CARESS OF STEEL

Released 09/1975


BASTILLE DAY
I THINK I'M GOING BALD
LAKESIDE PARK
THE NECROMANCER

THE FOUNTAIN OF LAMNETH




バスティーユ・ディ

パンがなければ、ケーキを食べたらいい
彼らの略取は際限なく続く
高貴な生まれ(の成果)を誇示しながら
庶民たちを踏みつける
だが、彼らは行進していく、革命の日に向かって
ギロチンは、彼女への血にまみれた褒賞
無実の者たちを地下牢から解き放て
王はひざまずき、彼の王国は立ちあがるだろう

血に染まったベルベット、汚れたレース
どの顔にも、隠せぬ恐怖が宿る
死へ向かうために、頭を垂れるその姿を見るがよい
まるで彼らが通り過ぎる時、
我らが頭を垂れたように

そして我らは行進していく、革命の日に向かって
ギロチンは、彼女への血にまみれた褒賞
歌え、おお、不協和音のコーラスで
王はひざまずく、その王国が立ちあがるために

教えられた教訓は、しかし決して学ばれなかった
まわりの至るところで、怒りの炎が燃える
過去を見つめて、未来を導こう
遠い昔に、その枠組みは作られていたのだから

彼らは行進していったから、革命の日に向かって
ギロチンが、彼女への血にまみれた褒賞となったから
世紀を超えて伝わるこのこだまを聞くんだ
権力はお金で買えるもののすべてではない





老いてゆくのか

今日、鏡を覗きこんでみた
目にあまり生気がないようだ
ああ、また何本か毛が抜けた
僕はきっと禿げると思う
そうさ、きっと禿げると思うよ

まるで昨日のことのように思えるよ
座って、一晩中夢について語り合ったことが
青春の夢
単純な真実
今は、わずらわしいことが一杯だ
日常にどっぷり漬かりすぎているよ

虚栄の市まで散歩に出かけよう
いたるところに、思い出の道がある
ウォールストリートがあそこに出現する
風に髪をなびかせて

昔、僕らは花を愛していた
今では土地の値段を尋ねている
昔は水を飲んでいたのに
今では、ワインじゃなきゃはじまらない
今まで生きてきて
いろいろなことを見てきたけれど
心の平安なんて、なんの役に立つんだろう
心の平安なんて、どこかへやってくれ

僕の人生は滑り落ちていく
僕は毎日、年を取っていく
でも僕が白髪になる時が来ても
自分のやり方で老いていきたいと思う





レイクサイド・パーク

道の真ん中で、露天商たちが呼びかける
一緒に君の運を試してみませんか、と
メリーゴーランドは昔と変わらぬメロディーを
きしませながら回っている
10セントのお楽しみは、つきることなく
それ以上求める人など、いないほど
ポケット一杯の銀貨が
天国のドアを開ける鍵

レイクサイド・パーク
風にそよぐ柳
レイクサイド・パーク
あふれるほどの思い出
笑いながら(乗り物に)乗ったこと
中空に漂うイルミネーション
夏の夜の、輝く星空

波打ち際を裸足で走った
あの自由な日々
燃えあがる漂木のはぜる音を聞いていた
あの夏の夜の秘密
灯台の傍らで飲み交わし
桟橋でタバコをふかした
その魔力は毎年少しずつ色が失せてしまうけれど、
それでも、まだその力を感じることはできる

5月の24日には
みんな集まったものだった
砂の上に座って
花火を見物していた
浜辺に踊る炎
一緒に歌を歌ったこと
みんな思い出に過ぎないけれど
一生消えない思い出もある





ネクロマンサー



T 闇の中へ

 灰色の夜明けの軌跡が、東の空を染める頃、ウィローデイルからやって来た三人の旅人の姿が、森の影から現われた。 夜明けの川を歩いて渡り、彼らは南に向かった。ネクロマンサー(交霊師)が治める、暗い禁断の国へと旅をしているのだ。 今でも、交霊師の恐ろしい力が、強烈に感じられる。それは肉体を弱らせ、心を悲しみに染めてしまうのだ。そして最後に、 彼らはその意志と魂を剥ぎ取られ、空っぽの、心を持たない亡霊になってしまうだろう。ただ自由への渇望だけが、彼らに 復讐を熱望させているのだ。

