大学のゼミ旅行で離れ小島にやってきた教授と景太ら11人の学生、そして景太の弟・雅水。暴風雨の中、二人の学生の死体と崖から落ちて気を失った雅水が発見される。殺された石元陽菜は愛らしい顔立ちで人気があり、彼女に好意を寄せる男も多<、景太もその一人だった。しかし、彼女の本性は自分に好意を寄せる男を手玉にとって利用するだけという自己中心的な女だった。
台風のため外の世界との往来ができなくなった島で起きた殺人事件。本格ミステリにお馴染みの“孤島もの”だと思って読み進めると、ちょっと肩透かしをくいます。通常“孤島もの”だと、警察が乗り出すことができないという前提があり、その中で連続殺人が起き、最後は名探偵がみんなを集めて犯人を指摘するというパターンですが、この作品では、島に閉じこめられるのは一時的で、あとは島の外の世界で物語は展開し、警察も捜査に乗り出します。
読者からすれば、陽菜に頻繁にかかってくる無言電話の主・ストーカーの独白が描かれるので、犯人はこの人物か、この人物だとすれば学生の中の誰なのか、クローズド・サークルなので、犯人は当然仲間の中にしかいないということはわかります。ただ、ストーリー上、どうしても目がいってしまう人物がいます。論理的な謎解きはともかく、何とな<犯人はこの人と思ってしまい、ちょっと捻りはありますが、結局そのとおりというのはちょっと残念。
それに、一番気になったのは、ネタバレになるので詳しいことは控えますが、この限られた人間関係の中で、殺人の動機となった同じような状況がいくつもあったこと。最近の世の中はこうなの?と思ってしまいます。 |