PRESTO

Released 11/1989


SHOW DON'T TELL
CHAIN LIGHTNING
THE PASS
WAR PAINT
SCARS
PRESTO

SUPERCONDUCTOR
ANAGRAM(FOR MONGO)
RED TIDE
HAND OVER FIST
AVAILABLE LIGHT

私的解説



ショウ・ドント・テル

何度聞かされることだろう
一日中、ずっとそんな調子だ
誰もが、どんなことでも知っている
誰も、間違いなんておかしたことはない
それじゃ、またあとで

君は誰を信じられる?
安全にゲームをするのは難しい
でも何人かの良い友人を除けば
何も信頼できるものなんてありはしない
また後になったら

見せてくれ、言うのではなく

僕に見せてくれ、言うのではなく
君は得点を計算済みだ
僕に見せてくれ、言葉で言うのではなく
もう全部、前に聞いたことばかりだ
態度で示してくれ、言葉ではなく
君がなんと言おうと、かまいはしない
僕に見せてくれ、言うのではなく

認識を曲げることはできる
現実は動かないけれど
異議を唱えることもできる
僕は判事になろう
そして陪審員に

フェンスごしに観察し
正当な考察を与えよう
証拠に基づいて
陪審たちを誘導しよう
僕が、陪審だ

僕に見せてくれ、言うのではなく
ハイ──静粛に
僕に見せてくれ、言うのはやめてくれ
手短にしようじゃないか
態度で示せ、口先だけはたくさんだ
もう要求は充分だろう
見せてくれ、言うのはやめてくれ
証人は位置についている
見せてくれ、言うのではなく

僕に見せてくれ、言うのではなく
ハイ──静粛に
態度で示せ、言葉だけはたくさんだ
手短にしようじゃないか
見せてくれ、言うのはやめてくれ
君がなんと言おうと、気にはしない
見せてくれ、言うのではなく
証拠物件Aを見よう

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チェイン・ライトニング

エネルギーは伝染性
熱狂は広がっていく
潮は月の重力に反応し
すべてのものが、同調関係になっていく

笑いは感染性
頭の中は、一瞬興奮でいっぱいになる
惑星の公転によって風は生み出され
火花は発火して、新しい情報が広がっていく

応答、振動、反響、共振

幻日が地平線に輝き
流星雨が夜空を横切る
その瞬間は短い
でも、こんなにもまばゆくなれる

希望は伝搬性
楽観主義が広がっていく
苦悩は焦りを生み出し
無知は模倣を生み出す

幻日が地平線に燃え
流星雨が夜空を横切る
その瞬間は短い
でも、こんなにも明るくなれる
別の光源からの反射を映して
その瞬間が終わっても
火花は、なおも飛び続ける
別の瞳の中に映し出されて

夢は時に魅惑的なものとなり
一瞬、頭の中は欲望で満たされる
愛は君の招きに反応する
愛は想像に反応する

応答、振動、反響、共振

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ザ・パス

誇りを持とうと、肩をそびやかせ、
闊歩して、校庭から出ていく
世界の賞賛を待ち望みながら
良心を持たない反逆者
理由のない殉教者

君の周波数は電波障害を起こし
血管の中に電子の嵐が吹き荒れる
手の届かない栄光に憤りを感じ
目に見えない鎖を引っ張りながら

そして今、君は断崖のふちで震えている
無情な海を見つめながら
剃刀の刃の上にいるような人生には、直面できない
君の思い通りになったことなど、何もなかった

みなが暗闇の中に迷う時
夢見るものたちは、星を頼りにハンドルを取る
みなが溝にはまりこんだ時
夢見るものたちは、行き過ぎる車を見る
向きを変えろ、向きを変えろ、向きを変えろ
向きを変えて、剃刀の刃の上を歩け
背を向けるな
僕の前でドアを閉めないでくれ

この障壁が、ただ一つの道を
妨げているようにみえるけれど
君はたった一人ぼっちで
爆発することを望んでいるようにみえるけれど
本当はそうじゃない

誰かが悪い例を作り出した
屈服することも、悪いことではないと
戦う意思をなくした
気高い戦士の行動だと

そして君は今、断崖のふちで震えている
無情な海を見下しながら
剃刀の刃の上にいるような人生は、もうたくさんだ
何も思うようには、ならなかったと

君の悲劇に、英雄なんていない
君の逃避に、勇気なんて何もない
君の屈服に、慰めなんて何もない
君の運命に、気高さなんて何もない
ああ、なんということをしてくれたんだ

