちになった。

「ショーン、酷い。ちょっと待ってよ。俺がする!」

オーランドは、くたりとショーンの体の上に倒れこみたくなる気持ちを奮い立たせて、ショーンの足元までずり下がった。ショーンが手を伸ばそうとするのを、睨みつけた。

「邪魔しないでよ。これから、俺が、気持ちよくしてあげるんだから」

オーランドは、ショーンがつべこべ言う前に、彼の足を大きく曲げて、その間に顔を埋めた。

口に含んだ途端、ペニスの質量が増す。

オーランドは、嬉しくなってちゅっと吸い上げた。

「…よく、する気になったな…」

ショーンは、手を付いて、上半身を起こし、ペニスを口に含んだオーランドの頭を撫でた。

何度も、優しく髪を梳いた。

「無理しなくていいぞ?」

「…無理じゃない」

オーランドは、ペニスを口に含んだまま、もごもごと返答した。

金色の毛の中に鼻を突っ込んで、しつこいほど舐め回した。

時々、頭を押さえつけるようにショーンの手が力を加えた。

オーランドは、その力に逆らわないで、ショーンの気分を盛り上げようとした。

ショーンは、オーランドの頬を撫でたり、背中を撫でたりして、オーランドに優しくした。

オーランドは、ショーンの腰を前にずらして、もっと奥まで、舌を伸ばした。

袋の温かさを鼻先に感じながら、その奥に届く限り舌を伸ばした。

「…もう?」

ショーンは、すこし、体を緊張させて、オーランドの髪を引っ張った。

「ダメ?」

オーランドは、下から、ショーンを見上げた。

「もう少し、待ってくれ。オーリもこっちに身体を預けて、もう少し、お前の身体に馴染ませてくれよ」

ショーンに、上から覆い被さるようにして抱き締め、耳元で語りかけられると、オーランドは、言うことを聞かないわけにはいかない気分になった。

身体を起こして、ショーンを抱き締めた。

ショーンの体は、張りのある筋肉に、うっすらと脂肪が乗っていた。

ものすごく、触り心地がいい。

「オーリも、そろそろ服を脱げよ。いいだろ?俺ばっかりじゃ、恥かしい」

ショーンは、とても上手にオーランドの洋服を脱がしていった。

足から皮のパンツを抜く時には、太腿と、脛に、何度もキスを繰り返し、撫でた。

「たまんないな…どうして、こんなに上手いかな?」

「場数が違うよ」

オーランドの下着のゴムを引っ張りながら、臍の周りを甘噛みした。

オーランドの腹は、その度、大きく引っ込んだ。

「気持ちいい?」

「俺ばっかり、気持ちよくても、困るんだけど?」

オーランドは、ヘアの中へ鼻を突っ込んで根元の部分だけを舐めるショーンに、目尻の下がった顔をした。

オーランドのペニスは、ショーンになにかをしてもらう必要がないほど、きちんと上を向いていた。

「ショーンこそ、抵抗はないの?嫌だったら、しなくていいよ。俺、全然、大丈夫だし」

「抵抗…かぁ。思ったよりなかったな」

ショーンは、口を大きく開けて、オーランドのペニスを含んでしまった。

生暖かい口内が、湿った感触で締め付け、オーランドは、思わず目を瞑った。

「大丈夫?気持ち悪くなったりしない?」

オーランドは、衝撃的な一瞬をやり過ごすと、慌てて、ショーンの背中を撫でた。

ショーンは、首を振り、そのまま、オーランドのペニスを銜えて顔を上下させた。

手を、オーランドの太腿に置き、そこも緩くもむように撫でた。

オーランドは、ショーンの背中に覆い被さるようにして、きれいな背中にキスを繰り返した。

それでも、ぜんぜん足りなくて、ショーンに、口から出してくれるようお願いすると、ショーンの身体に覆い被さった。

頭の位置を入れ替え、お互いにお互いのものを口に含んだ。

ショーンの指は、オーランドの腰骨を気持ちよく撫で、腹も背中も、ちょうどいい力の強さで、マッサージした。

オーランドには、そこまでの余裕がなかった。

直接的に、ショーンのものを口に含んで、懸命に顔を動かした。

ショーンのものは、口からはみ出てしまうくらい大きい。

ぎりぎり負けていないと思うが、ショーンだってそう思っているかもしれない。

オーランドは、ショーンを脅かさないように、そっと、後ろへ手を回した。

まず、尻の肉をつかんで、何度か揉んだ。

ショーンは、嫌がらなかった。

オーランドは、両手でゆっくりと開いた。

ショーンのお尻は思っていたよりも、柔らかく、気持ちが良かった。

「オーリ、ちょっと待て。そのままじゃ、ダメだ」

ショーンは、オーランドのペニスを口から出すと、伸び上がって、枕もとに並んだゴムと潤滑剤を取った。

オーランドの顔を立て、オーランドの用意したものを手にしていた。

枕もとには、ショーンが用意した分も置かれていた。

