探偵はぼっちじゃない | 角川書店 |
第21回ボイルドエッグズ新人賞受賞作です。 作者のプロフィールによると、2002年生まれだそうですから今年17歳、高校2年生でしょうか。そして驚いたことには、この作品は中学3年生の時に夏休みの自由課題として描いたものだそうです。小学生の頃から作家になりたいと思っていたそうですが、思うのと実際に作家になるのはまた別。とにかく、凄い才能ですね。今後に期待です。 物語は、クラスで“ぼっち”になりたくないと思っている中学3年生の緑川光毅と、父親が理事長を務める学園の新米教師の原口の一人称の語りが交互に置かれます。そして、途中からは緑川が書くミステリー小説がそれに挟み込まれるという形式でストーリーが進んでいきます。 光毅の語りの部分では、父親と喧嘩して家を飛び出た光毅が同級生だという星野温に声をかけられ、自分が入っている演劇部の文化祭でやる公演の脚本として推理小説を書いてほしいと頼まれ、トリックを考えるという星野と共に小説を書くことに熱中することが描かれます。 一方、原口の語りの部分では、父親が理事長だと第三者から見られるプレッシャーの中、教師として周りから認めてもらおうとあがく原口が、やがて、かつては熱血教師だったが生徒の自殺事件以来周囲から無気力教師と思われていた石坂と、彼が見つけた自殺サイトに彼らの中学の生徒が出入りしていることを知って、生徒を捜して自殺を思い止めようと奮闘する様子が描かれます。 ストーリーは、自殺を考えている生徒は誰なのかという謎解きに加え、星野がトリックを考え、光毅が書くミステリ、美術部の部室から消えたモザイクアートという密室トリックの謎解きも描きながら進んでいきます。 作中作のミステリの謎解きはそれほどの驚きはありません。現実の自殺を図ろうとしている生徒は誰かという謎解きについては、予想はできたものの、なかなか面白い展開でした。ただ、司書の斉藤さんなど、原口にとって重要な関わりのある人物の描き方が中途半端だった気がします。 もう少し、魅力的な人物として物語に関わることができたのではと思わないではありません。 |
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