帯にはあの60年代を総括する書き下ろしとある。飛龍伝といえば僕が大学に入ったばかりの頃角川書店から発行されていた雑誌に掲載されていた記憶がある。あの時は確か主人公は男だった。この作品の主人公は四国からただ幸せになりたいと願い瀬戸内海を渡って東京に出てきた18歳の神林美智子。彼女はその後あの60年代の全共闘40万人を率いる委員長になり、機動隊との戦いに臨んでいく。機動隊の先頭には愛する山崎が・・・。全共闘の時代を知らないものにはこの小説は理解できないのではないか。学生たちも政治に怒っていた時代があったのだ。最後のシーンはあまりにやるせない。主人公の神林美智子という名前から、かつて国会前のデモで命を落とした東大生樺美智子さんのことを思い浮かべるのは僕だけであろうか。 |