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ウォー・ペイント

鏡の前で一人の少女が
自らの装いを賞賛している
子供は母親になり
そして自らの監視下に置きたがる
もう男のいいわけはたくさん
今日こそは、その時が来るはず
もし出ていけたなら
彼女は幻想を持ちつづけていられる

一方通行の道に書かれた彼女の汚名
怒りの熱気に染められた頬
シャドーを塗った目に宿る、傷付けられたプライド
夜を戦いの雄たけびに染めよう

すべて虚栄心を膨らませるだけ
僕らは自分が見たいものだけを見る
美しいものと賢いもののために
鏡はいつも嘘をつく

鏡の前で一人の少年が
自らの偽装を点検している
自分の武装と
ガレージの中のChagerを磨く
つまらないないいわけはたくさん
今夜、きっとそうなるはずだ
戦うことができたら
彼は王女を連れていける

軍隊式のビートをとどろかせるドラム
行進する足音が響く通り
傷付けられたプライドとゆがんだ眼差し
夜を戦いの雄たけびに染めよう

すべて虚栄心を膨らませるだけ
僕らは自分が見たいものだけを見る
強いものと賢いもののために
鏡はいつも嘘をつく

少年たちも少女たちも、ともに
自尊心と自惚れを履き違えている
幻想のための野望
自己欺瞞のための夢
少女たちも少年たちも、ともに
何が足りないのかを知ろう
少年たちも少女たちも、ともに
鏡を黒く塗ろう
黒く塗りつぶそう

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スカーズ

僕は山の頂上に立ち
空に向かって叫んだ
増幅された気分を感じながら
歩道の上を歩いた
──あの感じがやってくる

僕のあらゆる神経は、剥き出しの針金のよう
接触には、敏感だ
時には超感覚を感じる時もある
でも、誰がそんなこと気にするだろう
──あの感じがやってくる

歓びの傷跡
痛みの傷跡
大気の状態が変わると
また敏感にうずく

感情に受けた傷はみんな
くっきりとした痕を残す
時には暗闇に潜む影のように
不意に転がり出てくる
──あの感じがやってくる

今まで見たことすべて、
そして見なかったことすべてを考える時
僕に心を開いてくれた人たちのことを考える時
──あの感じがやってくる

家のまわりに雪が深く積もり
冬の明かりは灯りつづける
セレンゲッティで過ごした夜、
ライオンが狩りに出る音を聞いた
──あの感じがやってくる

森は工場に変わる
河も、海も、空も
砂漠の飢えた子供
目の周りには雲のようにハエがたかっている
──あの感じがやってくる

歓喜はその指紋を残していく
やがて消えていく痛みと同様に
記憶の中でそれらは共振し
こだまとなって戻ってくる

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プレスト

もし魔法の杖を、一振りできたなら──

僕は星々のチリでできている
血管の中には大洋が流れている
僕はここ、街のど真ん中に隠れている
雨の中からやってくる、よそ者のように

夕方の飛行機は滑走路を離れ
星座の光の中を飛んでいく
僕は無数の家を見下ろしながら
君は今夜、何をしているのだろうと考えている

もし魔法の杖を一振りできたら、
僕はあらゆることが、うまくいくようにしたい

僕は魔法なんて信じない
でも、時々見えないものが見えることがある
僕は調和の取れた人間じゃない
一晩で気持ちが変わることもあるから

冬の庭にいる夢を見た
真夜中のランデブー
一面の銀と青の世界、そして凍りつくような沈黙
僕は君に、なんて愚かなことをしたのだろう

見渡す限りの水が広がっている夢を見た
僕は海を沖へ向かって、泳いでいた
水はあまりに深くて、とても足がつかない
僕はかつて、なんて愚かだったのだろう

もし魔法の杖を一振りできたら、
僕はみんなを自由にしたい

僕は魔法なんて信じない
僕の記憶は千里眼的になるけれど
僕は方向を示して導いていける人間じゃない
光よりも熱気を強く発散している間は

聞かないでくれ
僕はただ思いつくままやっているだけなんだ
幻想の中、気ままな逃避行をしているだけ
わからないかい
僕の熱気は上がっている
僕は光より熱気を強く発散しているんだ