 鳥が夜明けを告げ
 静寂が森を覆う
 三人の旅人たちは川を渡り
 南へと旅を続ける
 その道は危険に満ち
 空気は恐怖に染められる
 交霊師が近づいてくるその影が
 鋼鉄の涙のようにのしかかる

U 影の下で

 どんよりと曇った空の、真っ黒な雲の裂け目が無気味に光る。交霊師は魔法のプリズムを使い、(その領土の)監視を続けている。 彼は国中をくまなく見渡し、すでに気づいていた。三人の無力な侵入者たちが、その術中に落ち入ったことを。

 塔の中に閉じこもり
 その領土を見渡して
 すべての生き物たちを捕らえ
 なすすべもなく立ちすくませる
 プリズムの中をのぞきこみ
 彼らがやってくるのを知ると
 地下牢の中へとおびき寄せた
 恐怖に麻痺した抜け殻となって
 彼らは屈し、頭を垂れた

V 王子の再来

 王者がやってきた。長い年月ものあいだ戦い、つながれていた鎖からとうとう自由になったバイトー王子が現われたのだ。 呪文は破れた。暗黒の地は、明るくなった。交霊師の生霊は、夜の闇に紛れ、空へと登っていった。

 ひっそりと忍び寄って攻撃し、
 バイトーは敵を倒した
 男たちは自由になり、
 地下の迷宮から、脱出していった。
 交霊術師の生霊は
 空に影を落として通り抜けていく
 その邪悪なプリズムの目で
 他の地を暗黒に変えるために





ラムネスの泉



T 谷間にて

 僕は生まれた
 僕は、僕自身
 僕は新しい
 僕は自由だ
 僕を見て
 僕はまだ若い
 まだ本物を見たことはなく
 まだ称えられたこともない人生

僕の目は、たった今開いたばかり
その眼はいっぱいに見開かれている
僕の回りの映像が
内面と一致しない
たった一つの曇りを、僕は認識した
それこそ僕を慰め、力づけてくれるもの
僕の人生の方針は安楽に、
そして必要なだけの質素さで生きること

それでも僕の目は引きつけられてしまう
東にそびえるあの山に
それは僕を夢中にさせ、心を捉えて離さず
僕の心に片時も平和を与えてくれない
捕らえられていた夜の牢獄を抜けて
山は夜明けを迎え
岩の鎖を引き千切ってあふれた光が
谷間をまばゆく照らす

長い夜明けの中で生きているように
すべてが僕にとって新鮮に感じられる
空が白々と明るくなっていく様子を見るのも
露に濡れた野原を歩くのも初めてだ
つまらないことでも、無駄にはしない
その瞬間瞬間を生きていく
僕はあの山に登り
ラムネスの泉に行くために、生きるんだ

U ディダクツ アンド ナーペッツ

 聞いてくれ‥‥‥‥

V 誰もいない(船)橋

叫びとともに、意識を取り戻した
寒さが肌に食い込む
空は激しく揺れてうねる
唸りをあげる風に引っ張られているかのように。
海の飛沫が視界をぼやけさせる
波はものすごい速さでうねり続ける
僕の船を救ってほしい、そして自由にして
僕はなすすべもなく、マストに縛られている

思い出した、初めてこの手で舵をとった時のことを
懸命に舵柄を握り、
遠くの国を目指して航海していた
でも、今海はあまりにひどく荒れている
なのに、なぜなのかわからない
どうして、乗組員たち(クルー)は僕を見捨ててしまったのか
今こそ、僕を導いてくれる手が必要なのに

進路を叫んでみても
舵を取るものは誰もいない
救いを求めて声を上げても
誰も聞くものはいない
哀願の叫び
大渦巻が近づいている
絶望の叫びが響く
でも、誰も聞いてくれる人はいない

