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山本文緒の本棚

  1. 自転しながら公転する

自転しながら公転する  ☆  新潮社 
 初めて読んだ山本作品です。本屋大賞にノミネートされただけあって、面白く読みやすくて一気読みでした。
 与野都は茨城県のアウトレットのアパレル店で契約社員として働く32歳の女性。以前は東京のアパレル店の店長として働いていたが、アルバイトにボイコットされたことで心が疲れ、たまたま母親が更年期障害がひどくて父親から母親の介護で家に戻るよう言われたことを言い訳にして仕事を辞め実家に戻ってきた。ある日、自家用車のバッテリー切れを助けてくれた同じアウトレット内の回転寿司店に勤める羽鳥貫一と知り合い、交際するようになる・・・。
 物語は、都と貫一(「金色夜叉」のお宮・貫一ですよ)の恋愛模様を描くのが中心となるのですが、それ以外にも都の周囲では様々な問題が起こります。一人娘ということで、病気の両親の介護に悩み、店の上司からは胸を掴まれるなどのセクハラを受け、契約社員ということで給料は少なく身分は不安定の中で、正社員に登用してもらえるのか不安を抱え等々、この物語は恋愛小説ですが、家族小説でもあり、お仕事小説でもあります。
 都としては、寛一が中卒であること、元ヤンキーで悪いこともしてきたこと、店が閉店して職を失ったのになかなか真剣に仕事を探しているようには思えなかったことから結婚という将来に二の足を踏むことも無理ないかもしれません。
 貫一と交際する中で、兄が経営するベトナム料理店に手伝いに来ていたベトナム人のニャンから積極的にアプローチを受け、結婚して欲しいとも言われます。果たして都が選ぶのは貫一なのか、ニャンなのか、それとも別の人物か。ニャンとの交際には笑ってしまいます。
 プロローグとエピローグは雑誌の連載を単行本化するに当たって加えられたものです。ネタバレになるので詳細は書けませんが、山本さん、読者を弄びますねえ。うまいです。 
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