ピンク色の豚のぬいぐるみが、あるときは家政婦、あるときはタクシーの運転手などになって人間と同じように生活をするなんて、ファンタジーというより子ども向けの作品かと思っていました。ところが様々な読書サイトで意外に評判がよくて、それじゃあちょっと読んでみるかと思ったら、第1作目が絶版になっているのか、本屋さんで手に入りません。ブックオフにもなく、そのまま読まないでいたところ、今回徳間文庫で再文庫化されたので慌てて購入して読みました。
9話からなる短編集です。豚のぬいぐるみが人間と同じように生活し、「山崎ぶたぶた」という名前さえ持っていることを不思議に思うのは各話の主人公ばかり。周囲の人は誰も不思議に思わず、やがて主人公たちもそれが当たり前だと思っていきます。
どおってことない話ですが、山崎ぶたぶたの姿を見ていると(読者は頭の中に思い浮かべるのですが)、ただの中年男(中年ぶた?)にすぎないのに、不思議と温かい気持ちにさせられます。「追う者、追われるもの」の山崎ぶたぶたなんて、まさしく中年男そのものです(題名の“者”と“もの”を区別しているのが愉快です。)。日常の生活でささくれだった心が癒されるという感じでしょうか。このシリーズのファンが多いのもわかりました。おすすめです。 |