W パナセア

真っ白な混乱状態が
少しずつほぐれていった
僕はあたりを見つめ、不思議に思った
僕はまだ生きているのだろうか、と

竜涎香のほのかな香りがし
僕は頭をめぐらせて──驚いた
一目見て、僕の目は釘付けになった
なすすべもなく、魅入られてしまった

パナセア──とろけるような優美さ
ああ、君のそのはかなげな顔に触れさせておくれ
その魅力に、僕は絡め取られてしまう
もう離れられない

これこそ僕の人生にとって、意味あるものだ
嵐から守ってくれる避難所
その柔らかく、暖かい身体で
僕の苦難を和らげてくれる
裸のままの調和
涙に答えてくれる微笑
優しい手が僕に約束してくれる
何年も続く快適さを
それでも、夜が明ける前に
僕は行かなくてはいけない
それはわかっているんだ

パナセア──その純粋な情熱
君のその優しい誘いには抗えない
僕の心はずっと、君のそばに横たわり続け
さまよえる僕の肉体は、(君を求めて)嘆くことだろう

X バッカス・プラトー

また終わりのない一日が来る
灰色の輪郭に縁取られて。
ワインをもう一杯
目を輝かせて、飲み干そう
朝の寒気を感じることなく一日を迎えるために
長い夜は、正気ではいられない時間だから

43年ものの樽から
もう一杯酒を汲み出そう
記憶が紅く霞んでいき
ぼんやりとかいま見えるだけ
驚きの感情よ、戻ってきてくれ
でも僕が与えられるものは、まだあるだろう
もう、何も気にならない
生きる意味が、たいしてないとしても

また深い霧に包まれた夜明けがやってくる
あの山は、ほとんどどこかへ行ってしまった
また新たな疑いに満ちた恐怖
道はもはや、はっきり見えなくなってしまった
僕の魂は疲れ、落ちこんでいる
終わりはもうすぐ近くに来ているのに

Y 泉

見てごらん、霧が立ち上っていく
太陽は天頂を過ぎていく
もうあと少しでたどりつける
足取りは軽くなっていく
聞いてごらん、湧き立つ水の音を
もう、かなり近くまで来ているに違いない
感じるよ、期待と怖れが激しく入り混じって
心臓がどきどき脈打つのが

今、とうとう僕はやってきた
ラムネスの泉へ
(喜びのあまり)歌い出すと思っていたけれど
もう疲れてしまって、息も切れた
多くの(苦難の)旅が、ここで終わった
でも、その神秘は同じ答えを告げるだけ
人生はろうそくのようなもの
そして夢こそが、そこに灯る炎なのだと

(人生の)鍵、終わり、そして答え
みんな、その神秘のベールを脱いだ
それでも、すべては混乱の中
目には、思わず涙があふれる
僕は、たしかに一つの到達点に来た
(それは単なる一里塚でしかなく)
でも、本当の終わりに来たわけではない
山の向こうに沈んだ、あの(偉大な)太陽のように
僕はまた、ここに来るのだろう

 僕は動いている
 僕はじっとしている
 僕は叫んでいる
 僕は黙っている
 僕は一緒にいる
 僕は離れている
 僕は永遠なんだ
 生まれた時には

 それでも‥‥‥‥僕はここに生きている



あくまでも私的解説


BASTILLE DAY

「バスティーユ・ディ」と言うのは、フランス革命の記念日で、7月14日ですね。フランス革命がバスティーユ牢獄の襲撃から 始まったので、こう呼ぶのでしょう。この曲はタイトルが示すように、第三節まではフランス革命を題材にしています。冒頭の フレーズは、マリー・アントワネットの有名な台詞ですし、国王と王妃がギロチンで処刑されたことも、描かれています。
"wash the salt〜"の一節は、直訳すると「塩を大地に洗い流す」なのですが、これだと何のことやらわからない‥‥‥‥「塩」と 「大地」で思い出すのは、聖書の「汝らは地の塩である」と言う言葉で、これは一般の勤勉な人たちを指しているのだから‥‥‥‥と いうことで、「庶民たちを踏みつける」と言う意訳になってしまいました。でも、本当にこれで良いのか、いまいち自信がないので、 間違っていたらご指摘ください。
 ところで、この曲の主題自体は、フランス革命そのものじゃないのですよね。「歴史は繰り返す。でもそうならないように、過去を 正しく見つめて教訓とすべきだ」という、最後の一節がこの曲の主張だと言う気がします。