部屋に戻ったショーンは、オーランドにこれらのものを手渡し、オーランドも、笑いながら、自分の用意した物をショーンに見せた。

ショーンは、オーランドが用意した物を手渡してくれている。

「指にゴムを嵌めろ」

「してもいい?」

ショーンは、頷くと、コンドームの封まで切ってオーランドに手渡した。

オーランドは、くるくると指に嵌めると、もう一度、ショーンの脚の間に頭を突っ込んだ。

ショーンの足は、さっきより、余程力が入っていた。

「ショーン、ショーンは、じっとしててくれていいよ。無理にフェラしてくれなくていいから。それより、痛かったり、気持ち悪かったら、すぐ、言って」

オーランドの心配など、無視して、ショーンは、オーランドのペニスに吸い付いた。

「大丈夫?」

「気が紛れるだろ?」

オーランドは、ゆっくりとショーンの穴の周りを撫で、そこにゼリーを塗りこんだ。

輪を書くように何度も周りを辿り、ゆるゆると中心に埋めていく。

ショーンの舌は、動きを止まってしまった。オーランドの与える刺激に慣れようと懸命に努力していた。

「大丈夫?」

指一本を奥まで押し込み、オーランドは、そこで丸く動かした。

「平気…とは、言わないが、痛いわけじゃない」

「もう一本いれてもいい?」

尻の肉が固まって、オーランドの指をきつく絞り込んだ。

「待ってくれ。そんなに急がないでくれ」

「すっごく気持ちよさそうなお尻」

オーランドは、中心に寄った尻の山に何度もキスした。

ショーンに、フェラする気もなくなったようなので、身体を移動させて、ショーンの腰を自分の膝の上に乗せた。

ショーンは、うつ伏せで、オーランドの体を挟み込むように、大きく足を開けている。

「ここ、気持ちいいんだろうなぁ」

オーランドは、ゆっくりと指を回しながら、抜き差しを繰り返した。

ショーンは、目を閉じて、じっと刺激に耐えていた。

「どう?そろそろ二本目も入れていい?」

背中の強張りが溶けてきたので、オーランドは、指を抜き出し、もう一度ゼリーをつけて元に戻した。

抵抗感はあるが、指はずぶずぶと中に沈んだ。

「大丈夫かな?」

「どうぞ」

ショーンは、顔も上げずに返事をした。

「無理なら、まだしないよ?」

オーランドは、腰骨にキスをしながら、ゆっくりと指を動かし続けた。

「いつまで、そのおりこうさんでいてくれるんだ?」

「いつまでも。俺、ショーンの事、大事にしたいもん」

ショーンは、背中から、首筋まで赤くなった。やはり顔を上げず、「どうぞ」と小さく繰り返した。

オーランドは、出来るだけ指をくっつけ、そっと穴を押し広げた。

さすがに、二本目はきついのか、ショーンの背中が反り返った。

「大丈夫?」

「平気。すこし、気持ち悪いだけだ」

「どういう風に?」

「押し上げられる感じ。ちょっと吐き気がする」

「止めとく?」

「止めない」

ショーンがはっきりとそういうので、オーランドは、出来るだけ負担にならないよう浅く指を動かした。

「もっと入れていいぞ」

「でも、気持ち悪いんでしょ?」

「慣らさなきゃ、お前のが入らない。あんまり遠慮しなくていい」

浅く息を繰り返して、一生懸命、身体の力を抜こうとしているショーンの背中を撫でながら、オーランドは、奥へと指を進めていった。

かなり抵抗がある。

それでもショーンの言葉どおり、下手に遠慮するのを止めて、抜き差しを繰り返した。

指が抜けてくる時に捲れあがる粘膜がピンクで、ドキドキした。

ショーンがはぁはぁと繰り返す息の音に、気持ちが急いた。

オーランドは、ショーンの背中や、腹に掌を這いまわらせて、気を紛らわした。

ショーンの腹は、緊張したように強張って、速いテンポで引っ込んだり出たりしていた。

「ショーン、大丈夫?」

「オーリ、もうちょっと右?あ…そう、その辺り、下に向かって押してくれ」

オーランドは、指示とおりに指の腹で押した。

ショーンの体にものすごく力が入った。

「弱く!!」

ショーンが叫んだ。殆ど悲鳴だった。

オーランドは、慌てて力を抜いた。

宥めるように、言われた地点を優しく撫でた。

ショーンの息が、せわしなくなり、明らかに気持ちがいいのだとわかる声を鼻から漏らした。

「これで、大丈夫?気持ちいいの?」

「ああ、うん。気持ち良いよ」

ショーンの足には、力が入っていたが、それは、苦痛のためのものとは違った。

オーランドは、必ずそこを掠めるようにしながら、緩めるように押し広げ始めた。

「もう一本入れて、大丈夫になったら、入れていい?」

ショーンは、シーツに頭を擦り付けながら、頷いた。

オーランドの指が中を擦るたび、びくびくと背中をしならせた。

 

