おみやげを、貰いました。
休暇をとって、どこかに旅行にいけば、必ず土産を買ってくるフランクが、仕事上がり、今回も照れくさそうにしながら、土産を机へと置いた。
「……悪いな」
礼を言う隊員たちの歯切れが悪いのは、今回フランクがフリーのジャーナリストである彼女に同行したのが、聞いたこともないような国であり、机に置かれたものが、植物を乾燥させて作ったと思しき容器に入っているせいだ。
しかも、そのへんな形の植物はみたこともない。
しかし、チーム50の隊長は、休暇明けにも関わらずしっかりと訓練についてきた隊員の厚意に対して、男気をみせた。
「中身は飲み物か?」
小枝で栓をされた容器から、ゲープはごくごくと中身を飲み干す。
デミアの顔が引き攣る。
「えっ、おい、ゲープ!?」
「さっぱりとした味だろ?」
にこにこと笑いながら、フランクはそういったが、ゲープの飲んだものの味は、酷く甘ったるかった。飲み干してしまった後で、甘みで粘つく舌に、チーム50の隊長は、かすかな後悔の念を感じる。
しかし、チーム50の命知らずは、ゲープだけではなかった。
「おい、コニー!」
カスパーが止める間もなく、チーム50のサブリーダーは、階級順の職責だといわんばかりの勢いで、フランクの土産を飲み干す。
「……甘い……」
「あれ? 俺が飲んだのは、どっちかっていうと、すっぱくて」
フランクは首をかしげたが、勿論、その違いには理由があった。フランクはそのいきさつを忘れているようだが、土産のドリンクは、フランクが飲んでいたものと違うのだ。それは、不思議な風体をした老婆がしつこくフランクに買えと差し出したものだった。ちなみに、その時、フランクは、村人が差し出した得体の知れない飲み物を躊躇いなく飲み、思い切り彼女に張り飛ばされたところだった。
「ほら」
じろりと、コニーに睨まれ、デミアは机に残る容器を手に取ろうか迷った。3番隊員の目は、思わず隊長へと目をやる。しかし、フランクの好意を無碍にするつもりのないゲープは、飲めよと、デミアを促す。
だが、デミアは、容器へと手を伸ばさなかった。顎をしゃくるゲープの様子がおかしかった。ゲープは性的な興奮をみせている。
暑いのか、首元をあけた首筋が、赤い。しきりとそこを、ゲープは触る。
瞬きの多くなった目は艶を増し、少し息苦しそうに開かれた唇から漏れる息は早い。
驚いてコニーを見れば、つられたようにその顔を覗きこんだカスパーが慌てたようにコニーを支え、立ち上がらせた。
「……だよな?」
立ち上がらされたコニーは、それを嫌がったくせに、目がとろりと潤みだすと、顔を摺り寄せるようにして、カスパーの肩へと頭を埋めた。
「そうみたいだ……な」
その間にも頬の赤さを増していくゲープに、デミアも慌てて、ゲープのカバンを手に取り、彼を引き摺った。
事情が分からず、フランクがひとり、少し不安げだ。
「フランク、土産、サンキュー」
仲間への土産をいつも忘れない家庭の躾のよい新人を笑顔で安心させると、3番、4番隊員は危険物であるドリンクをカバンに放り込み、それぞれの車へと急ぐしかなかった。
体温を上げた恋人たちは、足取りすら不確かだ。