当初はキンドルの電子書籍として出版され、評判を読んでいた作品です。
ただでさえ人見知りの性格の一居士架は高校入学後なかなか友人ができない日が続いていた。そんなある日、彼は大きな失敗をしたことをきっかけにクラスの中で孤立し、今では“幽霊”と言われ、級友からは無視される存在となっていた。そんな彼に席替えで前の席になった玖波高町が話しかけてくる。彼女からクラスメートには内緒で文化祭のクラス発表の調べ物を手伝わないかと言われた架は放課後の図書室で彼女と過ごすようになる。一方、学校内では動物の殺害死体が連続して発見される・・・。
舞台はとある高校。そこでいじめの対象となっている主人公と、そのクラスメートの謎めいた行動を見せる女子高校生、さらには連続動物虐待死事件という設定に、青春ミステリの好きな僕としては、新人作家の作品であるものの、つい手にとって読み始めてしまいました。ネタバレのないように感想を書くのが難しいのですが、何度も作者に騙されました。「これは、こういうことになるのだろうな」と思うと、そのとおりに話が進んでいき、現れてくる事実に「ほら、自分はこんなことには騙されなかったぞ」と鼻高々だったのに、直後に目の前に見えていたものが、まったく異なる事実へ180度くるっと変わりました。見事に足元をすくわれました。ただ、高町と1つ上の男子生徒との話はこの物語に必要があったのかなという点は気になりました。
ミステリらしい書きぶりはしているのですが、謎解きよりもその年代を生きる主人公たちの悩みや苦しみを描いた青春小説と言った方が適切かもしれません。“青春もの”が好きな人にはおススメです。 |