HOLD YOUR FIRE

Released 09/1987


FORCE TEN
TIME STAND STILL
OPEN SECRETS
SECOND NATURE
PRIME MOVER

LOCK AND KEY
MISSION
TURN THE PAGE
TAI SHAN
HIGH WATER




フォース・テン

タフな時代は、タフな話し方を
タフな心を、タフな歌を求める
そう、それが要求されるんだ

帝国のように栄えたり衰えたり
潮の流れのように満ちたり引いたり
虚勢をはって洒落て見せたり、落ち込んで黙り込む
プライドのように、当たったり外れたり

ハリケーンのように席捲し
恋人たちのように踊り、夢見ることも出来る
獲物を狙う鳥のように、日々に立ち向かうこともあれば
人目を忍ぶゴミ拾いのようにもなったりする

覗いてみなよ
台風の目の中を
気をつけるんだ
形をもたない力に
見まわしてみるんだ
景色と音を
覗いて、気をつけて、見まわして

粗野な優雅さで動くこともできる
夜のリズムに合わせて
踊り娘たちのように素敵に、よそよそしく
ビートとライトの熱気の中で

ロマンスの花を咲かせることもできる
生きる喜びを感じながら
装いの下には、そして盗人のように厚い皮の下にも
あまりに優しく、感じやすい心がある


最大風力で、昇って降りて
世界を席捲しながら、風に乗る

覗いてみなよ
嵐の目の中を
気をつけるんだ
海と空の様子に
見まわしてみるんだ
景色と音を
覗いて、気をつけて、見まわして




タイム・スタンド・スティル

風に背を向け
一つ、息をつく
もう一度出かける前に
ずっと進み続けてきたから
友人と一杯酒を酌み交わす夕べ
そんな時を過ごすことすらせずに

あまりにピリピリしすぎてしまったようだ
少し休みたい
超越することを学んだ巡礼たちのように
なろうと努力するよりも
一歩踏み出すごとに
それが最後かもしれないと
そんな思いで生きていくことを学ぼう

時が、動かないでいてくれるなら──
後ろは振り向かないけれど
今、周りを見まわしてみたい
僕を取り巻くもっと多くの人々を
もっと多くの場所を見ていたい
今――

この瞬間よ、もう少しだけ長く
このまま止まっていてくれ
すべての感覚が、もう少しだけ
強く感じられるようになってくれ
経験が、素通りして行ってしまう気がするから


顔を太陽に向け
目を閉じる
守りの態勢をとるのはやめよう
受けた傷をすべて
元に戻すことはできないのだから

今まで、あまりに駆け足で来てしまった
休む暇もなく──
もしすべてのペースをもう少しゆっくりできるなら
座礁した船の船長のように
次の潮がやってくるのを待っていられる

あらゆる印象が
もう少しだけ強くなってくれ
この動きが、そのまま止まっていてくれ
ほんの少しだけ長くでいいから
無邪気な思いが、少しずつ消えていってしまいそうだ

夏は飛ぶように過ぎ去り
夜は寒さを増していく
子どもたちは成長していき
旧友たちは老いていく
経験が、いつの間にか消えていく――




オープン・シークレット

すれ違ってしまった
何かが頭の上をすっと通り過ぎたその時
僕は窓の外をずっと眺めていた
本当は、君の顔を見ていなければいけなかったのに

すれ違ってしまった
また別の壁が出来てしまったように
お互いの防壁を取り去ることが出来たと
そう感じられる瞬間もあったはずなのに
君が考えているようなことを、僕は思っていたんじゃない
そんなつもりは全然なかったんだ

たぶんみんな、
こんな気持ちを持っていると思う
折り合いをつけずに
放っておくことはできない
怒り狂うものもいる
子どものように学ぼうとする人もいる

お互いが隠していることは
決して僕らの関係を成長させてはくれない
時間が解決してくれるだろうから
その呪縛を断ち切らなければ


自分を守るために、蓋をしておくべきか
すべてを明かし、君の嘲笑を浴びるか
この二つの選択の狭間で
僕の心は時々引き裂かれる思いがする

頭の中に、秘密がぐるぐると巡りながら
僕は目を覚ましたまま、横たわっている
それはわけもわからないまま、失ってしまった何か
君に言うべきではなかった何か
僕は窓の外を眺めていた
君の顔を見るべきだったのに


