土曜日はカフェ・チボリで | 東京創元社 |
第24回鮎川哲也賞を受賞した作者による受賞後第1作です。 児童書の出版社で編集者をしている香衣。知人の石川の誘いで、噴水があり桜並木が続く広大な公園のような敷地に佇むレストラン“カフェ・チボリ”を訪れる。その店の店主は高校生で、平日は学校があり、日曜日は神様が決めた安息日だからと、営業するのは土曜日だけという店。オープンしたばかりの店の一番目の客となった香衣は、その料理のおいしさと雰囲気の良さから常連客となる・・・。 広大な公園を思わせる敷地内にある店で、食器類も目が飛び出るような値段のものばかり。メニューは店主でありシェフでもある高校生レンの気の向くまま。こういうお話はその設定に、「そんな店ありえない」とか「大金持ちの坊ちゃんの道楽だ」などと思ってしまうと楽しむことができません。それはそれとして謎解きを楽しむことが必要です(笑)。 物語は、“カフェ・チポリ”を訪れる客が語る身の回りで起こった謎を、店主の高校生・レンが解き明かしていくという形式の、いわゆる安楽椅子探偵ものです。収録された4編は、次のとおり。 部屋に置いたお金の入ったカバンからお金がなくなった。その部屋で少女がマッチを擦って火をつけていたのを見た石川は少女が金を燃やしたのではないかと疑うが・・・「マッチ擦りの少女」 陶芸教室に通う松山は教室に来た美術商の上条から完成した作品を褒められ、別荘の鳩時計のところに飾ってみたいと、別荘に招かれる。ところが愛想が良かった上条が翌日急に冷たい態度を取るようになる・・・「きれいなあひるの子」 レンの伯母である往年の大女優・藤村百合子は監督と行ったヨーロッパ旅行のオランダのホテルで、監督が美女と男性の3人で話しているのを盗み聞きしたが、美女たちが帰った後監督に美女の素性を聞くと、監督はそんな人はいなかったと言う・・・「アンデルセンのお姫様」 常連客の元にカフェ・チポリに関しての嫌がらせのメールや手紙が届く。カフェ・チポリが繁盛していることを苦々しく思う何者かの仕業だとレンや常連客は犯人を推理するが・・・「カイと雪の女王」 4編ともアンデルセン童話をモチーフとしたもので、語られる出来事も童話にちなんだものとなっています。ただ、謎はそれぞれ別の客のものであり、それがみんなアンデルセン童話を彷彿させるものであるというのは、いささか出来過ぎの感もありますね。 |
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