65歳で一念発起して、家業であった雑貨屋を改装し、和食器とコーヒー豆を販売する店「小蔵屋」を始めた杉浦草。そんな草が周囲に起こる事件の謎を解き明かしていく連作短編集です。
普通、おばあちゃんが名探偵というと、小柄な老眼鏡をかけた人当たりの良さそうなおばあちゃんの安楽椅子探偵ものというイメージがあるのですが、この作品はちょっと違います。家の中にいて謎を解くという安楽椅子探偵ではなく、76歳でありながら行動力があり、自ら歩いて謎を解き明かしていきます。
作品全体を通して、予想していたようなほんわかとした雰囲気はなく、主人公・草が、世間から老人という事実を突きつけられる場面もあったり、若い頃から―番仲のいい友人が脳梗塞で療養中で認知症の気配もあったり、家族の中に居場所を見つけられない老人が小蔵屋に入り浸ったりと、謎解きとともに辛い現実を描いている作品となっています。
しかし、草は、ただ老いを待っているだけではありません。65歳でやりたいことを始めるなんて、見習わなくてはならないところですね。 |