I THINK I'M GOING BALD

 訳していて思わず吹き出しそうになってしまったのですが、禿げるって、誰が?  N‥? それともA‥(あわわ、 これ以上言うまい!)
 まあ、それはともかくとして──この曲の邦題は「老いていくのか」ですが、意味的には、「若さをなくしていく」という方が 当たっているような気がします。どっちも同じ? とは言えないと思います、わたし的には。つまり若い頃もっていた純粋さとか新鮮な 感性が、年齢を経るにつれ、日常のわずらわしさに埋もれて、だんだんとなくなっていってしまう。そんな感じではないでしょうか。 私くらいのトシになると、なんとなく実感できます。老いていく、とは思いませんが。しかしねェ、当時22歳の若者の書く詩じゃない でしょ! 鋭いけれど‥‥‥‥



LAKESIDE PARK

 「レイクサイド・パーク」は、セント・キャサリンズにある実在の公園らしいので、「湖畔の公園」と訳さないで、そのまま 固有名詞的に使わせてもらいました。セント・キャサリンズはトロントから車で一時間ほど南下したところにあるオンタリオ湖畔の町で、 Neilの故郷でもあります。

 個人的な話ですが、私は新婚旅行でカナダに行った際、トロントからナイアガラ瀑布の見物に行く時に、セント・キャサリンズを 通ったのです。十月の末で、紅葉に彩られた果樹園や木々の向こうに、白や薄黄色のまるでおもちゃのような家が点在し、その向こうに オンタリオ湖が広がる、絵のように美しい光景を今も覚えています。(ちなみに私はこの時果樹園に立ち寄り、りんごジュースとジャムを 買いました。残念ながら、レイクサイド・パークには行ったことがありません。団体ツアーで、自由時間がなかったものですから。 ああ、話が完全に個人的になってしまって、すみません!)

 レイクサイド・パークはその名のとおり、たぶんオンタリオ湖畔にあるのでしょう。メリーゴーランドなどの遊具もある、けっこう 大きい公園らしいです。Neilはハイスクールの頃、夏休みにそこでアルバイトをした経験があると、彼の自叙伝「Port Boy Story」に 書いていました。セント・キャサリンズの高校生たちには憧れのアルバイトだったらしいです。Neilは的当てゲームかなにかの係だった らしいですが、暇なときに呼び込みをしないで、あたりの人たちをただ眺めていたので、すぐにクビになったそうです‥‥‥‥
 歌詞自体は、一言で言えば、「ああ、青春だなぁ!」──きっと誰でも心の中に、それぞれの「レイクサイド・パーク」を持っている のではないでしょうか。



THE NECROMANCER

 ネクロマンサーとは、「交霊術師」──つまり、死霊と交流して占いをしたり魔力を得たりする人とされています。(今で言う シャー〇ン・キ〇グ?) "necro-"と言う接頭辞は、「死の」と言う意味ですし。
 ストーリーは"Rivendell"同様、J.R.R.トルーキンの「指輪物語」がもとです。フロド、サム、ゴラムの三人が、 冥王サウロンの支配する国を旅している時の様子と重ね合わせたもののようです。(「二つの塔」あたりでしょうか)でも、こちらでは邪悪なネクロマンサーに捕らえ られた三人の旅人たちを、地獄を抜け出してきたBy-Tor王子が倒して、救出するという話です。(でもネクロマンサーは死んだわけでは なく、生霊となってどこかへ行ってしまうのですが)
 ただ、このBy-Tor王子が前作の「By-Tor And Snowdog」では悪役だったので、少々話がややこしくなっています。このあたりの事情は RUSH FAQに詳しくのっていますが、つまり改心したか、さもなければ、時には善になることもあれば悪になることもある、と言うこと ですね。

 ちなみに「ウィローデイルから来た三人の旅人」とは、フロドたちではなく、RUSHのことだ、と言う見方もあります。Willowdaleは、 トロントの北側の郊外地区にあり、Geddyは実際そこの生まれなのですが、AlexやNeilも当時その近辺に住んでいたのかもしれません。 でも、ネクロマンサーに取りこまれる役でしょう、三人の旅人って。そのたとえは、どうも‥‥‥‥
 余談ですが、「Return Of The Prince」の歌メロ、どこかで聞いたことがあると思ったら、「Tickets to Ride」だ。似すぎ!



