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渡辺容子の本棚

  1. ターニング・ポイント

ターニング・ポイント 講談社文庫
(ちよっとネタバレ)
 第42回江戸川乱歩賞を受賞した「左手に告げるなかれ」の主人公、警備会社の保安士である八木薔子が登場する5編が収録された連作集です。
 冒頭の「右手に秋風」から4話目までの「ターニング・ポイント」は、デパートや書店に派遣され万引き等を摘発する薔子の活躍を描きます。薔子たち保安士が、目を光らせているのは、外部からくる客だけでなく、内部の従業員も含めてというのがおもしろところです。この作品集の中でも従業員が関わる犯罪が描かれていますが、なるほどなあと思わされます。
 薔子の外見は背が高いということは描かれているのですが、作品は薔子の一人称で書かれているため、その容姿がどうなのかがはっきりとわかりません。そんな薔子ですが、たぶんそれなりに綺麗なんだろうなあと想像させるのが「ターニング・ポイント」です。ここで彼女は万引きに気をつけているときに、ある男に似た男に気づくのですが・・・。「ターニングポイント」という題名らしく、新人を育成する立場になっている薔子の人生に変化が起きる作品となっています。
 最後に置かれた「バックステージ」は、書き下ろし作品。ここでは、警備部第二警護課に異動となった薔子を描きます。今までの保安士から人の身辺を警護をする部門への異動です。警護対象は、女性アイドルグループのメインボーカルのひとり。もう一人が惨殺されたことから、警護に就くことになった薔子らが事件の真相を明らかにします。新たなシリーズの始まりとなる記念すべき作品です。
 薔子はテコンドー三段なんですね。そのうえ、“クラブ・マガ”なんていうイスラエル軍の格闘術も会得しているので、これではそこらの男は相手になりませんね。
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