死んだら永遠に休めます | 朝日新聞出版 |
青瀬は株式会社大溝ベアリング川崎事業所の総務経理統括本部で働き始めて6年目の社員。上司の前川部長からは毎日のようにパワハラを受け、仕事に追われ、毎日がサービス残業の疲れ切った日々を送っている。一緒に働く課員たちも皆疲れ切っていた。そんなある日、前川部長が社員に失踪するというメールを送信して姿を消す。翌週、今度は私は殺された。容疑者は以下のとおりと、派遣の三井仁菜を除く総務経理統括本部の社員全員を名指ししたメールが全社員に送信される。疑われた青瀬たちは容疑を晴らすために前川部長の行方を捜そうとするが・・・。 パワハラ上司には働く人ならどこかで遭遇した経験はあるでしょう。でも、ここに登場する前川部長は存在すること自体が企業にとってマイナスとなる人物です。仕事が忙しいのに、説教部屋で何時間も実りのない叱責をしたり、出席する必要のない会議にまで部下を出席させて仕事を処理する時間を奪ったり、部下のミスに対して上司としての責任は決して負わなかったり等々上司としては失格の人物です。ただ、この事件、単なるパワハラ上司への憎しみという理由にとどまらず、その裏にはもう一つの大きな理由が隠されていました。いや、まさかこんな事実が明らかになるとは。それを知らなかった、というか自覚していなかったのは青瀬のみだったとはねえ。これはもう青瀬としては大ショックですね。 派遣社員の仁菜のキャラがユニーク。仕事ができない能天気な天然キャラだと思っていたら、名探偵よろしく事件の謎に挑戦していきます。派遣社員探偵で続編出ませんかねえ。 パワハラや働き過ぎでの自死の増加からようやく重い腰を上げた国の働き方改革により、ブラック企業というのは表面上は少なくなってきたようです。しかし、働いている人は同じなので、いくら働き方改革だ、パワハラ防止だと国が叫んでも、そうそう人間が変わるものでもありませんから、いくらでも隠れたパワハラは今も続いているのでしょう。 |
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廃集落のY家 | 角川春樹事務所 |
令德大学文学部に入学した小佐野菜乃は、入会したサークル「オカルト同好会」の合宿で蓬萊倫也と泉秋久と出会う。「オカルト同会」の活動が自分が思っていたものとは違うと感じた菜乃は、意気投合した蓬萊と泉とともに「怪異研究会」を立ち上げる。ところが、急に蓬萊が行方不明になってしまう。Xの動画の中に夜の草叢に首を微妙に傾けてまっすぐ立つ蓬萊によく似た男性が映っているのを見つけた菜乃と泉は、その動画が撮影されたと思われる河原に行き、そこで、目は虚ろで覇気がなく、顔のすべての筋肉が弛緩しているよう、それでいてなぜか菩薩のように穏やかで神妙な空地をたたえている蓬萊の姿を目撃する。母親らしき女性と帰っていく後をつけて、蓬萊の家を知った二人は蓬萊の家を訪ねるが、やがて彼らの身にも異変が起こり始める・・・。 ミステリーだと思って読み始めましたが、ホラーでした。とはいえ、何だかこの小佐野菜乃という主人公が不注意というか、うかつというか、とにかく行動や言動が慎重でないというよりコメディぽくて、彼女のせいでホラーの怖ろしさが感じられません。また、菜乃と一緒にこの怪奇に立ち向かっていくのかと思ったら、いつの間にか早々に退場してしまって、騒ぎが収まったあとに再登場するという体たらくの泉は登場する価値あるのかと思ってしまいます。泉の代わりに菜乃と一緒に怪奇を探りに行った藤石教授も本当の恐怖の源を知っていたなら思わせぶりなことを言わずに、はっきり菜乃に告げればいいのにと、ちょっとイラっとします。 ラストは怖かったのですが、ホラーとしては個人的には楽しめませんでした。 |
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