THE FOUNTAIN OF LAMNETH

 この曲のテーマは少し前に流行っていた「自己実現の旅」ではないかという気がします。また「ラムネスの泉」を夢の象徴とする ならば、その夢が現実になるまでの歩みとも言えるでしょう。
 漫然と毎日を暮らすのではなく、親や教師たちに背いても、見果てぬ夢を追いかけていたい、と主人公は決心します。第二パートの “Ditacts and Narpets”とは、"Addicts And Parents"(中毒者?と親たち)のアナグラムだと、RUSH FAQにのっていました。 そしてそこで表されているものは、主人公と親たちとの口論なのだと。およその聞き取り歌詞はFAQにのっていますが、ここでは不確かな ので、訳しませんでした。要は対立した考え方なのだそうです。そして最後はお互いに「(自分の話を)聞いてくれ!」と叫びあって 終わるというのは、お互い相手の言うことが耳に入らない状態で、平行線のまま決裂したという感じです。
 その後、危機一髪の苦難(実際に船で難破したというより、これはメタファーだと思います。究極の混乱と絶望ですね)や恋愛 (「パナセア」は万能薬という意味ですが、この場合主人公が自分にとって心の苦しみや痛みを和らげてくれる、薬のような存在だからと、 相手の女性をそう呼んだのではないか、と言う気がします。呼び名ですから、邦題の「万能薬」はやっぱり変ですね)、安易な道への 誘惑(バッカス・プラトーのバッカスは、ローマ神話のお酒の神様です。ギリシャ神話では、ディオニソス。同じ神様です。シグナス 組曲にも出てきますが)などを経て、主人公はとうとう目的地に辿りつきます。旅の終焉、夢の実現、しかしそれは決して 思い描いていたような楽園でもなければ、それですべてが終わったわけではない、人生はまだまだ続いていくということを悟るわけです。 自分が存在している限り、旅は続くのです。

 深いテーマですね。そう思わずにはいられません。ただこの形で描き出すには、少々テーマが深過ぎであり、それゆえ展開が やや駆け足になっているという感も否めません。「VISIONS」でも、「これだけの主題で展開させるには、もう少し慎重な準備が 必要だったのに、時間がなさ過ぎた」というようなことが書かれています。たしかに、デビュー作からサードまでは、レコーディング期間がそれぞれ 一、二週間くらいしかなかったそうですから、今から見ると嘘のように短い期間で、すべてをやらなければならなかったわけです。 そして彼らも、この時期はまだ若く、バンドとしても現ラインナップになってから一年という時期だったこともあり、新しい自分たち なりのスタイルを求めて、いろいろと試していた時期だったのでしょう。
 昔のアナログ盤での片面すべてを費やした組曲の試みは、RUSHにとっては、この曲が初めてでした。この後「2112」や シグナス組曲が作られていくわけですが、デビューから「2112」までの、いわゆる第一期というのは、時間の制約やまわりの プレッシャーの中で、求める音楽を目指して駆け足で坂を駆け上っていた時代なのでしょう。そんな彼らのその旅こそが、 彼らにとっての「ラムネスの泉」だったのかもしれません。

 それから十六年後、この「ラムネス」と同じ主題が、別の視点で、五分の曲に凝縮されて出てきたもの、それが「Dreamline」なの ではないかと、個人的には思っております。



アルバムについて

 本作はファーストに続いて評価の低いアルバムらしいですが、それはたぶんやりたいことにまだ十分な形を与えるだけのものが 得られていない、その不消化感ゆえなのかもしれません。気持ちはわかるんだけれどねェ、と言う感じでしょうか。同時に、完全に こなれたならば、凄いものになりそう、と言う予感も与えてくれます。未完の大器、という感じでしょうか。




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