〜風邪の裏側 2〜



キッシュが演習場に着くと、他の騎士達は既に整列して待機していた。
走って来たので、演習開始時間にはなんとか間に合っている。
「良かった〜、時間前っ」
キッシュは、ほっと息を吐く。
しかし、キッシュとは逆に、騎士達はうろたえ、困惑していた。

何故、キッシュ様が来ているのだろう?
マイクロトフ様はどうしたのだろう?

「お待たせ〜皆〜!
マイクロトフ様は、ちょっと具合が悪くて、今日はお休みです!
心配は要らないけど、今日は代わりに俺が演習見るからね〜!」
キッシュの可愛さ全開のその言葉に、騎士達は大いにどよめいた。

彼を知る騎士達から漏れ出でる、僅かばかりの恐怖と、
騎士団に入って間もない、年若い騎士達から零れる歓喜の声。

「それじゃあ、一個大隊ごとの隊長さん副隊長さん達でグループ作って〜!
えっと、6人が5組ね〜!
結果如何で訓練内容変えるからね〜!」
言われて、騎士達は疑問を浮かべながらグループを作る。
隊長クラスではない騎士達は、隊長達に場所を空ける。
「それで、何をするかというと、第1大隊から順に...」

「俺と戦ってもらいます!!」

う、嘘だ――――――――――!!!

隊長達は心の中で絶叫した。
5組全員は絶望に硬直しながら、自分達の上司の言葉を拝聴した。
「6人でかかってきて良いよ〜!
他にもやりたい人いたら、後でかかってきて〜!
頑張り次第では、昇級考えてあげる〜!」
それだけを言うと、キッシュは前に出ながら剣を抜く。

「じゃあ...
かかってきやがれ!!!」

一種、残忍な笑みを浮かべ、いきなり豹変したキッシュに、
隊長達は心で涙し、やけくそに向かって行った...。



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