第56回江戸川乱歩賞受賞作です。圭介、淳一、万季子、直人の4人の幼馴染みが23年前に封印した過去が、思わぬ事件をきっかけに浮び上がってきます。
子どもが万引きしたことでスーパーの店長から強請られた万季子は、別れた夫、圭介に相談し、二人で金を持って万引きの証拠となるビデオを取り返しに行くが、交渉は決裂。翌日、再度二人で訪れたところ、店長が殺されているのを発見する。犯行に使用された拳銃は、23年前の銀行強盗事件で、警官であった圭介の父親が射殺された際に使用され、所在不明となっていた拳銃だったが、実は4人が犯行現場から持ち出してタイムカプセルの容器に入れて校庭に埋めたものだった。
いったい、銃を掘り返したのは誰なのか。そして、店長を殺したのは・・・ 。中年となった4人のそれぞれの視点で物語は進んでいきますが、読者としては、この中に真実を隠している者がいることを常に念頭に入れて読み進んでいかなければなりません。
23年前の事件の真相については、やってもいないのに自分がやったと誤解していたことが前提となって成り立っていますが、そんな誤解をするのかと、ちょっと疑間のあるところです。また、終盤の万季子親子と淳一の同棲相手との出会いもご都合主義という批判に晒されるかもしれません。しかし、それを補う非常に読みやすい文章で、あっという間に読了しました。久しぶリに刊行と同時に受賞作を購入しましたが、後悔はしない作品でした。 |