理性的な見解に立てば
絶対的なものなんか、何もない
たぶん、いくらかは本能的なものなんだろう
でも、君ができたことが一つだけある
君は、僕を理解しようとすることができたはずだ
僕も君を理解しようとすることが、できたはずなんだ……




セカンド・ネイチャー

高等事務所へのメモ
当局への公開書簡
神へ、王へ、国家の長へ
産業界の大物たちへ
実力者と権力者たちへ
皆に、わかって欲しいことがある――

第二の自然であるべきなんだ
つまり、僕らが生きているこの場所のことだけれど
賢明になって、話し合おう
僕らは鈍感ではないはずだから
進歩と言うものは、我慢がきかない
それは知っている
でも、何かを与えなければ――

君たちがみな違うってことは、わかっている
それは僕も同じ
みな忙しすぎて、責めを負うことができない
僕は何か変化を起こしたいけれど
君はそんな時間がないと言う
僕らは考え続けることができない
まるで犠牲者のいない犯罪だ
誰も非難を免れるものはいない
でも、僕らはみな恥を忘れている
火と戦いながら
その一方で火を煽っているのだから


人々は選択をする
そして選択は意見をもたらす
人々は基本的に善良だと
昔かたぎの賢者たちは言うだろう
でもその例外を日々、新聞で見ている

第二の自然界と思うべきなんだ──
少なくとも、僕はそう感じている
「今、この身を夢の国に横たえます」
僕は完全なものなんて
実在しないことを知っている
近づくことは、できると思っていた
でも、ある程度妥協はしなければ

今日はまた違った状況だ
それは明日もまた、同じだろう
今までと同じやり方で
世界をとらえることは難しい
あまりに急がされることが多くて
僕らは押し流されてしまう
あまりに多くの船長たちが
間違った方向に舵を取っている
努力するのは大変だ
誰かのせいにすることも
火と戦いながら
その一方で火を煽っていることを




プライム・ムーヴァー

基本的で本質的な
生存本能が
より高位の情熱を掻きたて
生きている歓びを感じさせる

交流電気が流れ
潮の流れが押し寄せる中
賢明でない衝動に対する
理性的な抵抗が起きる
 どんなことだって、起こり得る

認識した時点から
真実に到達する瞬間までに
立証責任の重さに負け
手放してしまう瞬間が訪れる

発火した時点から
最後のドライブまでに
旅の到達点には
決して至ることはない
 どんなことだって、起こり得る


基本的で気まぐれなフィルターが
僕らの目の中にあって
知覚を変容させてしまう
レンズが偏光して

交流電気の流れが
意思表示を余儀なくさせる
理性的な反応は
計画の変更を余儀なくさせる
 どんなことだって、起こり得る

コンパスがさす点から
北磁極まで
針の先は
行きつ戻りつ動き続ける

入場した時点から
ろうそくが燃え尽きるまで
旅立ちの場所には
二度と戻ることはない
 どんなことだって、起こり得る


 私はハンドルを動かし
 全部のマシンの出力を上げ
 プログラムを起動して
 舞台裏に駆け込んでいく

 私は雲を動かし
 光と音の出力を上げ
 ウィンドウを起動して
 世界が動いていくのを観察する

 どんなことだって、起こり得る




ロック・アンド・キー

殺人本能には直面したくない
他人のものでも、自分の中にあっても、どちらも――

僕らは喫水線の下で
繊細な貨物を運んでいる
それは原始的な時限爆弾のように
コチコチと音を立てている

洗練された感情の後ろで
文明的な薄い見せかけの後ろで
孤独なハンターの心が
危険な辺境の地を守っている

時々そのバランスが崩れることもある
強い感情に、天秤は急激に傾く

黙っていることなんて出来ない
身の安全を守るための
絶望的な声がする
誰も自由という代償に
恐ろしい選択はしたくない
殺人本能と、向き合いたくなんてない
他人のそれでも、自分の中にあっても
だからそれに鍵をかけ、固く封印する


