第59回(2013年)江戸川乱歩賞受賞作です。14年前に関東の地方都市で起きた連続殺人事件。当初、事件の概要がルイス・キャロルの「スナーク狩り」の内容に似ていたことから、そこに登場する怪物「ブージャム」が犯人の呼称となる。犯人・新田秀哉は6人を殺害後逮捕されたが、容姿端麗な新田には熱狂的な信奉者も生まれるなか、逮捕から14年後、ついに死刑が執行される。ところが、死刑執行後、ブージャム事件を模倣した事件が発生し、現場には「ブージャム」を名乗る血塗られた落書きが残される。地元の図書館の司書として働くブージャムの最後の被害者、南條信の双子の弟、南條仁も否応なく事件の渦中に巻き込まれていく・・・。
ブージャムは死体をある理由から損壊しているのですが、その理由は明らかにされていません。模倣犯も同様に損壊をしているのですが、師匠とはその理由が違うところがこの作品のミソです。
ともあれ、題名の「襲名犯」は単に模倣犯ということではなく、新田を師匠と仰ぐ弟子による殺人犯の襲名ということなのでしょうが、正直のところ、この新田という男が容姿端麗はともかく、それほど熱烈な信奉者が生まれるほどのキャラなのかが描き切れていない嫌いがあります。まったくの精神異常者以上の者に想像することができないところが、この作品に高得点を付けることができない点といえます。。
また、乱歩賞の選考委員の東野圭吾さんも選評で述べていますが、「そもそも『ブージャム』というのが殺人鬼のニックネームとして魅力的だろうか」という点についても、ささいなことでしょうけど、新田という連続殺人犯に魅力(?)を与えられないひとつの原因かもしれません。
ストーリー的には、叙述のトリックのような部分もありますが、ミステリを読み慣れている人は騙されることはないでしょうし、犯人についても想像できてしまうかもしれません。
まあ、それにしてもそもそもの事件の原因ともなるべき、養子にもらった双子の片割れが死んだから、残った一人をまた養子にするという、子どものことなど考えない縁組があるんでしょうかねえ。 |