聞かないでくれ
僕はただ思いつくままやっているだけなんだ
幻想の中、無邪気な逃避行をしているだけ
わからないかい
僕の熱気は上がっている
僕は光より熱気を強く発散しているんだ

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スーパーコンダクター

反逆者か英雄のようにパックされて
大衆へのアピールをねらう
彼は本当にそのものなんだと
観客たちに感じさせるために

ペルソナの幻想をパックされている
彼女は実際には、あまりに現実的だということを、
注意深く隠すために

微妙な部分を突く
美しく甘いメロディーで
ダンスのできる
強くて単純なビートで

彼のあらゆる動きを見てごらん
スーパーコンダクター
効果的に編成された幻想
スーパーコンダクター
彼のあらゆる動きを見てごらん
スーパーコンダクター
君が信じてくれることを期待し
欺くことを目論んでいる
それがエンターテイメント

彼は市場に狙いを定めることができる
君たちの賞賛を浴びて
本当の現実は薄らいでいく
さあ、彼も信じるだろう

役割が俳優自身になり
彼女は称賛されることが病みつきになる
ステージがその世界
なぜなら、彼女はそこを去ることはないから

か弱い部分をつく
感傷的な安らぎで
ロマンスの真似事ができる
ファンタシーを知っているから

彼女のあらゆる動きを見てごらん
スーパーコンダクター
彼女は反応を巧みに操れる
スーパーコンダクター
彼女のあらゆる動きを見てごらん
スーパーコンダクター
後姿で間抜けな観客たちを引きつけ
売り物の幻想
それがエンターテイメント

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アナグラム

蛇(snake)は暗闇(darkness)から現れる
楽園(paradise)から来たパレード(parade)
エデン(Eden)への必要(need)は終わり(end)
商品化(merchandize)された夢(dream)を追いかける(chase)

原子(atomic)は鼓動を刻み(tic,toc)
指導者たち(leaders)は取引をする(deal)
宇宙(cosmic)は多くの場合漫画的(comic)
隠すこと(conceal)のできない反対論(con)

宴(feast)に安全な(safe)席(seat)はない
獣(beast)に最良の(best)一刺しを(stab)
夜(night)はふけていく(thin)
聖者(saint)は罪へと落ちていく(sin)

芸術(art)を抵抗(resistance)の域に高めよう(raise)
危険(danger)はあえて(dare)重大になる(grand)
プライド(pride)はハンブルパイ(pie)に減じ
ダイアモンド(diamond)は砂(sand)に落ちる

地球(earth)と天気のことを気にかけよう(heart)
新しい誕生(birth)の明るさも(brightness)
収穫(harvest)のことを気にかけよう(heart)
地球(earth)から収穫(harvest)を刈り取ろう(shave)

理由付け(reasoning)は一部の狂気(insane)
イメージ(image)は目のないゲーム(game)
夜はふけていく
聖者は罪に落ちていく

奇蹟(miracle)にはそれを主張する人(claimer)がいるだろう
より多く(more)がローマ(Rome)に頭を下げるだろう
彼(he)と彼女(she)が家にいる(house)
でも家庭(home)にいるのは僕(me)だけだ

バラ(rose)にはバラの栄華(splendor)がある
最後(end)に反応する(respond)ために立ち止まる
夜(night)のように孤独なもの(thing)
最後(end)は友達(friend)と一緒の方が素敵だ(finer)(find)

僕は彼女の鼓動(heart)の速さ(rate)を聞く(hear)
芸術(art)の熱気の中の裂け目(tear)

夜はふけていった
聖者は罪に染まっていった

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レッド・タイド

自然は新しい疫病を生み出し
通りを駆け巡る
歴史は新しく折りたたまれ
繰り返される運命にある
寝室のドアに向かう逃亡者
開いている店を探そうと立ち止まる恋人たち
雨は森の土の上で燃え
赤潮が岸辺にキスをする