慈悲の問題じゃない
法律の問題でもない
何か狂信的な理由をつけて
君を殺そうとする人は、いくらでもいるだろう

良心なんて関係ない
理由なんて、いくらでも付けられる
本能の問題なんだ
――致命的な欠陥なのだろう

抵抗しても、報いは何もなく
援助もなく──
称賛もない‥‥


犠牲者にはなりたくない
誰もが、そう思っている
だから僕らは殺人本能を封印し
その鍵を投げ捨てる




ミッション

君の炎を絶やすな
明るく燃やし続けよう
その炎を守れ、夢に火が点くまで
ヴィジョンを持った魂は
使命を担う夢なのだから

彼らの情熱的な音楽を聞き
その言葉を読み、心動かされた
熱気にあふれた彼らの写真を見つめた
その際立った存在感の秘密を知りたくて

力強い幻影を感じた時
彼らの炎は生命を持った
あの本能が、僕にも欲しい──
あの狩りたてる力が、僕にも欲しかった

際どい使命を乗せて、魂は飛翔する
創造の力を燃え上がらせて
たった一つの欲望につぎ込まれた
舞い上がる野望の高みを目指して

名前を持たない財産をその手につかみ
強迫観念のような狩りたてる力の虜となって
ヴィジョンを抱いた魂は
一つの使命を帯びた夢なのだから


彼らの映像が煌いている
命のないスクリーンに光をもたらしたかのように
彼らの美しい建物を通りぬけながら
僕にその夢が持てたらと願う

でも夢は動作を必要としない
その火花を生き生きと保つために
強迫観念が行動を起こさせ
プライドがその原動力と変わる


そういう物を持たない人たちにとっての、ささやかな慰めは
彼らがどれほど苦闘を重ねてきたか
どれほどの苦しみに耐えてきたかを知ることだろう

彼らの人生が風変わりで奇妙なものだったとしても
きっと彼らは喜んで、その人生を差し出したと思う
何か、もう少し平凡なものの為に
それとも、何かもう少し正気なものの為に

楽園の幻を求め
僕らはそのために皆、途方もない代償を支払うけれど
でもヴィジョンを持った魂は
一つの使命を帯びた夢なんだ……




ターン・ザ・ページ

真空の中では、何も生きることは出来ない
誰も、たった一人では存在できない
事件は誰か他の人たちにだけ起こるものだ
僕らはそう思おうとする
自分自身の問題で手一杯なのだからと

歓びを分け与えること
それを学ぶだけで充分だ
苦痛は同情ではやわらげられない
僕らができることは、気に留めることだけ
悲劇に対しては、首を振るだけだ

毎日、僕らは過去から流れ押し寄せてくる
タイムカプセルの中に立っている
毎日、僕らは未来からスピードを上げてやってくる
風のトンネルの中に立っている

それはただ、一つの時代
それはただ、一つのステージ
僕らはそこから意識を切り離し
また新しいページをめくる


天気の長期予報をながめ
ニュースに出てきたすべての名前を聞いて
国家の状態をチェックし
環境を憂いてみる

真実は結局、動く標的なのだから
つまらないことを論じ
断片はうまくはまらない
みんなを教化することなんて
どうしたらできるだろうか
真実は結局
ほとんど明るみに出されることはないのに




