東京創元社ミステリ・フロンティアシリーズの第3弾です。
「アヒルと鴨のコインロッカー」に魅せられて、このシリーズを買うことにしたのですが、この作品を果たしてミステリとして捉えることができるのでしょうか。確かに、時にいわゆる日常の謎が提示され、それに対し、主人公守屋が答えをひねりだすということもあります。そして、最後に全編をとおした大きな謎が明らかにされます。その謎に対しては、途中、さまざまな伏線が張られており、そういうことからすれば、ミステリということができるかもしれません。しかし、その謎にしても殺人事件ではないし、そもそも事件と呼ぶべきものではありません。途中いくつか出てくる謎自体の解決もさらりとしたものとなっています。何か事件が起こって、探偵役の登場人物が解決する本格ミステリということを考えて読み始めると、ちょっと拍子抜けするかもしれません。僕など最初、これは太刀洗がホームズ役で、守屋がワトソン役で事件が解決されていくのかなと思って読み進めたのですが・・・。
結局これは、本の帯にもあったように、「ボーイ・ミーツ・ガール」の作品だと言った方がいいかもしれません。ユーゴスラヴィアから来たマーヤと主人公たち高校生との関わりを描いた青春小説、あるいは青春ミステリとでもいえるのでしょうか。ただ、そう捉えると逆に主人公とマーヤ、大刀洗の三角関係(?)が、あまりはっきり描かれていず、ちょっと消化不良というところはありますが。
最後はある程度予想はついていましたが、あまりにせつないラストでした。 |