これは警報の誤作動じゃない
テストでもない

太陽の下にとどまること
それはただ肌を焼き焦がすだけ
毒に満ちた空
大気はあまりに薄くなる
太陽に祝福を、雨はもういらない
川の流れは、ぱっくり開いた傷のよう
黒い風が海の底に降り積もり
赤潮が岸辺を洗う

これは警報の誤作動じゃない
これはテストじゃない
どこにも逃げる場所はない
どこにも安息の地はない
パーティーは予期せぬ客によって
突然終わりを告げるだろう

最終期限が近づいてくる
疲弊しきった国々に
以前は何か(意味のあるもの)だったのに
自らの手で荒廃させてしまった
議論をするには、遅すぎる
無視するのは、ひどすぎる
静かな反乱は、やがて真っ向からの戦争に
海の変化は陸の世界をも変え
赤潮は岸辺を覆い尽くす

今こそ、潮の流れを変える時だ
今こそ、戦いに転じる時だ
穏やかに、なすがままに
永い冬の夜に入っていきたくはない
今こそ、時間を作る時だ
希望がまだ見えている間に
穏やかに、なすがままに
永い冬の夜に入っていってはいけない

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ハンド・オーヴァー・フィスト

ジャンケンポン
紙は石を包みこみ
はさみは紙を切る
紙から骨まで切る
ジャンケンポン
紙は石を包みこみ
はさみは紙を切る
そして石は一人取り残される

人ごみに紛れて、消えていくこともできた
あまりに目立ちすぎてさえいなかったら
誇りを持って、歩き去ることもできた
君が大声で笑わなかったなら、
簡単にできたはずなんだ
僕は一人でも充分やっていけると思っていた
郵便配達や電話を待ちわびて
自分自身の世界で迷子になっていた
僕は一人で走っていけると思っていた
たった一人で夜を駆け抜けられると

こぶしの上に手を重ねて
そんなに大変そうなことじゃない
こぶしの上に手を重ねて
それは互いにちょっと触れ合う力

歩きながら、君は話す
僕がこんなにひどい間違いをするなんて
君は思いもしなかっただろう
君の好きな歌を口づさんでいる
僕はその歌をずっと大嫌いだったのに

他のいろいろな人たちのように
僕らが互いに同意し合えたことなんて
あっただろうか
僕らは、ますます遠く離れていく
君は僕の言うことなんて
絶対に聞いていないと思っていた
手を胸に押し当てて
高鳴る胸にこぶしを握り締める

一人で外に出てみよう
異国の土地を散歩して
行き交う人たちにあいさつをしよう
その手に力を感じ
世界が広がるのを感じるんだ

僕の精神は抵抗しているけれど
このこぶしを開こう
手に手を重ねて
ジャンケンポン

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アヴェイラブル・ライト

絶え間なく吹く風は、すべてを見てきた
あらゆる種類の光のもとで
満月とともに湧き起こり
夜の間中うなりながら、吹き続ける

眠ることを知らぬ風は、すべてを聞いてきた
海と空の間にある、あらゆるものを
街の谷間で
ビルディングの上げる声が聞こえる

ああ、風は運んでくれるだろう
海の声をすべて
ああ、風は運んでくれるだろう
帰り来るすべてのこだまを

風と空の動きにあわせて走れ
海の音楽を伴奏にして
四方向からの風をすべて合わせたら
世界を感じることができるだろうか
世界中、風を追いかけて
僕は人生というものを見ていたい──自然なままの光をあてて

光の戯れ
一枚の写真
かつての僕のやり方
半分忘れかけた見知らぬ人々
僕にはさほど大事なことじゃない

光の悪戯
動画写真
記憶の奔流に捕らえられた瞬間
影をもっと暗くしてくれ
色が鮮やかに輝きすぎてしまうから

ああ、光は運んでくれるだろう
海の幻をすべて
ああ、光は運んでくれるだろう
すべてのイメージを

影から光へと走る
太陽は僕を休みなく駆りたてる
東からもたらされた約束は
西において破られる
世界中、太陽を追いかけて
僕は生命の輝きを見ていたい──あるがままの姿で

四方の風をすべて一緒にしたら
世界を感じることができるだろうか
影は光の戯れの中に隠れる
どんなに見たかったことか
世界中、光を追いかけて
僕は命の輝きを見てみたい──自然のままの光を当てて

