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山口雅也の本棚

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  2. 垂里冴子のお見合いと推理

Play プレイ 朝日新聞社
 ぬいぐるみ、ボード・ゲーム、隠れ鬼、テレビ・ゲームという「遊び」が副題についた、4編からなる中編集です。
 帯にはミステリー連作集と書かれていますが、「ぬいのファミリー」、「蛇と梯子」、「ゲームの終わり/始まり」はミステリーというよりホラーではないでしょうか。
 この作品集の中で一番ミステリー色が強い「黄昏時に鬼たちは」がやはり一番おもしろかったと言えます。トリックとしては、ちょっと前に評判になったある作品と同じですが、うまく作者に騙されてしまいました。他の三作の中では「蛇と梯子」の、最後のひねりがお見事。
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垂里冴子のお見合いと推理 講談社文庫
 垂理家の長女・冴子は、当年とって33歳。大学卒業後勤務していた出版社を辞め、今は校正のアルバイトをしながら家事手伝いの身分。今どきの女性と違って、日常を着物で過ごし、茶色いフレームの野暮ったいメガネをかけた女性。そろそろ行き遅れを心配する年になり、“お見合い界の孤高のハンター”を自認する伯母は、彼女を結婚させようとお見合い話を持ち込みます。そんな伯母が持ち込んだお見合いで起こる様々な謎を彼女が解き明かしていく4話が収録された連作短編集です。
 4話は、お見合い相手が愛人らしい女性の部屋で真っ裸で死んでいた(「十三回目の不吉なお見合い」)、お見合い相手がお見合い途中でトイレに行ったまま誰にも姿を見られずにいなくなってしまう(「海に消ゆ」)、空美が強引に自分がお見合いすると言った相手がお見合いの席で突然苦しみだし、家に帰ってから死亡してしまう(「空美の改心」)、小説家とのお見合いに今度こそは思う垂理家だったが、小説家には冴子に似た見合い相手が死ぬという過去があった(「冴子の運命」)といった具合に、お見合いをするたびに垂里家は事件に巻き込まれます。
 とにかく、垂里家のキャラが愉快です。名前からして、父親が一路(スイリイチロ)、母親が好江(スイリスキエ)、長女が冴子(スイリサエルコ)、長男が京一(スイリキョウ)ですから。ただ、次女が空美 (スイリガカラッポ)には笑ってしまいました。名前だけでなく、垂里家の中でのあの破天荒な特異なキャラは捨てがたい魅力があります。冴子だけでなく空美がいるからこそ、このシリーズが成り立つという気がします。
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