(ネタバレあり)
物語は、時代が江戸から移ったばかりで、まだ国家体制が固まっていなかった明治初期が舞台となっています。汚職官僚を処罰する太政官弾正台大巡察になった香月経四郎と、後に初代警視総監になる川路利良が遭遇する事件を描いた8話からなる連作集です。
第1話と第2話は、主人公の香月と川路を初めとするこの連作集に登場する人物の紹介の話となっています。前時代的な水干姿をした香月に、彼が遣欧使節団でパリにいたときに知り合い、彼が帰国したのを追って日本にやってきたエスメラルダという不思議なカップルにまずは度肝を抜かれます。エスメラルダがフランスの死刑執行人の末代というのも驚きの設定であり、この設定が後に生きてきます。そして、香月と川路に悪事を追及され、さんざん驚かされた末に二人の手足となって働くこととなる5人の羅卒も忘れられない存在となります。
第3話から第7話までがそれぞれ香月たちの周辺で起こった不思議な事件を描きますが、どの話もラストは、エスメラルダの口を借りて死者が事件の真相を語るという形をとっています。これでは恐山のイタコだと思いましたが、最後の「正義の政府はあり得るか」で、様相は一変します。ものの見事に今までの事件の真相がひっくり返ります。ああそういえば、あんなところに伏線があったなあと読み終わった後でやっとわかりました。ラストは壮絶です。
二葉亭四迷や内村鑑三など、ところどころに実在の人物が登場するのも興味深いです。 |