タイ・シャン

聖なる山の高み
七千段の階段を上り
秋の黄金色に輝く光の中
空気には魔法が漂っている

雲が頂上を取り巻き
静かな寺院の周りに
そして言葉を彫りこんである金の碑に
風は強く、冷たく吹いていた
僕の本能のどこかで
原始的な何かが共鳴するのを感じた

山の頂上に立って
中国が歌いかける調べを聞いた
収穫期の、平和な霞の中
それは、永遠に続く歌──


もし空に手を伸ばせたら
一千年も生きられる
僕は神秘主義者のようにそこに立ち
雰囲気の中に我を忘れた

一瞬の間に
雲は突然二つに別れ
東の海まで続く
景色がずっと広がっていった

四十世紀の間、紡がれてきた歴史を
僕は目の当たりに見たのだった

時間と距離を思い
歴史の困難さに思いを馳せた
中国が歌いかけてきた時
僕は希望と渇望の声を聞いた




ハイ・ウォーター

暗闇の中から
終わりのない洪水の後から
水が湧き上がった時
僕らの記憶の中に流れ込み
僕らの血管のなかに流れ込んだ――

星空を見るために
何かが水面を突き破った時──

まだその関係を感じている
大洋の波しぶきが
僕らを故郷に連れ帰る
水は君を故郷に戻してくれる


山の重みの下から湧きあがる
まるで地球の心臓が爆発したように
砂漠の乾きの中で見る夢のように
大理石の泉から流れ出す

強大な川が流れくねるジャングルで
何かが泳いで渡っていった――

水が君を故郷に連れ帰る時
何かが沈黙を破る
水が僕を故郷に連れ帰る時
言葉にならない声が聞こえる

岸辺に打ち寄せる波が
激しい熱帯の雨が
記憶の果てを流れ落ちていく
血管の中を流れ落ちていく

波より高く、もっと高い所を這いずりたいと
何かが海を離れた時──

水が僕らを故郷に連れ帰る時
僕らはまだその高揚を感じる
叩きつける歓喜の雨の中
懐かしい感覚だ
水は僕らの故郷――




あくまで私的解説


FORCE TEN

 この曲は、「TOM SAWYER」と同じく、PYE DUBOIS氏との共作です。タイトルは「第十部隊」ではなくて、RUSH FAQにもありましたように、 ビューフォート風力階級の、「風力10」が正解です。
思わず「最大風力」と訳してしまいましたが、最大は12です。ごめんなさい。でも11以降は、陸上で起こることは非常に稀だそうですから、 「風力10」は、陸で起こりうる最大と言ったところでしょうか。

 風力10は「全強風」、英語で言うとstormで、風速24.5から28.4m。木が根こそぎ倒れる強さだそうです。
 プロモヴィデオでは、アニメの羊さんが飛ばされていましたが、たしかにこの風力だと、羊も飛ぶかもしれませんね。
 現代社会情勢の勢いや速さを、「風力10」にたとえたのかな、と言う印象です。
ビューフォート風力階級



TIME STAND STILL

 この曲、意味的には前の曲とつながっているような感じを受けてしまうのですが。
時間は止まりませんし、瞬間も凍りません。でも強風で飛ばされて、立ち止まることも困難な世の中だからこそ、 立ち止まり、息をついて、自分と回りを見つめるゆとりが欲しい、と言ったところでしょうか。

『FORCE TEN』では、“look in、look out、look around”『TIME STAND STILL』でも“see more of the people〜” 両方とも『見ること』が強調されているように感じます。TSSはさらに、『感じること』の重要性もありますね。
時は過ぎてみれば速いもの。“children growing up──old friends growing older”と言うフレーズは、本当に実感します。 私、個人としては。

 タイトル訳ですが、Time stands stillではないので、命令形のニュアンスかなと思い、『時間よ止まれ!』などと、 山下達郎(違った?)のような訳になってしまいました。



OPEN SECRETS

 この曲は特にひねりも抽象もないと思うので、歌詞をストレートに読めば、言いたいことはわかると思います。
秘密を打ち明けるのは勇気がいるが、秘密のままにしておくと、二人の距離が遠くなる──『PERMANENT WAVES』の 『ENTRE NOUS』のテーマに近い気もします。あれは秘密ではなく、『お互いの違いを認めること』でしたが。

 ところでこの曲の国内盤対訳に、『頭の回りは春一面』などという有名な誤訳がありましたが、あれは“spinning”を“spring”と 間違えたのかも、と疑っています。最初読んだ時には、どこかのラリったおじさんが、頭の周りに星ならぬ花をぐるぐる飛びまわらせて、 ハラホレヘレ〜となっているイメージが浮かんでしまいました。(歌詞とは、何の関係もないのに)



SECOND NATURE

 この曲は『Mystic Rhythms』で解説を読むまでは、正直に言うと、抽象的過ぎて、「?」でした。 が、あの本を見て、目からうろこが落ち、『なるほど!』と思ったのでした。
 お偉いさんたちに、今の世の中について、いろいろと言いたいことはある。でもそれは結局『第二の自然』の問題で、 もっと大事なのは『第一の自然』── 「僕らが生きているこの場所のことさ」──つまり、地球だ。
今の状態は 「火を消そうとする一方で、火を煽る」──環境改善を目指しながら、その一方で環境を汚染し続けている、ということですね。

 これのより直接的なヴァージョンが『PRESTO』の『RED TIDE』なのだそうです。このくらいダイレクトに言えばわかる、 つまり事態はより切迫してきた、とも言えるわけなのでしょう。と言うことは、今は?