「じゃ、そろそろ」

ショーンの背中には汗が吹き出ていた。

時々、オーランドの腰を、強く挟み込んで、自分の腰を振った。

穴は、3本分の指を付け根まで飲み込んだ。

オーランドは、ショーンを膝から下ろして、自分のペニスにゴムをつけた。

膝も、ペニスも、ショーンのものと擦れあって、べとべとに濡れていた。

「力を抜いていてね」

オーランドは、ショーンの尻を持ち上げ、背中にキスをすると、ゆっくりと侵入した。

ショーンは、息を呑んで、シーツを強く掴んだ。

きつい締め付けがオーランドを襲い、それだけじゃなく、ショーンの足まで、オーランドを蹴った。

「きつ…い」

ショーンは、体を捩ってオーランドから逃げようとした。

オーランドは、宥めるように背中に何度もキスをして、腰骨を掴む力を更に強くした。

「ショーン、暴れないで。俺も、結構痛い」

オーランドは片目を瞑るようにして苦痛に耐えた。

「痛…い」

「ごめん。もうちょっと、待って。入れちゃうから、もう少し待って」

ショーンは、金の髪がばさばさと顔を打つほど、激しく頭を振って嫌がった。

オーランドの手を爪が引っかいた。

「ショーン、落ち着いて。思い出して。さっきまでは、気持ちよかったんだろ?」

「いまは、痛い…だけだ」

搾り出すような声で文句を言って、それだけでも苦しいのか、ショーンは、顎を突き出すようにして、何度も息継ぎを繰り返した。

かわいそうなほどだった。

背中が張り詰めている。

「想像して、ショーン。さっきは、気持ちよかったんだよね。もう少ししたら、きっと気持ちよくなれる」

オーランドは、何度もショーンの背中を撫でた。

ショーンは、大人しくなって、シーツを手の色が白くなるほどきつく握りこんだ。

「大丈夫。落ち着いて。無理に動いたりしないから。力を抜いて。そう、大丈夫。ショーンのことが大好きだから」

オーランドは、自分でも何をしているのか忘れそうなほど、ゆっくりとショーンの奥へと進んでいった。

ショーンと繋がっているんだという感動がなければ、止めてしまいたくなるほど、手間と労力がかかった。

やっとショーンのお尻に、自分のヘアが触って、オーランドは、額の汗を拭った。

「痛い…よね?」

ショーンの背中は、硬く強張っていた。筋肉が盛り上がって、力の入り具合を如実に伝えていた。

「…気持ち悪い」

ショーンは、シーツに縋りついていた。もう、身体を起こしているだけの気力もないようだ。頬がぺたりとシーツにくっついていた。

「指とは、大分違う?」

「もっとずっと大きい感じだ」

ショーンは、なんども息を吐き出した。

沢山の空気を体内に収めておけないとでもいうようだ。

オーランドは、じっとショーンが落ち着くのを待った。

ショーンは、いつまでも許可を与えなかった。

「ショーン?」

「…動くなら勝手に動いてくれ。俺は、これ以上、どうぞと快く言うだけの度胸はないよ」

