かつて同じ小児精神科病棟に入院した過去を持つ3人の男女、久坂優希、長瀬笙一郎、有沢梁平が17年後に運命的な再会をする。彼らは、それぞれ現在では看護婦、弁護士、警察官になっている。物語は17年後の現在と入院中の回想シーンが交互に並行して展開していく。過去の事件の謎、そして現在の彼らの周辺で引き起こされる殺人事件。読み進めるにつれてぐいぐい物語に引き込まれていく。
幼い頃それぞれ、親からの虐待を受けていた3人の子供たち。17年前、世界から見捨てられたと信じている彼らの身に果たして何があったのか。そして、現在で起こる事件は過去と関係があるのか。
単に児童虐待とかトラウマという言葉だけでは、この小説を語りきることはできないだろう。現在子供の親として、この小説は僕の前に大きな課題を突きつけているような気がする。果たして僕の子供の育て方は間違っていなかったのか。僕の不用意な行為が子供たちの心の中に大きな傷を負わせることはなかったのか・・・。
結末は後味よいものではない。読み終わっても心の中に重石を置かれたようである。しかし相変わらず、世間では幼児虐待による子供の死が毎日のように報道される。自分の子の命を自らの手で奪ってしまうというのは、いったいどういうことなのであろうか。 |