風とともに行こう
光の中に立とう

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あくまで私的解説


SHOW DON'T TELL

 正確には、“Show、Don't tell”つまり、言葉で言うのでなく、態度で見せてくれということでしょう。
 裁判用語が多いのですが、本当の裁判でなく、日常誰かに裁かれる場面を、比喩にしているのだと思います。
 わたしにはなんとなく、死後の審判とか最後の審判と言うような、へヴィーなものをちょっと連想してしまいますが、たぶんそこまで深刻ではないでしょう。
 人との信頼とか信用の判定は裁判のようなもので、そこでは言ったことより行ったことのほうが重要だ、と言う感じでしょうか。

 THE CAMERA EYEという、RUSHのウェブ・マガジンの記事のよると、この曲は「神がいると言う証明を見せてくれ、聖書や教会で語 るのではなく」と言う意味にも、読み取れるそうです。



CHAIN LIGHTNING

 この曲に関しては、RUSH FAQで、Neil自身が解説していました。sun dogとは、「幻日」という、日没の太陽のそばに小さな虹色の光点が現われる、美しい自然現象なのだそうです。冬の晴れた空に出ることがあるらしいですが、日本ではあまり聞いたことがありません。緯度の高い地方のほうが、出やすいのかもしれませんね。
 夜の湖で、Selenaさんと一緒に流星雨を見たことも、反映されているらしいです。でも、この曲の主題そのものは感情の伝達とか、流行、ファッションの伝わり方、のような感じを受けました。

 “another pair of eye”──湖で夜、流星雨を共に見たSerenaさんを思うと、この曲には別の切なさが伴います。

Web上でこのsun dogの写真を見つけました。(出典は、Counterpartsだったかな。。)まさにsun dogs fire on the horizonというイメージです。

Sun dog



THE PASS

 この曲もFAQに解説がのっていました。Mystic Rhythmsにも記述がありましたが、テーマは「自殺について」です。Neilは自殺について、非常に気にかけていたけれど、それを曲にする際には、「人生そんなに捨てたもんじゃないよ」というような、いかにもありそうな台詞や陳腐な言いまわしや安易な激励は避けたかった。自殺は崇高な行為ではない、ということを言いたかった、というようなことを言って いました。

 自殺については、文化的宗教的な背景が国によって違いますから一概には言えませんが、一般的に言って、キリスト教ではタブーです。神から与えられた命を勝手に断つことは、許しがたい罪だとの考え方があります。でも東洋的な考えでは、さほどタブーではなく、お釈迦様にしても飢えた虎の子を養うために自らの身を投じたり、(これも広い意味では自殺ではないかと思う)日本では切腹は名誉ある こと、というか、生き恥をさらすより腹を切って死を選んだ方が潔い、という考え方が昔は一般的で、戦争中の特攻隊なども自らの命を投げ出して敵艦に飛びこんだりしていた(これも広い意味では自殺だと思う)わけで、それこそNeilの嫌う「死を選ぶことは崇高な行為だ」というような考え方があったりするわけです。

 今は、そういうサムライ的な価値観で命を断つ人はそう多くないでしょうが、生きる気力をなくして、絶望にかられて、目的を失って、「こんな現実からおさらばしたい」という、逃避的な理由で死を選ぶ人は、あいも変わらず多いような気がします。生きることはつらいことも付きまとう。それくらいなら、いっそ──なのですが、それは結局悲劇でしかないわけです。
「闇に迷う時も、夢見るものたちは星を頼りに舵を取る。溝(どん底)に嵌りこんでしまった時、夢見るものたちは通りすぎる車を見る(新しいチャンスを探す)」──だから、戻って来い──断崖の淵から。やや間接的ではありますが、そんな明確なメッセージを感じます。

この曲について、興味深い投稿を見つけたので、再考察してみました。(2005年1月27日up)
Analyzing "The Pass"



WAR PAINT

  タイトルはインディアンの「戦いの化粧」ですね。戦士たちがいくさの前に、 気持ちを鼓舞させるために顔に模様を描く。現代女性たちの化粧も、男性たちのおしゃれも、 『戦化粧』なのでしょうか。彼らは鏡の前で、そのでき映えを点検し、満足するのでしょうか。「鏡はいつも嘘をつく」つまり、現実を見ないで、幻想のみを膨らませる、と言うことかもしれません。
でも、戦い化粧で染め上げて、いったい何を戦うのでしょうか。