オーランドは、伸び上がって、ショーンの頬に触れようとした。

その動きだけで、ショーンは、うめいた。

「やめようか?」

身を引きかけたオーランドの手を、ショーンが掴んだ。

「…畜生」

悔しそうにショーンは、吐き捨てた。

後ろ手に回すというそれだけの動きでも堪えるのか、喘ぐように息を吐き出した。

「オーリ、やれ。ここまで我慢して、やめるなんてそんな勿体無いことをするな」

やけくそのようなショーンの言葉に、オーランドは、本格的に、身体を離そうとした。ショーンは、オーランドの手を、ますます強く握った。

「やめたら、今度は、いつになるかわからないと思え。さぁ、俺を気持ちよくしろ。そうする約束だろ?さっさと努力するんだ」

オーランドは、額に皺を寄せて冷や汗をかいているショーンの表情を見ながら、ゆっくりと腰を動かした。

ずるずると引きずり出す感覚に、オーランドは、快感を覚えたが、ショーンは、苦しそうだった。

押し込んでも同じだ。

だが、ショーンの中は、ものすごく気持ちよくオーランドを締め上げた。

気を張っていないと、勝手に腰を打ち付けたくなる。

出来るだけ、指でいい反応を引きずり出した場所を意識しながらそろそろと動かした。

ショーンは、最初ほど、苦しそうな顔を見せなかったが、まだ、快感とは程遠いようだった。

「大丈夫?」

「…心配してる暇があったら、とっととイきやがれ」

とりつくしまもないとは、このことだ。

ショーンは、シーツだけが頼りだといわんばかりに、握り締め、オーランドには背中しか見せなかった。

首筋には、汗が滴っている。

かなり我慢しているのだろう。

オーランドは、出来る限りの努力をして、背中にキスの雨を降らし、身体を撫で、力なくなっているショーンのペニスを扱いた。

ショーンのペニスは、扱きつづけるとゆっくりとだが、回復した。

オーランドは、指で引き出したような快感を、内側から与えるなどという考えはさっさと放棄して、ショーンのペニスを擦り上げた。

なんとか、ショーンの息が、熱くなった。

オーランドは、自分本位にならないよう、忍耐を最大限に見せ、ショーンが射精できるようになるまで、無理な動きはしなかった。

ショーンが、オーランドの名前を甘い声で呼んだ。

オーランドは、背中から、深く覆い被さり、項にキスを何度もした。

「大丈夫?」

「大丈夫、オーリの好きにしていい」

ショーンは、首を捻って、オーランドの唇を求めた。

オーランドは、ショーンの中の気持ちよさに、身を任せて、ペニスで擦り上げる速度を上げた。

深くなり過ぎないように、中を擦る。

手の中のペニスも、同じ速度で擦りつづけた。

ショーンが、息を詰める。

オーランドは、締め付けてくるショーンに合わせて、自分も精液を注ぎ込んだ。

 

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