▲トップへ   MY本棚へ

友井羊の本棚

  1. 僕はお父さんを訴えます
  2. 無実の君が裁かれる理由

僕はお父さんを訴えます 宝島社
 第10回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞受賞作です。
 母が自殺し、その後父と結婚した義母は現在離婚係争中で、父親とニ人暮らしの光一。ある目、愛犬が殺され、光一は、父親が犯人だとして、司法試験合格を目指している敦の力を借りて父親を民事訴訟で訴えます。訴訟能力のない光一の代理人には父と離婚係争中の義理の母親に依頼というウルトラCを使い、前代未聞の裁判が始まります。
 親子や兄弟の間だって理解し合えないことはあるだろうし、現に遺産相続で兄弟等が争って裁判になるケースもあります。でも、今回は父親を訴えたのが中学生の子どもですから尋常ではありません。彼がなぜ訴訟という手段に訴えたのか。ちょっとコミカルな題名からは窺えない事実がその裏側に隠されていたのが明らかになるのは物語の後半です。
 ライトノベル感覚で読み始めたときには想像もできない、あまりに重い本でした。
リストへ
無実の君が裁かれる理由  祥伝社 
 大学生の牟田幸司は、ある日、女子学生から同級生の女性へのストーカー行為を糾弾される。そのうち疑いが晴れるだろうと何もしないでいた幸司だったが、しだいに大学内に幸司がストーカーだという噂が広がっていき、幸司は孤立する。幸司が悩んでいる様子に気づいたアルバイト先のイタリア料理店の店長・祁答院依子から店の常連で冤罪を研究してるいる大学の先輩、紗雪を紹介され、話を聞いてもらう・・・。
 冤罪をテーマにした4編(+エピローグ)が収録された連作短編集です。主人公の幸司たちが冤罪であることを明らかにしていくミステリーですが、同時に自分が冤罪の容疑をかけられた経験をした幸司が、冤罪事件を調べていく過程で成長していく物語でもあります。
 冒頭の「無意識は別の顔」は、主人公・牟田幸司自身の冤罪を紗雪が晴らすもので人間の思い込みがもたらす冤罪が描かれます。第二話の「正しきものは自白する」は、幸司の友人にかけられた器物損壊の容疑を紗雪と幸司が晴らすもので、自白の強要による冤罪事件が描かれます。第三話の「痴漢事件とヒラメ裁判官」は、家で仕事をしながら眠ってしまった裁判官の父親の口から洩れた「冤罪」「有罪にするしかない」という寝言から、父の担当する痴漢事件を調べ始めた幸司が、紗雪と痴漢事件の真相を明らかにしていくものであり、冤罪事件となれば必ず俎上に上がる痴漢事件が取り上げられています。ラストの「罪に降る雪」は、紗雪が冤罪にこだわるきっかけとなった紗雪の父が犯したとされる殺人事件の真相が描かれていきますが、思わぬ人物が事件に関わっていたことが明らかになるという驚きのストーリーになっています。
 冤罪が起きる理由が各話で語られますが、その中で一番大きい理由は、この作品中でも描かれているように、日本の司法制度の自白偏重ということでしょう。警察での激しい取り調べに精神的に追い詰められ、犯人ではなくてもやったと言ってしまう、また、自白しても裁判で覆せばいいと思っても、裁判官は一旦行った自白に重きを置いてしまうということに原因があるのではないかと思います。取り調べの全面的な可視化が進めば、この点は改善されるのではないかと思いますが。
 また、「痴漢事件とヒラメ裁判官」で描かれる電車内の痴漢事件は、映画の「それでもボクはやっていない」にもあったように、痴漢をしていないということを証明するのが難しいことが描かれます。今回のように電車が揺れて身体を押したことを咎められたと思って謝ったところ、痴漢行為を謝ったと思われたのではたまったものではありませんね。男性陣は、混雑している電車に乗った際には、両手で吊革につかまったりして、痴漢に間違えられないよう自営しなくてはなりません。 
 リストへ