4編が収録された連作短編集です。
前半の2作は派遣社員の澤田三智子と、派遣先の会社で出会った女性の上司・黒川敦子部長、通称アッコ女史との物語です。冒頭の表題作「ランチのアッコちゃん」では、恋人と別れたばかりで元気のない三智子が、ひょんなことから、三智子の手作り弁当と交換に、1週間アッコ女史が指示するところでランチをすることになります。
会社の中でのやり手社員のイメージとは異なり、どこのお店でもアッコちゃんは人気者。三智子は、ランチを食べ歩くうちに、次第に元気を取り戻していきます。
主人公同様、生活に疲れたときに読んでいて元気を与えてくれる作品です。とにかく、アッコちゃんのキャラに惹かれます。身長170センチを超える大柄で“アッコちゃん”という愛称から、どうしてもあの大物女性歌手を連想してしまうのですが、実は意外と美人ということからすると、個人的なイメージとしては、理想の上司、女性N0.1の天海祐希さんがピッタリだなと思います。
2話目の「夜食のアッコちゃん」では、派遣先の会社での正社員と派遣社員との争いに巻き込まれた三智子が、思わぬ姿のアッコちゃんと出会い、彼女と行動を共にするうちに、打開策を見つけていく様子を描きます。この話では、会社の中では隠されていたアッコちゃんの本当の姿が明らかになります。
3話目の「夜の大捜査先生」は、合コン参加中の30歳の契約社員が主人公。夜の渋谷の町を遊び歩く後輩女子高生を追いかけるかつての担任教師に遭遇し、一緒に追いかけることになります。かつての自分と今の自分を比べながら自分を卑下する主人公に対し、あんな言葉をかけることができる先生って素敵ですね。
4話目の「ゆとりのビアガーデン」は、前3作と異なり男性が主人公です。自分がクビにした使えない女性社員が1年後に事務所のあるビルの屋上でビアガーデンを始めます。そんな彼女に苛立ちながら、彼女を見ながら自分の辿ってきた道を振り返る社長を描きます。
初めて読んだ柚木作品でしたが、これはおススメです。帯で勧めてくれた朝井リョウさんに感謝です。できれば、またアッコちゃんに出会いたいですね。
(※3話目、4話目にも、アッコちゃんはちょこっと登場しています。) |