※「ガレージの中のChager」の「Chager」は、車の名前でした。シボレー・チャージャーというアメリカ車だそうです。(ALEXさん、情報ありがとうございました)



SCARS

 悲しみだけでなく、歓びも感情に傷跡を残す、と言うのは最初意外な感じを受けましたが、 歓びの記憶というのも、思い出すと切なさと痛みを伴ったりすること、あります。Sweet painでしょうか。
 その時に感じた思いは記憶の中に傷として刻まれ、何かの拍子に生々しく思い出す、そんな感覚かもしれません。これも、Neilが様々な土地を旅し、いろいろな経験をして、感じた思いなのでしょう。

 セレンゲティは、ケニアにある広大な国立公園で、多くの野生動物たちが生息しています。また、アフリカには多くの飢えた人々がいますし、ずっと一貫して流れるアフリカン・ビートとともに、異国の地を思い起こさせます。それだけが主題のすべてではないとは、思いますが。



PRESTO

 タイトルは音楽用語で「速く」。手品の掛け声にも、“Hey、Presto pass”と言うのがあるそうですが、結局どう言う意味なのでしょう。詞の中に、この単語は出てきません。

 HossyさんのHPにこの曲の訳がのっていましたが、「恋人と喧嘩をしてしまった男が後悔している」というイメージは、「まさに!」という感じでした。
「光より熱気を強く発散している」ということは、「理性より感情に流されやすい」ととることが できますし、「水の中の夢」というのも、ユング心理学の分析でいくと、水は無意識(から湧き上がってくる感情)の象徴ですから、「感情の海に圧倒されている」というイメージになります。(自分の手にあまることを始めてしまった、というイメージにも取れますが)うーん、なるほど。一晩で気が変わるのも、カッカしやすいのも、感情が勝ちすぎているから、(だから恋人ともけんかするわけだし) せっかちに生き過ぎているから、というわけなのでしょうか。だから、Presto!と。逆説的に言えば、もう少しゆったりしたい、という感じなのかもしれません。

「もし魔法の杖を一振りできたら‥‥‥‥」みなさんは、何を望みますか? 私だったらやっぱり、 "I would make everybody alright" ── 両方のフレーズをくっつけたみたいですけど。もちろん、自分も含めて、です。

 

SUPERCONDUCTOR

 芸能界、エンターテイメントの世界を的確に、多少皮肉を込めて描写したものでしょう。 芸能人は観客やファンを操るスーパーコンダクターですが、実のところ本当のスーパーコンダクターは誰なのでしょうか。彼ら彼女ら自身も、スーパーコンダクターに操られているだけの存在なのかもしれません。

(ちなみに、「僕らは違う」か、「僕らもある程度は、そうなのかもしれない」か、どちらでしょう‥‥そんなことも思いました)



ANAGRAM (FOR MONGO)

 この曲を英単語と並列させて訳したのには、わけがあります。ご存知の方も多いでしょうが、 この曲のタイトルは「アナグラム」──つまり、つづりかえ遊びです。
歌詞の中で、本当の意味でのアナグラムは、"night"と"thing"、"Rome"と"more"、"miracles"と"claimers"くらいですが、 結局歌詞全体が、言葉遊びです。それぞれのセンテンスで、表記した一番長い単語の中に、それぞれ別の単語のスペルが 含まれています。"darkness"のスペルの中に"snake"が含まれているように。(それゆえ歌詞も、「darknessからsnakeが現われる」と、 なっているのです。読んだまんまの意味ですね)
 個人的に笑ったのが、"image"は、eyelessつまりI-less game (imageのiを取り去って並べ替えると、gameになる)と、 「彼と彼女が家にいる〜」というくだり。たしかにhouseの綴りからheやsheを取り出せるけれど、homeの中にはmeしかないですから。 (あれ、でも、"he"はある・・)

