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柳美里の本棚

  1. 雨と夢のあとに

雨と夢のあとに 角川書店
 父の朝晴と二人暮らしの雨は12歳の女の子。父の朝晴は写真家で、台湾に蝶を探す旅に出ていて、なかなか帰ってこない。ようやく戻ってきたと思ったら、雨の周りでは不思議なことが起こり始める。
 柳美里さんの作品を初めて読みました。この作品は、テレビ朝日系列で昨年放映したテレビドラマの原作であり、今年夏には演劇集団キャラメルボックスにより舞台化もされました。この本は舞台を見終わった後に会場ホールで販売していたサイン本を購入したものです。どうしても先に見たテレビや舞台のイメージがあって、特に雨の年齢設定が同じだった舞台の印象が強くて、読んでいても雨役の福田麻由子ちゃんの顔が浮かんでしまいました。柳美里初めてのホラーと謳っているだけあって、ドラマや舞台に比べてホラー色が強い感じがします。
 これは親子愛の物語であり、愛が起こした奇跡を描いたものです。娘を持つ父親としては、朝晴の思いはよくわかりますし、事実を知りながらも気丈に振る舞う雨にも胸を打たれます。舞台を見たときも目が潤んでしまったのですが、ラストはわかっていながらも切なさにジーンときてしまいました。
 柳さんの最愛の人、東由多加さんがガンで余命一ヶ月と宣告されてもなお「絶対に死なない」と柳さんに約束した言葉が発端となって生まれた物語だそうです。
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