 ちなみに、『今、この身を夢の国に横たえ〜』と言う一節は、キリスト教の就寝前の祈りだそうです。



PRIME MOVER

 タイトルは『原動力』と言う意味です。
 生きるということ、その根底には生きるための本能があり、その本能に動かされる自分自身の感情と体があり、 その上により高次の感情──自己実現や向上心、知的探求心などがあって、連動しあっているわけですね。
『交流電気』と言うのは、脳からの伝達信号でしょうか。

 ちなみに、この曲にも単語を取り違えた誤訳が、ありました。“cloud”を“crowd”にしちゃっているので、 『雲』が『民衆』になってしまっているわけです。まったく同じ取り違えを『TAI SHAN』でもやっていますが、 ううーん──まあ、変なイメージが浮かばないだけ、ましですが、なぜこういうミスが起きるのだろう。不思議。

Rush.netに、この曲の解釈についてのスレがありました。それによると、この「Prime Mover」とは、 「神」のこと、という解釈が、あちらの人たちの間では、ポピュラーなようです。世界を動かしている原動力は、「神の力」 でも、神様はただ起動させるだけで、あとは後ろに隠れて見守っているだけ――これは、「I set the wheels in motion〜」 からのフレーズに、端的にあらわれている、とのことでした。このフレーズ、特に後半は、「これは神の視点だな」と、 私も思ったのですが、全体像の把握までには至っていませんでした。神は原動力、世界を起動させる、でも 動いたあとは、ただ見守るだけ、そこで「どんなことが起こるか」までは、神がコントロールしているわけではない。 だから、「anything can happen」――それがNeilの宗教観であり、運命観なのだ。と言う論に、私も非常に納得したので、 ここで紹介することにしました。 (2003/04/25)



LOCK AND KEY

 この詞はけっこうダイレクトなので、あえて解説はいらないかも。人の持つ「殺人本能」についてです。
 最近では、しっかり封印していない人が少しずつ増えていそうで、ちょっと怖いかも。



MISSION

「想像力を持つ魂は、使命を持つ夢」
 このフレーズに尽きますが、原語からのニュアンスを少々補足します。“spirit”は「精神」と言い換えてもよく、 “vision”は単なる“creativity”ではなく、「頭の中で想像の翼を広げ、明確なイメージを描くことのできる人」 と言うニュアンスを感じます。

 何かを想像し、構築できる力を持つ人が、その力を与えられたのは、何かをなすべきためだということでしょうか。
 才能ある人は、その才能ゆえに苦しみます。それでも彼らは自らのすべてを、その力を与えたもうた何かが課した使命のために、 捧げなければならない。「天才」の運命でしょうか。
 でも、この詞は「天才」の側からは書かれていません。そんな天才たちを仰ぎ見、感嘆し、 理解しようとする一般人の側から、書いています。(私から見ると、Neilは前者ではないかと思うのですが)



TURN THE PAGE

 これは『TEST FOR ECHO』のもう少しクールで平和なヴァージョンかな、という気がするのですが。 あちらは『ビデオ』なら、こちらは『本』ですね。
 世界を、そして時の流れを歌っています。
『私たちは過去から来て未来へつながる今を(お気楽に)生きている』



TAI SHAN

 『泰山』ですね。RUSH FAQにもありましたが、Neilが中国に自転車旅行をして、泰山に登った体験を詩にしたものだそうです。
 尺八には、ちょっと笑ってしまいますが、(尺八は中国ではなく、日本古来のものだったような気が‥‥‥‥東洋のイメージが ごっちゃになっているのかな? 中国なら胡弓のほうが、らしいと思うけれど) ゆったりしたサウンドと歌詞で、 文字通り『風景が見えてくる』ような気がします。



HIGH WATER

 生物は海からやってきた。海は生命の起源であり、水は空気とともに生物には必要不可欠なものです。 人間の体液濃度は海水の塩分濃度とほぼ同じだそうです。
人間は、この世に生まれ出るまでは、羊水に浮かんで生きています。胎児は受精卵の段階から、 進化の過程をそのまま再現し、人間の赤ん坊となって生まれてくるそうです。なんだか、神秘を感じてしまいます。
 サウンド面でも、水の湧き立つ感じがよく出ていると思います。



アルバム全体について

 いわゆる第三期の締めくくりにふさわしく、シンセやシークエンサーがきらびやかに走り回り、曲調も思いっきりポップで、 『うわぁ、RUSHがこんなにポップになっちゃうなんて!』と、私は最初に聞いた時、腰を抜かしたものでした。それでもやはり 彼らの個性はしっかり生きていて、普通のポップスとは一味違う、聞いていて非常に心地よく、軽いわりには密度の高い作品です。 聞いていると、なんとなく元気づけられるアルバムです。



Page Top    BACK   NEXT    Rush Top