スピリット・オブ・レイディオ
和やかな声で
一日が始まる
控えめな(ラジオの)友が
軽く流れていく曲をかける
そしてその魔法の音楽が
君の朝の気分を演出してくれる
コースから少しはずれて
空いた道路をたどる時
君の指に魔法が宿る
その『精霊』は君のまわりにただよい
君の楽しい孤独に
さりげなく接触してくる
目に見えない放送電波が
生命を持ってパチパチはじける
輝くアンテナは
エネルギーに溢れる
時代を超えた波長にのる
感情のフィードバックが
価値のつけられないほど(貴重な)
贈り物を届けてくれる──
ほとんど何の見かえりもなしに‥‥
モダンミュージックを作り出す
この機材すべてには
それでもまだ率直でいられる
それほど冷たく計算されたものではない
それははただ、本当に君の誠実さ(だけ)の問題
人は音楽の自由を信じたがる
でも賞のきらめきと終わりのない妥協が
誠実さの幻想を粉々に砕いてしまう
利益のための言葉が
スタジオの壁に書かれている
コンサートホールには──
サウンドのこだまが響き渡る‥‥
セールスマンのサウンドが
自由意志
人生に偶然が入りこむ余地はない
そう思っている人がいる
僕らの目的のない踊りに方向性を与えているのが
多くはひどい恐怖であっても
おもちゃの惑星
認識することのできない力(神)の
糸に操られて、僕らは踊る
星々は整然と並んではいない──
さもなければ、神に悪意があるのだ
非難はされるより、する方がいい
何かの天の声を聞いて
決められた導きを選んでもいい
もし君が何も決めなかったとしても
それでも君は一つの選択をしたことになる
目に見えない恐怖から
それを消してくる優しさまで
選ぶことができる
僕の選ぶ道は、はっきりしている
僕は自由な意志を選ぶ
負け札しか配られていないと
思っている人がいる
カードが不利になるように積まれていると
彼らは桃源郷に生まれたわけじゃない
すべては、すでに定められてしまったこと
鎖につながれた囚人
悪意ある運命の犠牲者
顔を踏みつけられながら
それでも天上のこの世のものならぬ楽園に
自らの場所を求めて祈ることもできる
僕たちはみな、一人一人
それぞれの意識を持っている
不完全で、未完成であっても
不確かな目的をもつ
遺伝子の調和(混合)
あまりに早く、遠く流れ去っていく
幸運を求めて
ヤコブの梯子
暗く、ぐずついた沈黙の中
雲は戦いに備えるかのように広がり
傷つき、陰気な嵐雲は
日の光を翳らせる
早過ぎるたそがれの中
それは低く、不気味に垂れこめ
雷鳴が低くうなる
彼方の序曲のように
まったく突然に、
雲が二つに分かれていき
光が明るく途切れることのない光線となって
流れ落ちてくる
空を見ている時の
あの人たちの視線を追ってごらん
移りゆき、輝く光の糸が
彼らの夢を紡ぎ出していく
アントレ・ヌ(私たちの間に)
僕らはお互いに秘密の存在
それぞれの人生が
他の誰もが読んだことのない小説
愛の絆に結ばれていたとしても
僕らをお互いに結び付けている糸は
こんなにも細い
僕らはお互いに惑星のようなもの
軌道を漂いながら
ほんの一時、重なってすれ違う
お互いに世界を隔てるほど遠く離れ
一人きりで、それでも一緒にいる
行き交う二隻の船のように
ただ、僕たちの間で
認める時が来たように思う
時にはあらわにするのを怖れていた
お互いの違いを。
ただ、僕たちの間に
気づく時が来たように思う。
お互いの間の距離
それは君と僕が成長するための
余地なのだということを
僕たちはお互いに他人同士
たくさんのスライドパネルを使った
幻想のショーを演じて
よくリハーサルを積んだ役割を演じているのか
それとも心からの振る舞いなのか
それを知るのは難しい
僕らはお互いに島のよう
波高い海に
希望にみちて橋をかける
焼け落ちたり、流されてしまったものもある
あえて選ばなかっただろうものもある
でも、僕らはいつも自由なわけじゃない
異なる糸
誰がドラゴン退治にやって来るのだろう──
倒れるのを見るために、誰が来るのだろう?
あてつけの言葉は、的をはずれても傷つける矢
それは当面の、強大な敵
あまりに多くのから騒ぎと厄介ごとが
あまりの多くの反駁と混乱が
神秘を剥ぎ取っていく
そこに、本当の動機に至る手掛かりがある
本当に存在しているものは
僕たち二人だけ
お互いに、どうしてここまで来たのか知っている
何も説明する必要はない
この歌の中にあるのは
僕たちの一部なのだから
僕らの無邪気な心は、どうしてしまったのだろう
もう、時代遅れになってしまったのだろうか
お互いの純真さとともに──
もう、子供ではいられない
異なる目には、別々のものが映る
異なる心は、別々の糸の上で鼓動を刻む
でも君と僕にとって
そういうことすべてがわかりあえる
そんな時もある
自然科学
T 潮だまり
海岸線の岩場を
引き潮が引いていく時
あとには潮だまりがいくつもできる
その短命な宇宙の中
それぞれの小宇宙の惑星は
完全な社会
僕たち自身を映し出す
素朴な鏡のようだ
すべての小さな生き物たちが忙しげに
それぞれの運命に追われている
水溜りの中に生きていると
彼らはすぐに海を忘れていくだろう‥‥
らせん状の通路の中
幾重にも重なり合う輪
その模様は壮大で複雑
何度も何度も
僕らは途中で視界を失い
原因は思わぬ結果を生み出す
U ハイパースペース
時間と空間の中を
量子が飛び出していく
宇宙は拡散することを覚えた
混乱と魔術
勝利に満ちて、悲劇的に
制御を失った、機械化された世界
作り物のバンドに合わせて踊る
高慢な皮肉屋たちのための
コンピュータ化されたセミナー
彼らのイメージに合わせて
世界は作られているのだから
彼らに理解できなくても不思議ではない
らせん状通路の中
幾重にも重なる輪
その模様はこんなにも壮大で複雑
幾度も幾度も
僕たちは道を見失い
原因は思いもよらない結果を生み出す
V 永遠の波
科学も、自然のように
その保護を常に視野に入れて
制御されなくてはならない
変わらぬ誠実さを持って接すれば
それはきっと、僕らのためになってくれる
市場戦略ではなく
表現としての芸術は
僕らの想像をかきたて続けるだろう
変わらぬ誠実さを持って接すれば
それはきっと、ずっと助けになってくれる
もっとも絶滅の危機に瀕しているもの
それは、正直な人間
でも彼らは生き残るだろう
他のすべてが滅びてしまったあとも
世界を形作っているものは──
尊厳ある誠実さ
感じやすく、なにものにも捕らわれず、そして強く
くりかえし押し寄せる波は
潮流に乗ってあふれ
当然のように世界を沈めていく
繰り返す潮の流れは
満ちては、また引いていき
あるがままに生きていく生命を
そのあとに残していく
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