5手紙がほしいという話題の時の小話。

 

配役等の説明

特になし。

 

ショーンが、ポストから取り出した絵葉書は、エアメールだった。
アメリカからのものだったが、差出人の名前はない。
勿論、文面も真っ白だ。
宛名の文字は、ご丁寧にも、タイプで打ったシールが貼り付けてあった。
ショーンは、顔を顰めた。
ポストから、ダイニングの机までの間、いくつもの顔を思い浮かべた。
葉書の写真は、いかにも、ヴィゴ好みだった。
切手の貼り方は、几帳面で、オーランドかもしれなかった。
わざと文面を書かなかったのだとしたら、外見を裏切るそういうものぐさな男に、ショーンは、心当たりがあった。
ほかにも、仕事で、行っているかもしれない顔は、いくつも浮かんだ。
絵葉書を寄越すような気まぐれと縁がありそうな顔は、5本の指程度だろうか。
しかし、ダイニングの机にたどり着き、そこで、ショーンは、机に向かって葉書を投げた。
葉書は、山を作っているほかの書類の上に紛れ込んだ。
それで、探偵的ショーンの思考は打ち切りだ。
差出人のない手紙に、心を砕くようなセンシティブさと、ショーンは無縁だった。
現実的なショーンは、ほかにもポストに入っていた、新車のDM、不動産の広告、カードの支払い明細書。目を通さなければならない、数多くの郵便物を持って、リビングへと移動した。
ショーンは、手に持った郵便物に目を通しながら、ソファーに横になった。

手紙の差出人が、ショーンの親しい人間でないことだけは、判明した。
ショーンが、いつまでも、白紙の葉書にかかわってくれるようなタイプでないことなど、彼のことが好きになってしまえば、すぐ、理解できることだった。
そのことをショーンもわかっていた。
誰かの愛情に満ちた葉書は、ほんの一瞬、ショーンに多くの愛情を思い出させただけだった。

 

 

BACK                 NEXT