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渡辺優の本棚

  1. 私雨邸の殺人に関する各人の視点

私雨邸の殺人に関する各人の視点  双葉社 
 昔殺人事件があったという山荘の私雨邸で所有者の雨目石昭吉が殺害される。大雨で山荘の近くで上砂崩れがあり、道路は寸断され、電話回線を使用していたWi―Fiも繋がらず通信手段もないという、いわゆる山荘はクローズドサークル。山荘にいたのは殺害された所有者の雨目石昭吉のほか、彼の3人の孫、杏花と梗介とサクラ。昭吉が会長をするの会社で会長補佐の石塚、昭吉が招いたT大学のミステリ同好会会長の一条と唯一の会員の二ノ宮、山荘を取材に来たという地元の雑誌編集者の牧、昭吉が雇った料理人の恋田、山歩きをしていて怪我をして山荘に助けを求めてきた会社員の水野、山中で自殺を図ったが失敗して山荘に迷い込んできた田中の計11人。昭吉は密室状態の居室で殺害されており、更には現場にはダイイングメッセージまで残されていた。
 本格ミステリ好きにはたまらない設定です。ミステリ同好会会長の一条が探偵役を務めるかと思いましたが、一条はまったくその気はなく、その代わりに唯一の会員である二ノ宮がクローズドサークルでの密室殺人に嬉々として推理を始めます。人が殺されたのに謎解きに夢中になるというのはどうなのかという性格ですが、名探偵役も重荷のようで、ことごとく推理は外れます。こういうミステリだと必ず名探偵役が登場しますが、実際にはそうそう簡単に名探偵役はできないというのが作者の考えなのでしょう。
 物語はAーニノ宮、B-牧、C-梗介の視点で語られていきます。視点が違いますから、それぞれ見たものの捉え方は違うものになりますし、彼らが本当のことを述べているのかもわかりません。自殺に失敗して山荘に来たとか山歩きでケガをして山荘に助けを求めたとか、山荘の写真を撮りに来たとか、いかにも怪しげな人物も登場しますし、 SNSで昭吉と知り合って山荘に招待されたというミステリ同好会の二人も簡単には信じられません。
 そんな中、まさか最後に探偵役を務めるのがあの人物とは予想外の展開でした。 
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