 でも、歌詞自体の意味はあるのでしょうか。なんだか、なさそうでありそうで、一見ものすごく抽象的で難解な感じが してしまうのですが。
 ウェブ・マガジン「THE CAMERA EYE」のジョークページに、この曲の歌詞がサタニズムに通じると誤解される話がのっていましたが、 まあ、たしかに「蛇が暗闇から現われる」だの、「エデンはもう必要ない」、「獣に最上の一撃を」、「聖者は罪に落ちる」なんて表現は、 誤解を招くと言えば招くかも。向こうでは、あくまで一部の人たちの間でですが、ロックをサタニズムと結びつけやすい傾向があるので、 一般的に見れば、「考えすぎ」になるのでしょう。RUSHはRule Under Satan's Handの頭文字を取った、なんてデマも聞いたことがあります。 Stryperみたいなクリスチャン・バンドではないにせよ、あまり宗教心は感じないにせよ、私には、彼らは悪魔主義とは最も遠いバンドのような気がするのですが。



RED TIDE

 前の曲は遊びですが、これはシリアスです。この曲もRUSH FAQ、Mystic Rhythmsともに解説がありました。 環境破壊とエイズがテーマになっています。エイズはこのアルバムが出て1、2年後に著名人たちの感染が次々と表面化し、大きな波紋を 広げますが、(QUEENのFreddie Mercuryが亡くなったのも、この頃でした)エイズも環境破壊と連動して、新しい文明病のような印象だったのでしょうか。
 地球温暖化、オゾンホール、酸性雨、森林伐採と、様々な問題が深刻化してきた頃でした。(今はもっと、でしょう)自然を破壊し、地球をこれだけ荒廃させたのは私たちの文明だ。今なら間に合う。このままでは永い冬の夜のような、 暗く希望のない時代(もしくは破滅)が来る、と。

 Mystic Rhythmsに記述がありましたが、『パーティーは予期せぬ客によって〜』と言うくだりは、聖書からの引用だそうです。 『ソドムとゴモラが滅ぼされた時、人々はその直前まで何も知らずに食べたり娶ったりしていた。同じく人の子が来る時にも、 (再臨の折には)人々は何も知らずに食べたり娶ったりしているであろう。だが突然、パーティーは予期せぬ客(神の使い)によって、 終焉を迎えるのだ』と言うような意味のことが、聖書にあるそうです。つまり、この一句は終焉を暗示していると言えるのかもしれません。
そうなってしまう前に、何とかすべきだと言うことですね。



HAND OVER FIST

 ジャンケンポン、と訳すのは、なんとなく抵抗があったのです。なんだかミニモニみたいで、軽くなっちゃいそうで。内容は、 けっこうシリアスなのですが。本来、hand over fistというのは、「たぐる」とか『濡れ手で粟』というような意味らしいのですが、 でもそうしてしまうと、後の歌詞に繋がらないような気がするし、これはどう見てもジャンケンなので、思い切ってこの訳を使いました。 ただ、「手に手を重ねる」というニュアンスも、あるような気がします。(まともに言って、"Lay Your Hands On Me"だと、 Bon Joviになっちゃうけど)

 Neilはどこで知ったのか(日本公演ではないと思う。中国旅行中かな(って、中国にもジャンケンはあるのだろうか?)  ジャンケンに禅の思想を感じ取り、三すくみの関係──オールマイティはなく、状況によって勝ち負けが変わるということに、興味を 引かれたらしいです。



AVAILABLE LIGHT

 これはNeilが世界のあちらこちらを旅し、感じた思い、もしくは「なぜ旅に出るのか」と言った思いを表現した詞なのだそうです。
   Available Lightとは、写真用語で、「自然光」のことなのだそうです。人工的なライトを当てず、その場の光だけで撮影することを 言うそうです。「あるがままの姿を見る」という感じだと思います。



アルバムについて

 三枚目のライヴアルバム『A SHOW OF HANDS』を経て、レコード会社もMercuryからAtlanticに移籍し、ルパート・ハインを プロデューサーに迎えて製作された、いわゆる第四期最初のアルバムです。

 初めて聞いた感想は、『地味!』でした。なんと言ってもその前が、思いっきりポップでシンセきらきらの 『HOLD YOUR FIRE』でしたから、この落差は凄かった。
 でも、聞いているうちに、その穏やかさや優しさが伝わってきて、心地よく感じるようになりました。全体的に、落ち着く気分になれる アルバムです。




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